『分かった』だけで、少し安心してしまう

『分かった』だけで、少し安心してしまう

記事
コラム
資格を取ろうと思って、
参考書を買う。

ランニングを始めようと思って、
スポーツウェアを買う。

部屋を片付けようと思って、
収納グッズを買う。

まだ何も始まっていないのに、
なぜか少し安心する。

そんな経験はありませんか。


私は、この「安心する」感覚が、
ずっと不思議でした。

もちろん、
参考書を買うことも、
ウェアを用意することも、
収納グッズを選ぶことも、
決して無意味ではありません。

何かを始めるための準備は、
大切な一歩です。

でも、その一方で、
「今日は参考書を買ったから満足。」
そんな気持ちが生まれるのも事実です。

そして数日後には、
買った参考書が、
本棚で静かに出番を待っていたりする。

たぶん、今も買った時のままの姿で。

心理学には、
「象徴的自己完成」と呼ばれる
考え方があります。

例えば、
目標を宣言したり、
道具を揃えたり。

実際にはまだ行動していなくても、
「準備をした」というだけで、
目標に近づいたような感覚を、
先取りしてしまうことを指します。

面白いのは、
周囲に目標を宣言しただけでも、
同じことが起きるという点です。

言っただけで、
進んだ気になってしまう。

もちろん、
参考書を買っただけで満足したり、
計画を立てただけでも、
安心したりする。

私はこの話を聞いたとき、
その現象そのものよりも、
別のことが気になりました。


人が安心するのは、
現実が変わったからではなく、
「変われそう」という感覚だけで十分なのだ、と。

参考書を買った瞬間。
未来の自分が、
少しだけ近づいた気がする。

誰かに相談したあと。
まだ何も解決していないのに、
少しだけ心が軽くなる。

新しい手帳を買った日。
まだ白紙ページばかりなのに、
来年はうまくいく気がしてくる。

占いを受けたあと、
未来が決まったわけでも、
現実が変わったわけでもない。

それでも、
「これで進めるかもしれない。」

そんな感覚が生まれることがあります。


そう考えると、
やはり現実そのものよりも、
未来が動き始めたという実感に、
安心しているのかもしれません。

・準備をしたくなる
・誰かに話を聞いてもらいたくなる
・答えを知りたくなる

それは、
意志が弱いからでも、
怠けているからでもなく、
人間がもともと持っている
一つの面白い仕組みなのかもしれません。


そして、書きながら気づきました。

この仕組みを「分かった」いま、
私は、安心した気持ちになっています。

まだ何も、始めていないのに。

仕組みが分かると、
参考書を買っただけで嬉しくなる自分も、
少しだけ愛おしく思えてきます。

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「買っただけで安心したもの」は、
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