【C.H.Sisson英訳】
I was born sub Julio, although it was late
And I lived in Rome under the good Augustus
In the time of the gods who were false and told lies.
【Mark Musa英訳】
I was born, though somewhere late, sub Julio,
and lived in Rome when good Augustus reigned,
when still the false and lying gods were worshipped.
【野上素一和訳】
私はユリオの晩年に生まれて
善良なアウグストの御代に
虚偽と虚言者の時代にローマに住まった。
【平川祐弘和訳】
生まれたのはユリウス・カエサルの時代、それも後期だ、
そして良きアウグストゥス帝の御代にローマで暮した、
嘘偽りの異教の神々の時代だった。
【語句】
false=間違った、誤った、虚偽の(⇔true)。
lie=(故意に人をだまそうとしてつく)うそ、偽り、虚偽(⇔truth)。強い非難の感情が含まれた語です。
fib=実害のない軽いうそ。ささいな(罪のない)うそ。
falsehood=わざと言ううそだが、止むを得ない場合のうそ。
lie=うそをつく。lied(過去形・過去分詞)、lying(現在分詞)。
somewhere=(数量・時刻・年齢など)おおよそ、大体。
reign=主権を握る、君臨する。帝王としての位置を占める。これは君主の位置にあることを意味し、必ずしも支配・統治することは含まれません。
govern=権力のある者が政治を行なって支配する。
rule=国王・政府などが権力を行使して、国・国民などを直接的に完全支配する。
The British sovereign reigns but does not govern.(英国の君主は君臨するが、統治はしない。)
worship=(神などを)礼拝する、拝む、崇拝する。絶対的な尊敬・敬愛の念を抱く。
revere=大きな尊敬・感情の気持ちを抱く。
adore=心からの敬意と愛情を抱く。
ユリオの晩年=原文ではsub Julio(subは「~の間に、~の時に、~の下に、~の支配下に」)とありますが、ヴィルジリオ(ウェルギリウス)はジュリオ・チェーザレ(ユリウス・カエサル、紀元前100~44年)に遅れること29年、その晩年に生まれたことを示しています。カエサルはローマ最大の政治家であり、『神曲』では彼の暗殺者は地獄界の一番底に置かれています。
善良なアウグスト=ローマ皇帝アウグストゥス・オクタウィアヌス(紀元前63~後14年)を指します。
【解説】
カエサルは古代ローマ最大の軍人、政治家にして文筆家としても知られ、ドイツのローマ法学者モムゼンは「ローマが生んだ唯一の創造的天才」と賞賛しています。カエサル暗殺後、「アウグストゥス時代」が到来しますが、それはラテン文学の「黄金時代」とも呼ばれ、直前の散文全盛期とは対照的に詩歌の全盛時代となり、その代表者がウェルギリウスでした。