転職活動を始めるとき、多くの人が「どの会社を受けよう」と、最初から絞り込もうとします。志望度の高い数社だけに応募して、それ以外は初めから候補に入れない。一見、堅実なやり方に見えます。
ですが、元転職エージェントとして、私はこう考えています。エントリー(応募)は、もっと気軽にしていい。そして、慎重になるべきなのは、内定を承諾するときです。この順番を逆にしている人が、とても多いのです。この記事では、なぜそう考えるのかをお伝えします。
転職活動は、人生で数少ない「外の世界を知れる機会」
普段働いていると、自分の会社や業界の外側を、じっくり調べることはほとんどありません。日々の仕事に追われて、他の会社がどんな環境なのか、他の職種がどんな働き方なのか、知る機会もきっかけもないまま過ぎていきます。
転職活動は、その数少ない例外です。応募し、面接で話を聞くことで、普段は絶対に触れられない、他の会社・業界・職種の内側を知ることができます。これは、辞めるか残るかとは別に、それ自体がとても貴重な機会です。せっかくその機会を得たのに、最初から数社に絞ってしまうのは、もったいないと思うのです。
面接は「自分を知る」場でもある
エントリーを気軽に、とお伝えするのには、明確な理由があります。それは「数を打てば当たる」という意味では、まったくありません。
面接で実際に話を聞くと、いろいろなことが見えてきます。「この会社、思っていたより面白そうだ」「この職種、自分に合っているかもしれない」と感じることもあれば、逆に「イメージと違った」「ここは自分には向いていない」と気づくこともあります。この一つひとつの手応えが、大切な情報です。
そして、この情報が積み重なっていくと、だんだん自分の方向性が見えてきます。「自分は、こういう環境が合うんだ」「本当にやりたいのは、こういう仕事かもしれない」と、最初はぼんやりしていた輪郭が、面接を重ねるうちにはっきりしてくる。つまり、面接は企業に自分を売り込む場であると同時に、自分自身の"やりたいこと"や"合う・合わない"を確かめる場でもあるのです。
だからこそ、エントリーは気軽に。実際に話を聞いてみないと分からないことは、たくさんあります。書類や求人情報だけで「たぶん違う」と切り捨ててしまうと、その気づきの機会ごと失ってしまいます。
慎重になるのは、「内定を承諾するとき」
では、いつ慎重になるべきか。それは、内定を承諾する、その一点です。
エントリーや面接は、いくら受けても、あなたの人生を縛りません。合わないと感じたら、そこで辞退すればいいだけです。ですが、内定を承諾して入社を決めることは、これからの働き方を大きく左右します。ここは、集めてきた情報をもとに、じっくり考えて決めるべきところです。
たくさんの会社を見て、比べて、自分の方向性が見えたうえで、「ここだ」と納得して承諾する。この順番なら、入社後に「こんなはずじゃなかった」となる可能性を、大きく減らせます。気軽なエントリーで選択肢と情報を広げ、慎重な承諾で最後を締める。これが、後悔の少ない転職活動の進め方だと、私は考えています。
でも、「気軽なエントリー」を邪魔するものがある
ここまで読んで、「気軽にエントリー、と言われても、そんなに簡単じゃない」と感じた方もいるはずです。そのとおりで、気軽なエントリーを邪魔する、大きな壁があります。
それが、志望動機です。1社ごとに、その会社に合わせた志望動機を一から考えていたら、とてもたくさんの会社には応募できません。応募のたびに重い作業が発生するから、結局「志望動機を考えるのが大変だから、数社でいいや」と、エントリーが止まってしまうのです。
ここには、実は工夫の余地があります。志望動機で立ち止まらずにエントリーできるようにする書類の作り方や、志望動機そのものに"段階"がある、という考え方です。これらを知ると、「気軽なエントリー」がぐっと現実的になります。この続きは、次の記事でお伝えします。
まとめ|広げてから、絞る
転職活動は、普段知ることのできない外の世界を知り、面接を通じて自分自身の方向性を見つけていく、貴重な機会です。だからこそ、入口であるエントリーは気軽に、選択肢と情報を広げる。そして、最後の内定承諾は、集めた情報をもとに慎重に決める。
「広げてから、絞る」。この順番を意識するだけで、転職活動は、当てものではなく、自分を知るプロセスに変わります。まずは「この会社、気になるけど志望度は高くないしな…」と迷っている一社に、気軽にエントリーしてみるところから、始めてみてください。
私は求人を紹介する立場ではないので、 「たくさん受けさせたい」わけではありません。 ただ、あなたが十分な情報を得て、納得して選べるようになってほしいと 思っています。気軽にエントリーするための書類づくりや、 活動の進め方の相談を、元面接官・元エージェントの視点でお手伝いします。 プロフィールからお気軽にどうぞ。