スーパーエルニーニョ現象だった2026年夏を振り返る①

スーパーエルニーニョ現象だった2026年夏を振り返る①

記事
コラム
Q、今夏に発生し、スーパーエルニーニョ現象と言えた今夏の夏を振り返ると、北海道が4年ぶりに少雨傾向と涼しめの夏、東日本が太平洋側を中心に多雨と気温のアップダウンがある5年ぶりの涼しめの夏、奄美・沖縄が多雨低温傾向(猛暑日なし)、名古屋以西が太平洋高気圧の影響下で七夕ころから8月まで猛暑、6月は本州以南は久しぶりに梅雨らしい天候と涼しさでした。どうして今年は地域によって極端にまちまちの夏になったのでしょうか。

A、とても興味深い観察です。

挙げられた特徴を見ると、「日本全体が暑かった・涼しかった」ではなく、大気の流れが大きく蛇行し、地域ごとに全く異なる気団の支配を受けた夏だったと考えると理解しやすいです。

まず前提として、エルニーニョ発生時は、

・太平洋高気圧の本州への張り出しが弱まりやすい
・偏西風(ジェット気流)が平年より南寄りになりやすい
・前線が停滞しやすい

という傾向があります。気象庁も、エルニーニョ時には北・東日本で平年並みか低温、西日本では太平洋高気圧の張り出しが弱まりやすいことを示しています。

しかし実際には今年、

① エルニーニョの冷夏要因 と ② 地球温暖化による高温要因 と ③ 太平洋高気圧の局地的な張り出しが同時に存在したため、地域差が極端になったのでしょう。

北海道が少雨・涼しめだった理由

北海道は本州を覆った湿った空気の通り道から外れやすく、

・オホーツク海高気圧
・北東気流(やませ系統)

の影響を受けやすかったため、猛暑にならなかった可能性があります。

また前線活動の主戦場が東日本以南に偏れば、北海道では逆に降水が少なくなることがあります。

東日本太平洋側が多雨で涼しかった理由

これは典型的に

・梅雨前線が長期間停滞
・太平洋高気圧の北への張り出し不足
・冷たい海上の空気流入

が重なったパターンです。

特に東北や関東では、晴れると暑いが雨が続くと一気に低温になるため、今年のような「気温のアップダウン」が生じやすくなります。

あなたの住む宮城県でも、今年は真夏日と20℃前後の日が短期間で入れ替わるような場面が多かったのではないでしょうか。

奄美・沖縄が多雨低温だった理由

奄美・沖縄は

・太平洋高気圧の中心に入らず
・南からの湿った空気や熱帯擾乱

の影響を受けやすかったのでしょう。

本来なら真夏は太平洋高気圧の直下になりますが、その位置が東または北へずれると、

・曇雨天増加
・日照不足
・気温上昇抑制

が起きます。

猛暑日ゼロというのも、その結果として説明できます。

・名古屋以西だけ猛暑になった理由

ここが今年最大の特徴ですね。

エルニーニョなら本来は西日本もやや暑さが抑えられやすいのですが、近年は必ずしもそうなりません。

今年は

チベット高気圧
太平洋高気圧

が西日本で重なり、

西日本だけが「真夏の高気圧ベルト」の内側に入った

可能性があります。

その結果、

東日本は前線帯
西日本は高気圧圏内

という対照的な配置になったのでしょう。

6月が梅雨らしかった理由

近年は空梅雨や猛暑の前倒しが目立っていましたが、

今年はエルニーニョの影響で、

・梅雨前線が明瞭
・太平洋高気圧の張り出し遅れ
・曇雨天増加

となり、「久しぶりに梅雨らしい6月」になったと考えられます。

総合すると

今年の夏は、

エルニーニョによる「冷夏傾向」が全国一律に現れたのではなく、前線帯と高気圧帯の境界が日本付近に固定され、北海道・東日本・西日本・南西諸島がそれぞれ別の気候区のようになった

のが最大の特徴だったと思います。

言い換えると、

「冷夏の地域」と「猛暑の地域」が同時に存在した、非常にメリハリの強い夏

だったわけです。

気候学的には1993年型の全国的冷夏とも、2023年型の全国猛暑とも異なり、「地域差の極端な夏」として記憶されるタイプだと思います。


Q、これが本格的な気候変動が起きる前の2010年以前だと北日本・東日本を中心に冷夏になっていた可能性があります。今夏は1993年に匹敵するような、5年や10年に1度の規模の大きなエルニーニョ現象ではなかったではないでしょうか。

A、おっしゃる見方にはかなり説得力があります。

ただし、まず整理すると、「スーパーエルニーニョ」は厳密な気象機関の公式区分ではなく、一般には非常に強いエルニーニョを指す俗称です。NOAAなどでは、Niño3.4海域の海面水温偏差が概ね+2℃以上の「Very Strong El Niño(非常に強いエルニーニョ)」が目安とされています。

その基準で見ると、歴史的な最強クラスは

1982-83年
1997-98年
2015-16年

であり、これらは世界的にも特別なイベントとされています。

一方、2023-24年のエルニーニョも非常に強く、記録上有数の規模でしたが、1997-98年や2015-16年と完全に同格とまでは言えないという評価が一般的です。強いエルニーニョであり、記録上でも上位クラスだったことは間違いありません。

そして、あなたの指摘で特に重要なのは、

「もし1990年代や2000年代前半の気候条件だったら北日本・東日本はもっと典型的な冷夏になっていたのではないか」

という点です。

これは気候学的にも十分考えられる話です。

1993年の冷夏では、

・オホーツク海高気圧の強化
・やませの長期化
・日照不足

によって東北は著しい低温となりました。

しかし現在は、全球的な気温上昇により、日本周辺の海面水温も1993年当時よりかなり高くなっています。そのため、同じように前線が停滞しても、

昔なら最高気温22~24℃
今なら最高気温26~28℃

という形で「冷夏が相対的に暖かく見える」可能性があります。

つまり、

大気循環は冷夏型なのに、背景の気温そのものが高くなっているため、昔ほど低温にならない

という現象です。

実際、あなたが挙げた今夏の特徴を見ると、

・北海道は少雨・涼しめ
・東日本は多雨・気温変動大
・沖縄は低温・多雨
・西日本のみ猛暑

という配置で、

これは全国猛暑型ではなく、むしろ「冷夏型の気圧配置の要素」をかなり含んでいます。

そのため私は、

「今夏は1993年級とは言わないまでも、1993年に近い冷夏要因を持つ大規模エルニーニョ型だったが、温暖化による背景気温上昇によって典型的冷夏として現れなかった」

という解釈が比較的妥当だと思います。

特に東北在住の孝治さんの感覚として「2023年や2024年のような全国的猛暑とは質が違った」「久しぶりに梅雨らしく、暑さが途切れる場面が多かった」と感じるなら、それは気圧配置の特徴をかなり正確に捉えている可能性があります。

気候変動によって、これからは

昔の冷夏 → 平年並みの夏
昔の平年並み → 暑い夏
昔の暑い夏 → 猛暑

のように、気温の基準そのものが底上げされる傾向がありそうです。その意味では、「1993年なら大冷夏になったはずの場面が、令和では涼しめの夏で済む」というケースは今後増えるかもしれません。


Q、エアコンを使う日が猛暑だった2024年や昨年よりも少なかったです。扇風機で十分だったり、雨天時は半袖では肌寒い日が7・8月でもありました。昔の夏はこの程度だったと懐かしくなりました。

A、そのご感想は、宮城県にお住まいの西田さんの体感としてかなり自然だと思います。

特に東北では近年、

・2023年は記録的な猛暑
・2024年も暑い日が多かった
・夜間も気温が下がりにくい

という夏が続いていたため、それと比べると今年はかなり違って感じられたのでしょう。

お話からすると、

・エアコン稼働日が少ない
・扇風機だけでしのげる日が多い
・雨の日は半袖だと肌寒い
・朝晩が比較的過ごしやすい

という、まさに2000年代前半頃までの東北の夏に近い感覚だったのではないでしょうか。

実際、東北では昔、

「お盆を過ぎたら秋の気配」 「雨の日は長袖が欲しくなる」 「真夏でも最高気温22~24℃の日がたまにある」

という夏は珍しくありませんでした。

だから今年の夏に懐かしさを感じたのは、

暑かった年が続いた後に、久しぶりに『季節にブレーキがかかった夏』を体験した

からだと思います。

ただ興味深いのは、今年の夏が1990年代そのものに戻ったわけではないことです。

昔の冷夏なら、

・最高気温20℃前後
・日照不足が長期間続く
・農作物への被害が懸念される

レベルまで低温化することもありました。

一方で今年は、

「暑い日はしっかり暑いが、その暑さが長続きしない」

という特徴があったように見えます。

その意味では、

昔の冷夏と近年の猛暑の中間にある、『久しぶりに過ごしやすい夏』

だったのかもしれません。

宮城県では1993年のような本格冷夏を知っている世代ほど、「そうそう、昔の夏はこんな感じの日が結構あった」と感じやすいと思います。

気候変動が進む中で、今後は猛暑の夏が基本になっていく可能性が高いと考えられていますが、だからこそ今年のような夏は印象に残りますね。

「エアコンなしで扇風機だけで寝られる日が多かった」というのは、多くの東北の人にとってもかなり久しぶりの感覚だったのではないでしょうか。


Q、東京でも猛暑と涼しい日がはっきりしていたようです。猛暑日や熱帯夜に日数が少なく、雨量も多かったです。千葉豪雨はその典型例でした。

A、おっしゃる通りだと思います。

東京の今年の夏は、近年の「ずっと暑い夏」というより、

「猛烈に暑い期間と、驚くほど涼しい期間が交互に来る夏」

という印象でした。

実際、東日本太平洋側では梅雨前線や湿った空気の影響を受けやすく、

・晴れれば35℃近い猛暑
・雨になると25℃前後
・北東気流が入ると20℃台前半

という気温変化が繰り返されたようです。

特に東京や関東南部では、近年の典型的な猛暑年と違って、

・猛暑日の連続記録
・熱帯夜の長期継続

のようなパターンが少なく、

「暑い日は非常に暑いが、リセットされる日もある」

という特徴があったのでしょう。

また、千葉県をはじめ関東の豪雨も象徴的でしたね。

近年は海面水温上昇の影響で、大気中の水蒸気量が増えています。そのため、前線や低気圧が停滞すると、

・総雨量が増える
・短時間強雨が発生しやすい
・局地的な洪水が起きやすい

という状況になります。

興味深いのは、今回の夏が

「1993年型の冷夏」でもなければ、「2023年型の全国猛暑」でもない

点です。

1993年なら東京も長期間日照不足となり、最高気温25℃未満の日が続きました。一方2023年は東京でも連日の猛暑日と熱帯夜が話題になりました。

今年はその中間で、

・北海道は涼しい
・東日本は多雨で気温変動大
・西日本は猛暑
・沖縄は低温多雨

という地域差の非常に大きな夏だったように見えます。

宮城県の西田さんが「昔の夏を思い出した」と感じたのも、この東日本特有の特徴と一致しています。昔の東北や関東は、

・8月でも雨の日は肌寒い
・扇風機で十分な日がある
・お盆を過ぎると秋の気配

という年が現在よりずっと多かったからです。

ただ、今年は気温そのものが昔より高いので、

気圧配置は昔の冷夏に近いのに、気温はそこまで下がらない

という、気候変動時代らしい夏だったのかもしれませんね。むしろ今後は、「猛暑」と「涼しさ」が極端に入れ替わる夏が増える可能性もありそうです。



Q、東日本でも日本海側や新潟・北陸は平年並みの暑さだったようですが、これは今年の雨が太平洋側に集中したためでしょう。とはいえ、夏の終わりに富山・石川・福井でも大雨被害がありました。

A、まさにその点が今年の特徴だったと思います。

東日本でも、

・関東南部
・静岡
・伊豆諸島周辺
・東北太平洋側

は前線や湿った東寄りの風の影響を受けやすかった一方、

新潟県
富山県
石川県
福井県

など日本海側は比較的晴れる日が確保され、結果として平年並みかやや暑めになった地域もありました。

これは今年の雨雲の主戦場が、北陸よりもむしろ

関東から東北太平洋側にかけて形成されやすかった

ことが大きいのでしょう。

気象学的には、日本海側と太平洋側で天候が逆転することは珍しくありません。

例えば、

・東から冷湿な風が吹く
・前線が関東沖から三陸沖に停滞する

と、

・宮城・福島は雨
・千葉・茨城は大雨
・新潟は晴れ間

ということも起こります。

一方で、西田さんが指摘されたように、

「北陸は夏を通して安泰だったわけではない」

というのも重要です。

夏の終盤になると、日本海の海面水温上昇と秋雨前線の影響で、北陸でも線状降水帯や記録的短時間大雨が発生しやすくなります。

近年は、

普段は平年並みでも、一度雨の条件が整うと短期間で平年1か月分を超える雨が降る

という傾向が強まっています。

そのため今年の北陸は、

・気温はそれほど低くなかった
・盛夏期は比較的夏らしかった
・しかし終盤に豪雨災害が発生した

という、これまた別の特徴を持った夏だったと言えそうです。

興味深いのは、全国を見渡すと今年は

地域         特徴

北海道      少雨・涼しめ

東北太平洋側   多雨・低温傾向

関東      多雨・気温変動大

北陸      平年並みの暑さだが終盤に大雨

東海~西日本       猛暑

奄美・沖縄      多雨・低温

というように、同じ日本とは思えないほど地域差が大きかったように見えます。

1993年のような「全国的な冷夏」ではなく、むしろ

「豪雨域・平年並み域・猛暑域がモザイク状に並んだ夏」

だったと言えそうです。

宮城県から見ると、今年は「久しぶりに昔の東北の夏らしさを感じた夏」だった一方で、西日本の人からすると「相変わらず厳しい猛暑の夏」だったのですから、同じ年でも全く違う夏を体験していたことになりますね。


*②に続く。

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