前回の記事で、「エントリーは気軽に、内定承諾は慎重に」という考え方をお伝えしました。転職活動は自分の方向性を知る貴重な機会だから、入口で絞りすぎないほうがいい、という話です。
でも、実際にやろうとすると、大きな壁があります。それが志望動機です。応募する会社ごとに、その会社に合わせた志望動機を一から考えていたら、手間がかかりすぎて、たくさんの会社には応募できません。「志望動機を考えるのが面倒だから、数社でいいや」と、そこでエントリーが止まってしまう。これは本当によくあることです。
この記事では、志望動機で立ち止まらずにエントリーするための、書類の具体的な作り方をお伝えします。
そもそも、履歴書に志望動機は「必須」ではない
まず、思い込みを一つ外しましょう。多くの人が、履歴書には志望動機を必ず書かなければいけない、と思っています。ですが、履歴書のフォーマットに決まった正解はなく、志望動機欄を必ず設けなければならない、というルールはありません。
もちろん、志望動機は大切です。特に本命の会社では、しっかり伝えるべきものです。ですが、「気軽にエントリーする段階」で、すべての会社に完璧な志望動機を求めてしまうと、前に進めなくなる。ここで、書類の作り方に工夫の余地があります。
工夫:履歴書の欄を「志望動機・自己PR等」とまとめ、中身は職務経歴書へ送る
私がおすすめしているのは、履歴書の項目を《志望動機・自己PR等》とまとめたうえで、その欄には次のような一文だけを置く作り方です。
《志望動機・自己PR等》 自己PRに関しては職務経歴書に記載しております。
これだけです。履歴書のこの欄に、志望動機や自己PRを一から書き込む必要はありません。「詳しくは職務経歴書を見てください」と案内するだけで、欄として成立します。中身は、スペースにゆとりのある職務経歴書のほうで、しっかり伝えればいいのです。
こうしておくと、応募のたびに履歴書の志望動機を考える、という作業そのものがなくなります。使い回せるのは自己PRだけでなく、この履歴書のフォーマットごと、どの会社にもそのまま使えます。「志望動機がないとエントリーできない」という状態から、完全に自由になれます。
この欄は、状況に応じて"使い分けられる"
この作り方のいいところは、欄を状況に応じて差し替えられることです。
まず、この《志望動機・自己PR等》欄は、趣味・特技欄などに置き換えても問題ありません。履歴書のフォーマットは自由なので、自分の見せたいものに合わせて調整できます。
そして、ここが一番のポイントです。志望度が高い会社に応募するときは、この欄を、そのまま志望動機欄として使えばいい。「自己PRは職務経歴書に…」という一文の代わりに、その会社に向けた志望動機を書き入れる。つまり、同じ欄が、気軽に受けたい会社では"定型文でスルーする欄"に、本命の会社では"志望動機をしっかり書く欄"に、早変わりするのです。
普段は労力ゼロで通過させ、本命のときだけ力を入れる。ひとつの欄で、この使い分けができる。これが、気軽なエントリーと本命での勝負を、両立させる仕組みです。
この作り方が、「気軽なエントリー」を可能にする
書類の作り方をこう設計しておくと、前回お伝えした「エントリーは気軽に」が、現実的に回り始めます。
気になった会社があれば、履歴書は定型文のまま、職務経歴書とセットですぐに応募できる。1社ごとに志望動機を考える必要がないので、応募のハードルがほとんどありません。面接に進んで話を聞き、「ここは合いそうだ」「本命かもしれない」と感じたら、その会社への応募では、あの欄を志望動機欄に切り替えて、思いを書き込む。志望度が高まった会社にだけ、志望動機のエネルギーを注げばいい。労力を、本当に必要なところに集中できる、効率のいいやり方です。
ただし、志望動機を"作らなくていい"わけではない
ここで、誤解のないようにお伝えしておきます。この工夫は、「志望動機を書かなくていい」という話ではありません。エントリーの段階で立ち止まらないための設計であって、志望動機そのものが不要になるわけではない、ということです。
面接に進めば、必ず志望動機は問われます。そして本命の会社ほど、その会社にしか使えない、深い志望動機が必要になります。実は、志望動機には"段階"があります。どの会社にも出せる汎用的なものから、その会社にしか使えない本命用のものまで。この段階を理解して使い分けることが、気軽なエントリーと、本命での勝負を両立させる鍵になります。この「志望動機の3段階」については、次の記事で詳しくお伝えします。
まとめ|書類の設計で、エントリーは軽くなる
「気軽にエントリー」を邪魔する一番の壁は、1社ごとの志望動機づくりです。これは、書類の設計で解決できます。履歴書の欄を《志望動機・自己PR等》とまとめ、「自己PRは職務経歴書に記載しております」と案内して、中身は職務経歴書に持たせる。この欄は、志望度が高い会社では、そのまま志望動機欄として使う。この工夫だけで、応募のハードルは大きく下がります。
まず動いて、たくさんの会社を知り、そのなかから本命を見つけて、そこに志望動機を注ぐ。そのための書類の土台づくりから、始めてみてください。
履歴書と職務経歴書の役割分担や、職務経歴書側の自己PRの作り込みは、 一度きちんと設計しておくと、その後の転職活動がずっと楽になります。 私は元面接官の視点から、「気軽にエントリーできて、本命では勝負できる」 書類の土台づくりをお手伝いしています。書類の作成・添削に対応しています。 土台づくりに迷ったら、プロフィールからお気軽にご相談ください。