面接で「日本語、できますか?」と聞くと、ほとんどの人が「はい、できます」と答えます。自己紹介もなめらかで、受け答えもしっかりしている。これなら大丈夫だと思って採用した。
ところが、現場に入ると指示が通じない。そんな相談を、私はよく受けます。
本人がうそをついたわけではありません。面接でよく聞かれることは、何度も練習してきたから話せる。でも、現場で毎日飛び交う言葉は、練習してきた言葉とは違います。
面接の日本語と、現場の日本語は、別物です。
試験の級は「読む・聞く」の目安
日本語の力を見るとき、多くの会社が日本語能力試験(JLPT)の級を参考にします。N1からN5までの5段階で、いちばんやさしいのがN5、いちばん難しいのがN1です。
ただ、この試験には、会話や作文の試験はありません。公式サイトでも、レベルの目安は「読む」「聞く」で示されています。
たとえばN4の「聞く」の目安は、日常的な場面で、ややゆっくり話される会話なら、内容がほぼ理解できる、というものです。機械の音がする現場で、早口で言われる指示とは、条件がかなり違います。
もう一つ、合格したのがいつかも見てください。合格証は、その時点の力の証明です。そのあと日本語を使う機会がなければ、力は少しずつ落ちていきます。
級は大事な入口です。でも、「話せるか」「現場で通じるか」は、面接で会社が自分の目で見るしかありません。
面接で試してほしい3つのこと
・仕事の場面で質問する(「機械が止まったら、どうしますか?」など)
・練習していない話題を振る(休みの日のこと、地元の食べ物など)
・短い指示を出して、その通りに動いてもらう(「このペンを、左の箱に入れてください」など)
練習してきた答えは、すらすら出てきます。でも、練習していない話題になると、言葉を探しながら話すことになります。そこに、その人の本当の力が出ます。
そして、現場でいちばん大事なのは、聞いた指示のとおりに動けるかどうかです。口で答えられることと、体が動くことは、同じではありません。
見てほしいのは、答えの正しさより、わからない言葉に出会ったときの反応です。「もう一度お願いします」と聞き返せる人は、入社後も自分で伸びていきます。聞き返せない人には、最初の数カ月、会社の側に手厚い支えが要ります。
「聞く・話す・読む」を分けて見る
日本語の力は、1つの数字ではありません。
話すのは得意でも、漢字の掲示が読めない人がいます。読むのは得意でも、早口が聞き取れない人もいます。面接では、この3つを分けて、メモに残しておいてください。評価表に「聞く」「話す」「読む」の欄をつくり、○△×をつけるだけでも十分です。
読む力は、現場の安全表示や掲示物を1枚見せて、「これは、どういう意味ですか?」と聞けばわかります。
そのメモが、そのまま入社後の教え方の設計図になります。読むのが苦手な人には、図や写真の入った指示書を。聞くのが苦手な人には、ゆっくり、一度に一つの指示を。
日本語が苦手な人を落とせ、という話ではない
誤解してほしくないのは、日本語の力が低い人を採るな、という話ではないことです。
日本語は、入社してからも伸びます。仕事への姿勢、まじめさ、体力。日本語のほかにも、大事なことはたくさんあります。入社後に日本語を学べる場を会社が用意できるなら、今の力より「伸びる力」を見て採る、という考え方もあります。
問題は、会社が本人の日本語の力を高く見積もりすぎて、「言ったのに、わかっていない」とすれ違うことです。最初に正しく見極めておけば、会社の準備も、本人へのかかわり方も変わります。
今日できる一手
次の面接のために、「仕事の場面の質問」を3つだけ用意してください。たとえば「けがをしたら、最初に誰に言いますか?」「この表示は、どういう意味ですか?」。御社の現場で、本当によく使う言葉で作るのがコツです。面接官が複数いるなら、質問をそろえておくと、人による評価のばらつきも減ります。
すでに外国人スタッフが働いているなら、その人が入社したころ「どこでつまずいたか」を思い出してみてください。それが、そのまま次の面接の質問になります。
亀井の一言
「日本語できます」は、うそではありません。ただ、どこまでできるのかは、会社が自分の目で確かめるものです。
外国人スタッフの定着や受け入れのご相談は、こちらのサービスで承っています。
明日は「入社初日に決まる。最初の1週間でやること」を書きます。
出典
・日本語能力試験 公式サイト「N1~N5:認定の目安」
・日本語能力試験 公式サイト「よくある質問」