「スクールを卒業したけれど、仕事として通用する自信がない」
「参考を見ないとデザインできない」
「添削では直せるけれど、次の案件でまた迷ってしまう」
「何を勉強すれば、今の状態から抜け出せるのかわからない」
これまでデザインを教える中で、何度も聞いてきた悩みです。
未経験から学び始めた人だけではありません。
制作会社で働いている人、
すでにフリーランスとして案件を受けている人、
子育てをしながら再スタートを目指す人も、
同じような壁にぶつかっています。
でも、わたくしはその原因を「センスがないから」だとは思っていません。
多くの場合、足りないのはセンスではなく、デザインを考える順番です。
PhotoshopやFigmaが使えても、
仕事で迷う理由
デザインスクールでは、PhotoshopやFigmaの使い方、
バナーやWebサイトの作り方を学びます。もちろん、それらは必要です。
ただ、実際の仕事では、
その前にもっと多くのことを考えなければなりません。
誰に見てもらうのか
その人は何に困っているのか
クライアントは何を強みとして伝えたいのか
クライアントの一番伝えないといけない、いいところは?
競合とどう違うのか
見た人に、どんな印象を持ってほしいのか
最終的に、どんな行動をしてほしいのか
ここが曖昧なまま、いきなりPinterestや参考サイトを探し始めると、
「なんとなく良さそうなデザイン」を組み合わせることになります。
見た目は整っていても、なぜこの色なのか、なぜこの写真なのか、
なぜこのレイアウトなのかを説明できない。
修正を言われるたびに正解がわからなくなり、自信もなくなっていきます。
これは技術不足というより、判断するための土台がない状態です。
わたくしが最初に教えるのは、デザインの作り方ではありません
わたくしの講座では、いきなりデザインを作り始めないことがあります。
まず、その人がこれまで何をしてきたのか、どんな仕事に興味があるのか、どのような働き方を目指すのかを一緒に整理します。
たとえば、あるメンティーさんは
「飲食店向けのデザイナーになりたい」と考えていました。
話を深掘りすると、前職では人の話を丁寧に聞き、悩みを整理して、
相手に合った支援を考える仕事をしていました。
さらに、食や地域を通じて、
人や仕事が循環する場をつくりたいという思いも持っていました。
それなら、目指す姿は単に「飲食店の画像をつくる人」
ではないかもしれません。
お店や生産者の思いを聞き、強みを整理し、
発信内容や販売導線まで一緒に考える。
デザインを手段にして、ブランドづくりに伴走する人のほうが、
その人の経験や強みを活かせます。
反対に、すでに一定レベルの制作ができるメンティーさんには、
ツールの基礎よりも、コンセプト開発やアートディレクション、
提案の言語化を重点的に伝えます。
全員に同じカリキュラムを当てはめるのではなく、
現在地と目標の間に何が足りないかを見つけることから始めます。
デザイナーに必要なのは「頭を養う・目を養う・手を養う」の3つ
わたくしは、デザイナーが伸びるためには
「頭を養う・目を養う・手を養う」の3つが必要だと考えています。
1.頭を養う——目的から逆算して考える力
ターゲット、競合、クライアントの強み、
ユーザーが得られる未来を整理し、「何を伝えるべきか」を決める力です。
クライアントの目的は、LPやWebサイトを作ることではありません。
その先にある集客、採用、売上、認知度拡大、信頼獲得
などを実現することです。
制作物ではなく、目的を見る。
ここが、作業者とパートナーの分かれ目になります。
それには、
「デザインの本質を理解する」「ヒアリング力」「質問力」「調査力」「対話力」「問題解決能力」「提案力」「仮説を立てて考える力」「課題発見と解決方法」「らしさの見せ方」「価値提供とは」
などの頭を養うことが必要です。
2.目を養う——良いデザインを見抜き、言葉にする力
良いデザインをたくさん見るだけでは、なかなか身につきません。
「かっこいい」「好き」で終わらせず、誰向けなのか、
どんな印象をつくっているのか、
なぜ目に止まるのかを細かく言葉にします。
わたくしの講座では、参考デザインを集めて、
たとえば「親しみやすい/上質」「シンプル/独自性が高い」
といった軸で分類します。
分類すると、デザインの違いが見えるようになります。
そして、クライアントにとって最適な方向性を、
感覚ではなく理由を持って選べるようになります。
「いいデザインとは何か」「デザイン参考の探し方」「引き出しの増やし方」「考える7割、手作業3割」「どこがいいのか分析、研究」
が目を養うことです。
3.手を養う——考えたことを形にする力
余白、文字の強弱、写真の見せ方、構図、色、情報整理。
ここで初めて、一般的にイメージされる「デザインスキル」が出てきます。
わたくしは「デザインしないデザイン」を目指しています。
「アキ まのあけかた」「バランス」「メリハリ」
これだけでどんなデザインもできるようになります。
デザインは飾りではありません。
もちろん手を動かす量は必要です。
ただし、目的や分析がないまま模写や制作を繰り返しても、
「きれいに作る力」だけが伸びて、実務で判断する力は育ちにくい。
だからわたくしは、頭で考え、目で分析し、手で形にする。
この順番を大切にしています。
「参考を探す」ことと「真似する」ことは違う
参考を見ること自体は悪くありません。プロも必ずリサーチします。
問題は、何のために探しているのかが曖昧なことです。
ターゲットや伝えたい価値が決まっていれば、
参考デザインは答えを借りるものではなく、
可能性を探るための地図になります。
「この企業は幅広い年代を採用したいから、独自性を強くしすぎず、明るさと親しみやすさを優先する」
「このサービスは失敗したくない人が対象だから、ポップさよりも技術力と安心感が伝わる上質な方向が合う」
このように理由を持って選べれば、
デザインは少しずつ自分の判断で組み立てられるようになります。
デザインすることは、深いジャングルの中に行くことです。
そのためには出口がどこにあるか、目指す方向を明確にした地図がいる。
その地図を最初に作らないと必ず迷います。
添削で正解を渡すだけでは、次の案件でまた迷う
完成したデザインに対して、
「文字を大きく」「余白を広く」「この色に変える」と伝えるだけなら、
その場では良くなります。
でも、それだけでは次の案件で同じように迷います。
大切なのは、
「なぜ文字を大きくするのか」
「なぜ余白が必要なのか」
「そもそも誰に何を伝えるデザインなのか」
まで一緒に考えることです。
わたくしがメンターとして目指しているのは、
わたくしの正解を覚えてもらうことではありません。
最終的には、メンティーさん自身が仮説を立て、
理由を持ってデザインを選び、
クライアントに提案できるようになることです。
作れるデザイナーから、相談されるデザイナーへ
AIによって、見た目を整えることや、指示された制作物をつくることは、
これからますます簡単になります。
だからこそ必要になるのは、
クライアント自身も言葉にできていない課題を聞き出し、
情報を整理し、より良い方向を提案できる人です。
「言われたものを作る人」ではなく、
「何を作るべきかから一緒に考えられる人」になる。
わたくしは、デザインを教えることを通して、
そんなパートナー型のデザイナーを増やしたいと思っています。
もし今、スクールを卒業したのに自信が持てない、
独学で何から進めればいいかわからない、
案件はあるけれど成長が止まっていると感じているなら、
足りないのは才能ではないかもしれません。
今の自分に必要な学びと、
その順番が見えていないだけかもしれません。
一人で迷い続ける時間を、考え方を身につける時間に変えたい。
そんな人に読んでもらえたらうれしいです。
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