このブログは2年ほど前に別のブログに掲載していた記事です。
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「エシカルデザイン」という言葉があります。エシカル(ethical)とは、「倫理的な」や「道徳的な」という意味をもっている言葉です。エシカルデザイン(ethical design)とは「倫理的、道徳的なデザイン」を意味します。「ビジネス的な利益だけではなく、ユーザー個人や社会がより豊かになるようにデザインしよう」という考え方ですね。
これをもっと、クリエイティブな活動全般について広めたものを「エシカルクリエイション」と言っておきましょう。(公式にはこんな言葉はないようです。)
今回のブログでは、今大きなニュースとなっている2020年東京オリンピックを巡る不正疑惑を題材にして、「エシカルデザイン」「エシカルクリエイション」について考えたいと思います。というのは、2020年東京オリンピックの不正疑惑には、日本の三大広告代理店が関わっており、広告代理店の仕事の多くは、デザインを初めとするクリエイティブ活動の多くに関わることだからです。
「商業主義に走る大手企業の不正なんて、大手企業とは何の縁もないデザイナーやその他のクリエイターには関係ないことだ」という考え方もあるでしょうが、日本のデザイナーやクリエイター自身の価値観・世界観・倫理観が問われている問題とも言えるのではないでしょうか?2020年東京オリンピックを巡る不正疑惑をきっかけに、もう一度、「エシカルデザイン」「エシカルクリエイション」について考える必要があると思います。
オリンピックというのは、乱暴な見方をすると、3つクリエイティブな活動から構成されるのかも知れません。1つは、当然、競技そのものの完成度をクリエイトするアスリートの活動です。2つ目は、オリンピックを世界に向けてクリエイティブにアピールする広報活動です。3つ目は、クリエイティブにアスリートを支えたり施設を建設したりする準備活動です。
2020年東京オリンピックでは、残念ながら2つ目の活動が黒い闇に包まれた状態になってしまいました。
不正疑惑を作った黒幕は3団体あります。それに東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の不正疑惑も加わるかも知れません。3団体とは、「電通」「博報堂」「ADKホールディングス」という日本の3大広告代理店会社です。
11月25日、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会が発注したテスト大会の計画立案業務を巡る談合事件で、東京地検特捜部と公正取引委員会は、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で最大手「電通」の家宅捜査に入りました。28日には、新たに広告業界2位の「博報堂」の本社(東京都港区)にも家宅捜索に入りました。3位の「ADKホールディングス」(東京都港区)は特捜部に談合への関与を認めているようです。業界トップ3が全て談合への関与を疑われる異例の事態です。この談合は、他の広告会社でもあったようです。
「株式会社ADKホールディングス」は、日本の広告代理店業務を行う企業を統括する純粋持株会社だと説明されています。日本の広告市場において、電通・博報堂に次ぐ第3位の売上高(単体ベース)の総合広告代理店グループのようです。
「博報堂」は、日本の広告黎明期から活動を続ける広告代理店のようです。「電通」と並んで広告代理店の二大巨頭という意味で「電博」(でんぱく)と総称されているらしいです。しかし、近年は大規模な海外広告会社を傘下に加えている電通との差は広がりを見せているようです。大貫卓也をはじめ、箭内道彦や佐藤可士和、佐野研二郎など数多くの著名なクリエイターを輩出していますが、既にこの4人は退社をしています。
問題は「電通」ですね。電通の規模は広告代理店としては国内最大で、世界では第6位のようです。「広告界のガリバー」の異名を持つようですが、数々の社会問題も生じさせており、とりわけ、2020年東京オリンピックでの不正疑惑は、人々に良い思いを残すはずの東京オリンピックに暗い影を落としています。電通絡みの社会的な事件のうち、大きなものを拾えば次のようになります。
○1991年の男性社員の過労死(電通事件)が発生。
○2015年8月、ベルギーのリエージュ劇場とそのロゴデザイナーが、元博報堂社員だった佐野研二郎による2020年東京五輪のエンブレムのデザインは自作の盗作であるとして、IOCを相手取りベルギーの裁判所にエンブレムの使用差し止めを求める訴訟を起こした。
○2015年12月に新人女性社員の過労自殺が発生。
○2016年5月、英国ガーディアン紙が2020年東京五輪招致過程における裏金疑惑を報じ、その中で電通の関与を指摘した。記事によると東京五輪開催決定に関し、日本の東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会はシンガポールのコンサルタント会社の銀行口座に裏金を振り込んでおり、この資金が当時の国際オリンピック委員会(IOC)委員であるラミーヌ・ディアックへ渡ったとされる。
○2022年7月、東京2020五輪組織委員会で理事を務めた電通の元専務高橋治之が、AOKIホールディングス青木拡憲前会長から数千万円を受け取っていたことをめぐり、東京地方検察庁特別捜査部が電通本社を家宅捜索した。同年8月、電通子会社を介して資金を受け取っていたとして高橋治之が受託収賄、青木拡憲ら3人が贈賄罪で東京地検特捜部に逮捕された。
○2022年11月25日、東京地検特捜部と公正取引委員会により、東京五輪・パラリンピック組織委員会が発注したテスト大会業務の入札で談合した疑いがあるとして、独占禁止法違反の疑いでの家宅捜索を受けた。
これだけの社会的事件を起こしながら、尚もクリエイティブな産業界に君臨している「電通」とは、その業界にとっていったいどんな存在なのでしょう?!私は専門家ではないので、そこは分からない所ですが、クリエイティブな産業界にとって、「電通」が大手を振って未だに存在感を保っているというのは、余り良いことではないように思えます。
「電通出身の著名人」はいっぱいいます。主な人を拾ってみましょう
安倍昭恵(元内閣総理大臣夫人)
尼子騒兵衛(漫画家)
荒木経惟(写真家)
新井満(芥川賞作家)
伊集院静(作家・作詞家)
岡康道(クリエイティブディレクター、CMプランナー)
岸勇希(クリエイティブディレクター)
佐々木宏(2020東京五輪・パラリンピック等のクリエイティブディレクター)
菅野薫(クリエイティブディレクター)
竹内良幸(デザイナー)
藤原伊織(直木賞作家)
渡辺文雄(俳優)
その他、多数の著名人がまだまだいます。本当は、これらの人に、今だからこそ、「”電通”とは何か」を語って欲しいですね。
ここで注文すべきは、安倍昭恵夫人が電通出身であることです。ご存知のように、2020年東京五輪と安倍元首相の関係は深いです。そして、安倍元首相と電通との関係も深かったと推測できます。
安倍元首相だけでなく、自民党と電通との関係は昔から根深いものがあるようです。オリンピック組織委員会の森喜朗前会長と電通ナンバー2の髙田佳夫代表取締役は、同じマンションに住む親密な間柄だったようです。真偽は定かでありませんが、自民党のポスターは電通が全て取り仕切っていると言います。
政治家はとかくイメージが大切ですので、デザイン的なものでそのイメージづくりをする必要があり、そこにクリエイティブなディレクションも関わってきますから、広告代理店のようなイメージ戦略の専門家が必要になってきます。
デザイン界やクリエイション産業のエシカルな部分が歪められる1つの要因として、この政治とのしがらみがあるのかも知れませんね。
次回の記事では、この2020年東京オリンピックの不正疑惑を受けて、「エシカルデザイン」「エシカルクリエイション」をどう考えていけば良いかを述べてみたいと思います。