Drive Your Career.(自分のキャリアのハンドルを握れ)
こんにちは。
AI時代の自走力育成支援をしている竹之下です。
私は人材育成において、心では大きな情熱を持っていますが、育成相手に対しては「感情を排除し、実務ベースのフィードバックを淡々と繰り返す」というアプローチをとっています。
本日は、なぜ育成に情熱を持っている私が、このような姿勢で育成に取り組んでいるのか、背景にある考え方をお話したいと思います。
育成担当になられた方や、新人マネージャーの方に少しでもお役に立てれば幸いです。
1. はじめに:育成を「ドラマ」にしてはいけない
多くのマネージャーが陥る誤解は、「情熱を持って熱く語りかければ人は変わる」という誤解です。
もちろん、相手の成長を願う気持ちや、真剣に向き合う姿勢は、育成において大切です。
しかし、これまで多くの人材育成に関わってきた経験から言えることは、指導する側の熱量や感情の強さが、そのまま相手の行動変容につながるわけではないということです。
さらに、育成に感情や情熱を強く持ち込むことで、思うように成長しない時に、相手への期待が裏切られたように感じてしまい、苛立ちや焦りが生まれ、無意識のうちに相手へ負の感情をぶつけてしまうことにもつながります。
また、新人育成は短期間で完結するものではなく、数ヶ月、場合によっては数年単位で向き合う長期戦です。
毎日のように感情を大きく動かしながら育成を続ければ、育成する側自身が感情の波に疲弊し、継続的なサポートが難しくなってしまいます。
だからこそ、育成において本当に重要なのは、「熱血指導」という一時的なエネルギーに頼るのではなく、日々の実務における事実をもとにした、感情を排した淡々としたフィードバックを、粘り強く繰り返すことだと考えています。
2. 感情的なフィードバックで起きる3つの問題
まず、フィードバックに怒り・焦り・期待などの感情が混ざると、部下の脳内では以下の反応が起きます。
① 学習が止まる
人は心理的な脅威を感じると、改善のための思考よりも、自分を守ることを優先します。
そのため、指摘内容を冷静に分析する余裕がなくなり、
「何が問題だったのか」
「次はどう改善するべきか」
という学習プロセスが進まなくなります。
育成に必要なのは、相手に反省させることではなく、次に同じ失敗をしないための行動変容を起こすことです。
② 仕事上の問題が「人格への否定」に変換される
育成において重要なのは、「人」ではなく「行動」や「仕事スタンス」に向き合うことで、新人のコンピテンシー向上につなげることです。
※この話は以下記事にて解説していますので、よければご覧ください。
例えば、「なんでこんなミスをしたんだ!」という伝え方になると、相手は失敗した行動ではなく、自分自身の能力や人格を否定されたように感じます。
すると、防衛的な反応が起きてしまい、本来改善行動や仕事スタンスに目がいかず、育成目的の達成につながらなくなってしまいます。
③ 失敗を隠す文化につながる
また、感情的なフィードバックが繰り返される環境では、「失敗を報告すると怒られる」という認識が生まれてしまい、メンバーは失敗を早く共有するのではなく、隠すようになります。これは組織全体としても大きな問題です。
育成、組織運営において最も重要なのは、失敗から学び、次の行動を改善することです。失敗をなくすことではありません。
失敗が隠れる組織では、改善の機会そのものが失われてしまいます。最悪の場合、取り返しのつかないタイミングでミスが発覚し、大きな影響をもたらすことがあります。
育成に必要なのは、相手を強く反省させることではありません。
必要なのは、失敗した事実を正しく認識し、次の行動を変えられる状態を作ることです。
だからこそ、マネージャーに求められるのは「感情の強さ」ではなく、事実をもとに、相手の成長につながるフィードバックを淡々と積み重ねる力なのです。
3. 「淡々としたフィードバック」の事例
効果的なフィードバックは、まるでシステムエラーを修正するように、事実のみを淡々と伝えることです。
(最近でいうと、AIへの修正指示をイメージするとわかりやすいかもしれません)
【NG:感情的FB】
「この資料、また数字間違ってるよ!何度言ったらわかるの?もう少し注意深く仕事して!」
【OK:淡々としたFB】
「資料の3ページ目、利益率の計算に誤りがあります。提出前にダブルチェックのプロセスは踏みましたか?次回からはチェックリストを使用してください。」
前者の感情的なFBは、相手に「怒られた」という感情を残します。
すると、本人は「なぜ間違えたのか」「どう改善すればいいのか」ではなく、「どうすれば怒られないか」という防衛反応に意識が向いてしまいます。
一方、後者の淡々としたFBは人格ではなく、あくまで仕事のプロセスに焦点を当てています。
そのため、部下は自己防衛する必要がなく、純粋に「どうすれば次回改善できるか」という問題解決に向き合うことができます。
育成に必要なのは、感情をぶつけることではなく、同じ基準で、同じように改善点を伝え続けることです。
この積み重ねによって、部下自身の中に判断基準が形成され、自ら改善できる人材へと成長していきます。
4.「しつこく繰り返す」ことが、人を成長させる
淡々としたフィードバックの効果は、一度の指摘ではなく、繰り返し積み重ねることで初めて発揮されます。
人間の脳は、神経回路の書き換え(習慣化)に反復を必要とします。一度の指摘で変わることは稀です。日々の実務の中でエラーが発生するたびに、その場で即座に淡々と修正を促す「フィードバック」の積み重ねが重要です。
この「しつこさ」が、チーム内に「このクオリティが絶対基準」という共通認識を自然に刷り込みます。マネージャーにとって根気のいる作業ですが、感情的にならず「ズレの修正」を淡々と続けることが、育成において本当に重要だと思います。
おわりに
「淡々と、しつこく」という言葉は冷たく聞こえるかもしれませんが、実際は逆です。
人格や態度という曖昧なものを責めず、純粋に「実務スキルとコンピテンシー」の向上だけに伴走する姿勢こそ、部下にとって最大の心理的安全性となります。「この上司は失敗を感情で責めず、何度でも修正の機会を与えてくれる」と信頼できるからこそ、人は安心して試行錯誤し、成長できるのです。
育成に特別なカリスマ性や熱血指導は必要ありません。今日から、実務の事実だけを見つめ、淡々とフィードバックを繰り返すマネージャーとして育成に取り組んでみてください。
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