一緒にいるのに、何を話していいかわからなかった

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コラム
最初に結婚したのは、25歳のときでした。

若かった。

と言ってしまえばそれまでなんですが、今振り返ると、僕は結婚するということがどういうことなのか、あまりわかっていなかったと思います。

好きな人と一緒になる。

結婚する。

一緒に暮らす。

それで夫婦になる。

そのくらいに考えていたのかもしれません。

でも、一緒に暮らし始めると、当然いろいろなことがあります。

相手には相手の考えがある。

自分には自分の考えがある。

同じ家に住んでいるからといって、考えていることまで同じになるわけじゃない。

そんな当たり前のことも、当時の僕はよくわかっていませんでした。

妻が何を考えているのか、わからない。

何を言いたいのかも、よくわからない。

そして僕自身も、自分が何を考えているのかをうまく話せなかった。

夫婦なのに、何を話していいのかわからない。

そんな感じだったと思います。

もちろん、まったく会話がなかったわけではありません。

普通の話はしていたはずです。

ご飯のこと。

仕事のこと。

どこかへ出かける話。

毎日の生活に必要な話。

でも、肝心なことになると話せない。

「それ、嫌だった」

「こうしてほしい」

「俺はこう思っている」

そんな話をした記憶が、ほとんどありません。

そもそも当時の僕は、そういうことを言葉にするという発想自体がなかったのかもしれません。

一つ、今でも覚えていることがあります。

妻が食事を用意してくれていたのに、僕は焼き鳥を買って帰ったことがありました。

僕としては、たぶん深く考えていなかった。

焼き鳥を見て、

「食べたいな」

と思って買った。

それだけだったんでしょう。

でも、食事を用意して待っていた妻からしたら、どうだったのか。

今なら想像できます。

当時の僕は、そこまで考えなかった。

「せっかく作ったのに」

と言われても、

「焼き鳥くらいいいじゃん」

と思っていたかもしれません。

正確なやり取りまでは、もう覚えていません。

だから、今の自分の都合のいいように昔の話をつくりたくはありません。

ただ、この焼き鳥のことだけは覚えています。

たぶん僕は、妻がなぜ嫌な気持ちになるのか、本当にわかっていなかったんだと思います。

悪気があったわけじゃない。

でも、悪気がなければ相手を傷つけないわけでもない。

これは今になって思うことです。

当時の僕は、

「俺はそんなつもりじゃない」

で終わっていたんじゃないかな。

そして妻が何か言っても、その言葉の奥に何があるのかまで考えなかった。

聞かなかった。

僕のほうも、自分の気持ちを話さなかった。

一緒に暮らしている。

毎日顔を合わせている。

それなのに、お互いのことをどこまでわかっていたんだろう。

今になって考えると、よくわかりません。

夫婦だから、わかっている。

一緒にいるから、伝わっている。

僕はどこかで、そんなふうに思っていたのかもしれません。

でも、伝えていないことは、やっぱり伝わらないんですよね。

あの頃の僕は、それすらよくわかっていませんでした。
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