完璧な1冊を作ろうとして、止まっていませんか

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ビジネス・マーケティング
朝、現場に出る直前に電話が鳴りました。「すみません、洗剤ってどれくらい薄めるんでしたっけ」。新人さんじゃありません。入って半年の、もう慣れたはずの人からです。責める気にはならないんですよね。教えてもらったのは最初の1回きりで、そのあと誰にも聞かれず、なんとなく目分量でやってきた。そういう話、どの会社にもひとつはあると思います。

で、「そろそろマニュアルを作らないと」と思う。思うんですが、たいていそこで止まります。理由はだいたい同じで、「全部を網羅した1冊」を作ろうとするからです。受付から退室まで、道具の置き場からクレーム対応まで。書き出す項目が増えるほど、着手が重くなる。結局、誰も書き始めないまま、また次の電話が鳴る。

うちが勧めているのは、逆の始め方です。最初は、電話で聞かれたことだけを1枚に書く。「洗剤の薄め方」なら、それだけでいい。どの洗剤を、どの容器で、何倍に薄めるか。写真がなくても、「赤いキャップ1杯をバケツの線まで」みたいに、手が動く言葉で書く。1枚できたら、それを現場に置く。次の電話が別の内容だったら、また1枚増やす。こうして増えた10枚が、その会社の最初のマニュアルです。最初から1冊にしようとしなくていいんです。

書くときのコツは、ふたつだけあります。ひとつは、作業の順番どおりに書くこと。頭の中の説明は、つい「気をつけること」から始まりがちです。でも現場で紙を見る人は、手順の順番で動きます。先にやることから書く。それだけで、読む側の迷いが減ります。

もうひとつは、書いたら新人さんに読んでもらうこと。ベテランが読むと「当たり前だろ」で終わってしまう文章でも、新人さんは引っかかるところが違います。引っかかった場所こそ、直す場所です。マニュアルは、書いた人の頭の中をきれいにしたものじゃありません。読む人がつまずかないものが、いいマニュアルです。

完璧な1冊は、最初から作らなくていい。電話が鳴った1枚からで、十分です。その1枚があるだけで、朝の電話は1本減ります。

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