楽譜を読んでいると、「移調」という言葉を目にすることがあります。
「移調って何?」
「楽譜を書き直すってこと?」
「クラリネットやサックスに移調楽器が多いのはなぜ?」
音楽を始めたばかりの方にとって、「移調」は少し難しそうに感じるかもしれません。
でも、基本的な考え方は意外とシンプルです。
この記事では、楽典初心者向けに、移調とは何なのか、なぜ移調するのか、どうやって考えるのかを、できるだけ簡単に解説します。
そもそも「移調」って何?
移調(いちょう)とは、簡単にいうと、
曲の音の高さを、一定の間隔でまとめて変えること
です。
例えば、
「ド・レ・ミ」
というメロディーがあったとします。
これを全部1音上げると、
「レ・ミ・ファ♯」
になります。
メロディーの形は同じですが、全体の音の高さが変わっています。
これが「移調」です。
イメージすると……
```
移調前
ド → レ → ミ
↓ 全体を1音上げる
移調後
レ → ミ → ファ♯
```
大切なのは、
それぞれの音の間隔を保ったまま、全体を移動させる
ということです。
「メロディーを変える」のではなく「高さを移動する」
移調を理解するときは、
音楽をそのまま横にスライドさせる
ようにイメージすると分かりやすいです。
例えば、
```
移調前
ド レ ミ レ ド
● ● ● ● ●
↓ 全体を上へ
移調後
ミ ファ♯ ソ ファ♯ ミ
● ● ● ● ●
```
メロディーの「上がる・下がる」という形は変わっていません。
変わったのは、曲全体の高さです。
なぜ移調するの?
では、なぜわざわざ曲の高さを変えるのでしょうか?
主な理由はいくつかあります。
① 歌いやすい高さにする
歌う人によって、得意な音域は違います。
原曲が高すぎる場合、曲全体を低くして歌いやすくすることがあります。
逆に低すぎる場合は、曲全体を高くします。
つまり、
歌いやすいキーに変更する
ために移調します。
② 楽器に合わせる
楽器によって、演奏しやすい音域や調があります。
特に吹奏楽では、
クラリネット、アルトサックス、ホルンなど、いわゆる「移調楽器」が登場します。
このとき、楽器に合わせて楽譜を移調する必要があります。
③ 合奏しやすくする
複数の楽器で演奏するとき、それぞれの楽器の特性に合わせて音の高さを調整することがあります。
また、伴奏と歌のキーを合わせるために移調することもあります。
「キー」と「移調」はどう違う?
ここも初心者が混乱しやすいポイントです。
「キー」と「移調」は関係していますが、同じ意味ではありません。
キー
曲の中心となる音や調を表すもの
です。
例えば、
ハ長調(C major)
ト長調(G major)
ヘ長調(F major)
などがあります。
移調
その曲を別の高さ・調へ移動させること
です。
例えば、
ハ長調 → ト長調
へ変更することも移調です。
「ド・レ・ミ」を移調してみよう!
簡単な例で考えてみましょう。
元のメロディーが、
```
ド レ ミ ファ
```
だったとします。
これを1音上げると、
```
レ ミ ファ♯ ソ
```
になります。
「全部1音上げたのに、なぜファだけ♯が付くの?」
と思うかもしれません。
これは、音と音の間隔を同じに保つためです。
元の音程は、
```
ド → レ 全音
レ → ミ 全音
ミ → ファ 半音
```
です。
1音上げると、
```
レ → ミ 全音
ミ → ファ♯ 全音
ファ♯ → ソ 半音
```
となります。
つまり、
音と音の間隔をそのまま保っている
わけです。
移調するときは「音程」が重要!
ここで、前回の記事で紹介した「音程」が登場します。
移調では、
それぞれの音を同じ幅だけ動かす
ことが重要です。
例えば、
ド → ミ
という音程があったとします。
これを全部1音上げると、
レ → ファ♯
になります。
```
移調前
ド ───── ミ
3度
↓ 1音上げる
移調後
レ ───── ファ♯
3度
```
音の高さは変わりましたが、
「ド→ミ」という音の関係
は、
「レ→ファ♯」
になっても変わりません。
これが移調の基本です。
移調すると「♯」や「♭」が増えることがある
移調すると、シャープやフラットが新しく付くことがあります。
例えば、
```
ド レ ミ ファ ソ
```
を1音上げると、
```
レ ミ ファ♯ ソ ラ
```
になります。
「ファ」に♯が付きました。
これは間違いではありません。
音と音の間隔を正しく保つために必要なのです。
つまり移調では、
「音名をただ1つずらせばいい」
というわけではありません。
♯や♭も含めて、音の間隔を正しく移動させる必要があります。
移調と「移調楽器」
ここからは、吹奏楽をやっている人には特に重要な話です。
楽器には、
実音楽器
と
移調楽器
があります。
移調楽器では、
「楽譜に書いてある音」と「実際に鳴る音」
が異なる場合があります。
代表的なものが、
B♭クラリネット
B♭トランペット
E♭アルトサックス
Fホルン
などです。
B♭クラリネットを例にしてみよう
例えばB♭クラリネットでは、
楽譜に「ド」と書かれている音を演奏すると、
実際には「B♭」の音が鳴ります。
つまり、
書かれた音と実際に鳴る音に違いがある
ということです。
図にすると、
```
B♭クラリネット
楽譜上
ド
↓
実際に鳴る音
B♭
```
このような楽器を「B♭管」や「B♭の移調楽器」と呼びます。
なぜ移調楽器があるの?
「だったら、全部実音で書けばいいのでは?」
と思うかもしれません。
実は、移調楽器にはメリットがあります。
例えばクラリネットでは、
楽器を持ち替えても運指の感覚を保ちやすいというメリットがあります。
また、同じ種類の楽器であれば、調が変わっても楽譜の読み方や運指の関係を統一しやすくなります。
吹奏楽では、さまざまな移調楽器が一緒に演奏するため、移調の考え方がとても重要になります。
「移調」と「転調」は違う!
ここも覚えておきたいポイントです。
「移調」と似た言葉に、
転調(てんちょう)
があります。
名前が似ていますが、意味は違います。
移調
曲全体を別の高さに移動すること
```
C → G
曲全体を上へ移動
```
転調
曲の途中で調が変わること
```
C major
↓
G major
↓
C major
```
例えば、曲の最初はハ長調だったのに、途中からト長調になる。
これが「転調」です。
簡単に覚えるなら、
移調=曲を丸ごと移動
転調=曲の途中で調が変わる
と覚えておきましょう。
移調を階段で考えてみよう
移調は「階段」を使って考えると分かりやすくなります。
例えば、
```
ソ
↑
ファ
↑
ミ
↑
レ
↑
ド
```
という音の階段があったとします。
これを全部2段上に移動すると、
```
シ
↑
ラ
↑
ソ
↑
ファ♯
↑
ミ
```
となります。
つまり、
メロディーの形はそのまま、位置だけを移動する
というイメージです。
移調を理解する3つのポイント
初心者の方は、まず次の3つを覚えておきましょう。
POINT 1
曲全体を同じ幅だけ動かす
POINT 2
音と音の間隔を変えない
POINT 3
♯や♭も含めて正しく移動する
この3つが、移調の基本です。
初心者向け!移調の練習
最後に、簡単な練習をしてみましょう。
問題①
「ド・レ・ミ」を1音上げてみましょう。
答えは、
レ・ミ・ファ♯
です。
問題②
「ド・ミ・ソ」を1音上げてみましょう。
答えは、
レ・ファ♯・ラ
です。
問題③
「ファ・ソ・ラ」を1音下げてみましょう。
答えは、
ミ♭・ファ・ソ
です。
最初は「♯や♭が付くのが難しい」と感じるかもしれません。
そんなときは、
音名だけを移動させる」のではなく、「音と音の間隔を保つ」
と考えてみましょう。
まとめ
今回は、楽典初心者向けに「移調」について解説しました。
移調とは、
曲の音の高さを、一定の間隔でまとめて移動させること
です。
例えば、
```
移調前
ド・レ・ミ
↓ 1音上げる
移調後
レ・ミ・ファ♯
```
となります。
移調で大切なのは、
「曲全体を同じ幅だけ動かす」
こと。
そして、
音と音の間隔を変えない
ことです。
また、クラリネットやサックス、ホルンなどの移調楽器を演奏する場合には、この考え方がとても重要になります。
まずは、
移調=曲全体を別の高さへ引っ越しさせる
とイメージしてみてください。
音程や音階、調についての知識が増えてくると、移調もどんどん理解しやすくなります。
楽典は難しそうに見えても、一つずつ仕組みを理解すれば大丈夫。