「入社して、すぐに辞めてしまった」。外国人雇用の相談で、少なくない話です。そして、その気持ちの芽は、多くの場合、最初の1週間にあります。
知らない国の、知らない会社。言葉も、通勤の道も、昼ごはんの買い方も、全部が初めてです。日本人の新入社員なら、困ったときに頼れる家族や友だちが近くにいることも多いでしょう。でも外国人スタッフは、頼れる人がほとんどいない中で、初日を迎えています。
その1週間で「ここなら、やっていけそうだ」と思えるか。「来なければよかった」と思うか。その差は、思っているより大きいのです。
最初の1週間は、仕事を教える週ではなく、安心してもらう週です。
初日 ─ 「待っていました」を形にする
初日にやってほしいのは、歓迎の気持ちを、目に見える形にすることです。
・ロッカーや靴箱に、名前を書いておく
・社長や工場長が、名前を呼んであいさつする
・トイレ、休憩場所、非常口を、実際に歩いて案内する
・困ったときに声をかける相手を、1人決めて紹介する
名前の読み方は、事前に本人に確認しておいてください。正しく呼ばれるだけで、人は「ここにいていい」と感じます。
制服や道具も、サイズを事前に聞いて用意しておいてください。届いていない、合わない。初日にそれが起きると、本人は「歓迎されていない」と感じてしまいます。
昼ごはんを、誰かと一緒に食べる。帰りの通勤路を、一度だけ一緒に歩く。そんな小さなことが、初日の緊張をほどいてくれます。
2〜3日目 ─ 暮らしの足場を固める
仕事より先に、暮らしです。銀行の口座、スマホの契約、近くのスーパー、ゴミの出し方、役所での手続き。
一つでもつまずくと、本人は仕事どころではなくなります。特にスマホは、母国の家族と話すための命綱です。ここが整うだけで、表情がぱっと明るくなる人は少なくありません。
この2〜3日は、先輩や担当者が付き添える日程にしておいてください。「一人で行ってきて」では、慣れない窓口の前で立ち止まってしまいます。近くの病院の場所も、このときに一緒に確かめておくと、いざというときに慌てません。
4〜5日目 ─ 仕事は「1つずつ」「見せて」
仕事に入ったら、一度にたくさん教えないことです。
日本人の新人なら一日で覚えることでも、言葉を聞き取りながらだと、何倍も疲れます。まず一つの作業を、見本を見せて、一緒にやって、最後に一人でやってもらう。できたら、ほめる。それから次の作業へ進みます。
言葉より、見本のほうが伝わります。説明は短く、手元を見せる時間を長くしてください。
ただし、安全のルールだけは別です。危ないこと、やってはいけないことは、最初に、写真や母国語の資料も使って、確実に伝えてください。ここだけは「少しずつ」ではいけません。
覚えることが多い職場なら、作業の手順を写真つきで1枚にまとめておくと便利です。本人が寮に帰ってから、何度でも見返せます。
週の終わり ─ 15分だけ、話を聞く
1週間の最後に、15分でいいので面談の時間をとってください。
聞くことは3つだけです。「困っていることはありますか」「わからなかったことはありますか」「体は大丈夫ですか」。
最初は、たぶん「大丈夫です」と返ってきます。それでもかまいません。会社が気にかけていると伝わること自体に、意味があります。言葉に不安があれば、母国語のわかる人に同席してもらってください。
もし小さな困りごとが出てきたら、翌週の早いうちに、一つでも解決して見せてください。「言えば、動いてくれる会社だ」と伝われば、次の相談につながります。
面談は、2週目、1カ月目と、少しずつ間をあけながら続けてください。最初の1週間で終わりにしないことが、何より大切です。
今日できる一手
次に入社する人のために、「最初の1週間の予定表」を1枚作ってみてください。誰が、何日目に、何をするか。
それを本人の母国語に訳して、初日に渡せたら理想です。先が見えるだけで、人の不安はずいぶん小さくなります。予定表には、担当者の名前と顔写真も入れておくと、本人は「誰に聞けばいいか」で迷いません。
亀井の一言
人は、最初に大事にしてもらった場所を、なかなか離れません。最初の1週間は、いちばん効く「定着への投資」です。
外国人スタッフの定着や受け入れのご相談は、こちらのサービスで承っています。
明日は「『寮があるから安心』は、会社の思い込みかもしれない」を書きます。