【C.H.Sisson英訳】
‘Are you indeed that Virgil, are you the spring
Which spreads abroad that wide water of speech?’
When I had spoken, I bowed my head for shame.
【Mark Musa英訳】
“Are you then Virgil, are you then that fount
from which pours forth so rich a stream of words?”
I said to him, bowing my head modestly.
【野上素一和訳】
「それでは、あなたは末は豊かな言葉の河を
ひろげている水源ともいうべきヴィルジリオですか」
と私は面はゆい気持で答えた。
【平川祐弘和訳】
「ではあなたがあのウェルギリウス、
あの言葉の大河の源流となられた方ですか?」
と私ははずかしさに面(おもて)を赤らめて答えた。
【語句】
indeed=(強調に用いて)実に、実際に、全く。
spring=泉。
abroad=広く。
speech=話し言葉、話すこと。
Speech is silver, silence is golden.(雄弁は銀、沈黙は金。)
bow=(頭・首を)下げる、垂れる。(ひざ・腰を)かがめる。
shame=恥ずかしい思い、恥ずかしさ。
fount=(詩語)泉、源泉。
pour=(液体などが)流れ出る。(言葉などが)早口に出る、どっと口をついて出る。
forth=前へ、外へ。
stream=流れ、奔流、小川。
river=海や湖に直接流れ込む、比較的大きな川。
brook=水源からriverに至る小川で、文語的。
modestly=謙遜して、謙虚に、控えめに。
modest=自己主張を余りせず、控えめでつつましやかな。
shy=性格的にまたは人との交際に慣れていないために人と接したがらない、人前ではにかみの強い。
timid=自信が無く、おずおずして内気な。
humble=柔和で、高慢や独断的な所が無く、へりくだった。卑屈の意で使われることもあります。
【解説】
「ダンテの『神曲』から、その基本材料となっている聖書やアリストテレスの哲学者やトマス・アクィナスの神学を取除いたとしても、そこに残るものがある。確実に残るものがある。それは何か。ギリシャ神話やウェルギリウスの詩篇などによって養われたダンテの詩的映像(イメージ)である。ダンテの『神曲』ことに「地獄篇」を不朽のものにしているのは、この詩的映像の造型性と感覚の新鮮さにある。それに、その理想精神の高さと現実の醜悪・悲惨えぐり出しの烈しさにある。」(北川冬彦)