ココナラで登録してしばらくたちますが、
やはりまだ仕事をいただくというところまできていません。
どのようにすればいいのか、
もう一つ分かっていないのです。
アドバイスをいただければ嬉しいのですか……
さて『新しい光に包まれて』第四回です。
☆
数人の人に道を尋ねながらやっとついた家は、かなり大きな二階建ての建物だった。表札にはっきりと『佐山』と彫りつけられている。住所も間違っていない。聖太郎が思い切って門についているインターホンのボタンを押すと、玄関のドアを開けて現われたのは、建物の立派さとは全く不釣り合いな、実に貧相な痩せこけた男だった。年は二十五から三十くらいに見受けられる。
もう百年くらい外に出たことのないような、真っ白な顔をしている。明らかに病気らしく見える。
男が何も言わずに、ぼんやりと二人の学生を見比べているので、聖太郎もどんな挨拶をしていいのか分からずにいた。とりあえず例のメモを彼に渡して、黙って頭を下げた。
ところがそのメモを見た瞬間、男の顔色がみるみるうちに赤みを帯びて生き生きとしてきた。そして驚きを含んだ目を真ん丸に開いて、紙と二人の学生の顔を交互に見ている。
その変化があまりに突然だったので、聖太郎の方が少したじろいだくらいである。見ると、江理子の方は平然とした顔をしている。まるでこの異変をあらかじめ予測していたごとくである。
「あなたがたでしたか……」と男は低くつぶやくように言う。語尾がはっきりしない。何か信じられないものでも見るように、聖太郎と江理子の顔を見比べている。
男はそれからいかにも何かを言いたそうに口をもぐもぐさせていたが、いつまで待っても言葉が発せられない。聖太郎はその沈黙に耐えきれずに、とうとう「実は……」と始めて、自転車で佐山久美子とぶつかったことと、彼女がこのメモと二万円の現金を置いて行ったことを手早く語る。
沈痛な面持ちで聖太郎の話を一通り聞いた後、男はここで驚くべき言葉を吐いた。
「久美子は一カ月前に死んでます」
聖太郎は思わず絶句して、助けを求めるかのように江理子の方を見た。彼女は素知らぬ顔をして、佐山家の建物の屋根の上のBSアンテナの方に目を向けている。仕方がないので、聖太郎は、
「じゃあ、ぼくが会ったのは誰なんです?」と、男に解決を求めた。
「きっと久美子でしょう」
「でも、久美子さんは死んだんでしょう?」
「確かに久美子は死にました。医者にも原因と治療法の分からない熱病に冒されて、三週間ほど苦しんだ挙句に死にました。でもひとつ不思議なことを言い残して死んだのです。『わたしが死んだあとに、――新しい光に包まれて――とわたしの筆跡で書かれたメモを持って現われた人物に、この木彫りの人形を渡すように』と。その人形を今持って来ます」と言って、男は家の中に駆け込む。そして五秒もしないうちに、小さな木箱を持って聖太郎の前に現われた。
「これが、その人形です」と言って、男が木箱の蓋を開けて聖太郎に手渡す。聖太郎は事態がどうなって行くのか見当もつかないぼんやりとした頭のまま、木箱の中の人形を取り出してしげしげと眺める。
それは明らかに素人が作ったと思われる粗削りな品物だったが、笛を吹く一人の少女の姿をかたどったものだとはっきりと見て取れた。
その人形を江理子に手渡したが、江理子は何も言わない。面食らっている聖太郎とは正反対に、相変わらず平然とした表情は崩さない。『君は何か知っているのかい?』と訊ねたかったが、気味が悪いのが先に立って質問を控えていると、江理子はさっさと人形を聖太郎に返した。
キラキラ世界が輝いて見える今の状態は、実は夢の中の出来事ではないかと、聖太郎はしばらく疑った。一カ月前に死んだ女が死ぬ前に残した言葉の中に、見も知らぬ自分の存在が入っていたなど、とても信じられないことだった。
そしてこの笛を吹く少女の人形の意味は一体何なのだろう?