44.紫陽花

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翌日のことである。










Xはいつも昼頃起きる。










この日は休日。
私は朝早く起きて、
Xのできない、外出して行うことをこなす。










それは買い物だったりとか、
溜まった資源ごみのゴミ出しとか。










この日もそれらをこなしたあと、
Xが起きてきた音がすぐに拾えるように、
部屋の扉を開けたままBalatroをプレイしていた。













そして、いつもの休日のように、
Xがカーテンを開けるしゃっという音がする。










不敵に微笑むジョーカーたちに別れを告げ、
朝の挨拶に向かう。













そこには、いつもより数段晴れやかなXがいた。













私「おはよう、Xちゃん」













Xは朝に弱い。
気分がすぐれなかったり、体調がすぐれなかったり。
















起きるだけで一苦労なため、
常に昼過ぎの起床になる。
Xが自称したわけではないけれど、
スターシードにはあるあるらしい。



















そんなXが、
今日この日の朝というか昼はとても穏やかで、
晴れやかだった。










昨日はなしたことが良かったのだろうか。













朝食というか昼食を終えたXと、
ドライブに出かける。










この郊外の川沿いの道をドライブするのも、
あと何回だろうか。










こっちに引っ越してくる前に、
急遽故障した前の車のかわりに購入したこの車。
中古車販売店に、積もるほどの大雪の日に二人でいった。










雪の中に佇む可愛らしいポップなカラーのボディに、
少し予算オーバーだけど、これしかないと二人で決めた。










買った頃は40000キロ台だった走行距離も、
今日84000を超えた。










なんとなくだけど、85000キロまでは乗ろうと、
70000キロを超えたときに考えていた。










あと1000キロ。
今日20キロぐらい走ったから、
またカウントダウンが進んだ。










こっちへ引っ越してきたときも、
この車でXを連れてきた。
Xを救えない悔しさでいっぱいだったのを覚えている。










「次はなんの車にするの?」










「あー、利便性で選ぶかも。
災害時に強いとか。ハイエースになるかもよw」










私は別にお金に余裕があるわけじゃない。
選択肢も限られている。
まぁ、予算に余裕があっても、地味なものを選びそうだけど。













それでも、最近は、好きな声優さんができたから、
その人にちなんだ痛車にするかも。










ちなみに、オタ活にもハイエースは便利らしい。
なるほど、あながち冗談の選択肢ではないかもしれない。










ふと、横のXを見る。
やはり、今日はいい顔をしている。










「それよりさ、今日、すごくいい顔している。
いつもいいけど、今日は一段といいね。
なにか、吹っ切れたみたいな」










Xが言う。










「わたし、自分じゃないものになろうとしてた」










一瞬、なんて返していいかわからず、
信号待ちで止まって、アルミボトルのコーヒーを飲んだ。










「そのまんまで良かったんだね。
不安を感じないように直さなきゃって思ってた。
でも、不安になるのは副産物なんだよね」










「なにかやるべきことがあって、
そのための性質を持って生まれてきて、
だから不安っていう副産物がある」













不安を感じても、
そこからの立ち直りが人より遅くても、
それで『自分』だということが、
今のXは、かなり納得できてきたのかもしれない。










「良かったね。きっとこの街を出て、次にむかえるよ」










川沿いの駐車場が格安で、
そこを通り過ぎるとき、私はそれを指さしていった。










「ほら、あそこに止めれば、川沿いの桜があるいて見られるよ」













「ほんとだー!ちょうどいいね」











「って、Xがここで桜を見ることは、来年はないだろうけどね」













きっと、Xは、私のところを卒業する。













何も悲しいことじゃない。
ツインフレームがツインレイを支援するというのは、
そういうことなのだ。










来年は、住んでいる街もここじゃないだろう。










川沿いには、桜の他につつじが植えられている。
ことしのつつじの咲き具合も素晴らしい。










「一昨年行った◯◯公園の紫陽花がまたみたいな。
去年はいけなかったから」










去年は、Xの体調が悪く、
紫陽花の季節には、近隣の中学校まで歩いて見に行った。
車で行ける範囲の公園には、もっと咲いているが、去年は行けなかったのだ。













「昔は紫陽花あんまり好きじゃなかった。なんか辛気臭く感じられて」

























「でも、今はすごく色んな色があって、いいなって思う。
それも、こんな事があったから思えるようになったんだと思う。
一人じゃのりきれなかった」













「誰かの助けを借りなきゃならないほどの、
ピンチを乗り越えたんだから、きっとしあわせになれるよ」













「うん」










Yよ、
はやく迎えに来ておくれ。











やっぱり、私はXにしあわせになってほしい。










そして、あちこちで最高の紫陽花やら季節の花を見せてあげてほしい。










それが私の願いである。



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