忘れられないのは、彼といた頃の自分なのかもしれない。
別れてから、もう何か月も経っていた。
友達とご飯を食べれば笑えるし、仕事にも毎日ちゃんと行っている。
眠れない夜はまだあるけれど、別れた直後のように、一晩中泣くことも少なくなった。
それなのに、ふとした瞬間に彼を思い出す。
駅前のカフェを通りかかった時。
彼がよく着ていた服と、似た色の背中を見かけた時。
スマホの写真を整理していて、二人で撮った一枚が不意に現れた時。
胸の奥にしまっていたものが、突然こちらを向く。
「まだ好きなのかな。」
そう考えるたび、少しだけ自分が嫌になった。
彼はもう、私がいない毎日を普通に過ごしているかもしれない。
新しい誰かと笑っているかもしれない。
それなのに私は、いつまで同じ場所に立っているんだろう。
早く忘れなきゃ。
前を向かなきゃ。
もっと素敵な人を探さなきゃ。
そう思うほど、彼と過ごした頃の記憶は鮮明になっていった。
付き合い始めた頃は、朝起きるだけで少し嬉しかった。
スマホを開けば、彼から「おはよう」が届いている日もあった。
仕事で嫌なことがあっても、夜になれば話を聞いてくれる人がいた。
鏡の前で髪を整えながら、今日は可愛いと思ってもらえるかな、と考えていた。
新しい服を買う理由も、休日を待ち遠しく思う理由もあった。
彼に会える日が近づくほど、いつもの街まで少しきれいに見えた。
あの頃の私は、今よりよく笑っていた気がする。
誰かに大切にされていることが、ほんの少し自信になっていた。
私の話を聞いてくれる人がいる。
私に会いたいと思ってくれる人がいる。
そのことが、平凡だった毎日に小さな光を灯していた。
けれど、彼がいなくなったあと。
失ったのは、連絡をくれる相手だけではなかった。
次の休日を楽しみにしていた自分。
誰かに会うために、鏡の前で少しだけ頑張っていた自分。
愛されていることを疑わず、素直に笑えていた自分。
彼と一緒にいた頃の私は、彼が去ったあの日に置き去りになったままだった。
だから、忘れられなかったのかもしれない。
本当は、彼だけを追いかけていたわけではなかった。
彼といた頃の自分に、もう一度会いたかった。
あの頃のように笑いたかった。
誰かに必要とされていると感じたかった。
そして何より、私にも愛される価値があると、もう一度信じたかった。
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ここからは、一人の相談相手としてお話しさせてください。
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復縁のご相談をお受けしていると、
「どうしても彼を忘れられないんです。」
そうお話しくださる方が、たくさんいらっしゃいます。
もちろん、お相手様へのお気持ちが今も残っていることもあるでしょう。
一緒に過ごした日々が大切だったからこそ、簡単に忘れられないのは自然なことです。
けれど、お話を伺っているうちに、別の寂しさが見えてくることがあります。
彼がいなくなったことだけではなく、彼といた頃の自分まで、どこかへ消えてしまったように感じている。
そんな寂しさです。
誰かに愛されている時だけ、自分に価値があったわけではありません。
あの頃のあなたが輝いて見えたのは、彼が価値を与えてくれたからだけではないのです。
誰かを好きになり、その人を大切にしたいと願った。
会える日を楽しみにして、少しでも可愛くなろうとした。
相手が疲れていれば心配し、嬉しいことがあれば一緒に喜んだ。
そこにあった優しさも、愛情も、まっすぐさも、最初からあなたの中にあったものです。
彼がいなくなったからといって、そのすべてまで失われたわけではありません。
ただ今は、別れの痛みの奥に隠れて、自分では見つけにくくなっているだけなのかもしれません。
復縁を願うことは、決して悪いことではありません。
忘れられない自分を、無理に変えようとしなくても大丈夫です。
ただ、彼を取り戻せたら、あの頃の自分にも戻れる。
もし、そんな願いまで重なっているのなら、一度立ち止まってみてほしいのです。
復縁とは、彼にもう一度愛してもらうことで、自分の価値を取り戻すことではありません。
離れていた時間を越えて、今のお二人が新しい関係を築けるかを見つめることです。
そのためには、お相手様のお気持ちだけではなく、今のあなたが本当に取り戻したいものにも、静かに目を向ける必要があります。
彼なのか。
彼と過ごした未来なのか。
愛されていた安心感なのか。
それとも、彼の隣で笑っていた自分なのか。
いくつもの想いが絡まっている時、一人で答えを見つけるのは簡単ではありません。
考えれば考えるほど分からなくなり、結局また彼のSNSや過去のメッセージを開いてしまう夜もあるでしょう。
そんな時は、無理に忘れようとするよりも、今のお二人の関係と、ご自身のお心を一つずつ見つめ直してみてください。
彼といた頃のあなたは、彼の中に置いてきたわけではありません。
愛されていたあなたも、誰かを大切にできたあなたも、今もちゃんとあなたの中にいます。
そのことを思い出せた時、復縁という願いも、これまでとは少し違う形で見つめられるようになるのかもしれません。