作:ユイ姉
ー気になる鑑定所ー
6月だというのに今年の梅雨入りはどうも遅れているせいか、
晴天とはいかないものの、どんより雲がかかっているだけで、
かさの心配はしなくてよさそうだ。
週末の小旅行にはちょうど良かった。
普段は普通のOLをしている唯だったが、
学生時代の友人ら女三人で、一泊二日で国内観光旅行を楽しんでいた。
外国人観光客もかなり多かった。
さすが、ここは首都圏だけど、かなりご利益があるという神社とか、
昔ながらのお土産やさんが立ち並ぶ観光名所だけあるなあ、と
唯は感心した。
「わぁ、人力車じゃない?」
唯と一緒に遊びに来ていた悦子が喜んでいる。
「ホントだ!乗ってみましょうよ!」
悦子のとなりでソフトクリームをほおばりながら、
佳子もはしゃいで答えた。
「でも、どうせ乗るならイケメンさんの人力車で」
「オッケー」
まあ、説明しなくてもわかると思うが、
三人とも(彼氏いない)独身だった。
「でもさぁ、人力車は二人乗りだよね?」
一番乗りたがっている佳子が唯の顔をチラリと見て言った。
「私は乗らなくてもいいよ。
少し一人でこの辺をブラブラしながら待ってるからさ」
唯がそう言うと、
「そーお?じゃあ、後程ねっ」
悦子と佳子は人力車目掛けて行ってしまった。
さてと・・・
唯は辺りを見回した。
どっか、おもしろそうな所はないかなー・・・。
お腹もいっぱいだしな。
ふと見ると、ビルの一角に、小さな看板を見つけてしまった。
【木埜下鑑定所 除霊いたします】
(ん・・・おもしろそうだけど、どうしようかなっ?)
唯としては、別に悩み事はなかった。
むしろ、何もなくムダに人生が流れているのが悩みというか・・・。
かといって、こういうところに入るには勇気がいる・・・、
という感覚も、唯にはなかった。
(どのくらいの腕の持ち主か、こっちが鑑定してやる!!!)
コンコン。
普通にドアをノックした。
「はい、どうぞ。お入りください」
唯が入って相手を見たら、予想違いの男の人!だった。
服も全く一般人の恰好で、部屋の周りには、開運グッズが少し並べてあるだけだった。
「本日は、どのようなご相談ですか?」
その男の人は、さっさと質問し始めた。
「あっ・・・えっと、あ、何か悪いもの憑いてませんか?」
「はい、わかりました」
じーっと唯の方をガン見したかと思うと、口を開いた。
「悪いものではありませんが、腰のあたりに猫が憑いてますよ」
「えっ?猫?」
(ふつう、こういう時って、自分に恨みを持ってる人間とかだよね・・・)
が、その男性はそのまま真面目に話しを進めていった。
「黒と白の三毛猫ですね。心当たりないですか?」
男性が真剣に尋ねてきたので、唯は一応記憶をたどってみた。
唯は思い出した。
「あっ!、そういえば・・・先日外を歩いていた時、
じーっとデブ猫に見つめられました!!」
すると、間髪入れずに男性が言った。
「現在生きている猫ではありませんよ。
すでに死んじゃってる猫でですよ」
(あっ、そういうことなんね)
「それなら、昔、私がちっちゃかった頃に、祖父母の家に猫いました。
マリっていうんです」
「そうですか。マリちゃんと仲良かったんですね」
唯は、もうマリのことなんか忘れていたぐらい昔の話しだった。
ぴっくりしたが、とにかく、大事なことをすぐ聞いてみた。
「どうしてマリが、私のところに?」
そして男性が言うには・・・
「今あなたに伝えたいことがあってきた。
運気の変わり目なので、見守るために来たそうです」
そう答えた。
(なんか、想像をはるかに超える不思議な鑑定してたなあ、あの人)
唯はもう気にしないことにした。
(あれっ?でも、結局、除霊してくれなかったじゃん!)
もう、佳子たちとの待ち合わせの時間がきていた。
唯は、悦子と佳子と合流した。
「唯!お待たせ~、ところで何してたの?」
早速佳子が聞いてきた。
「それがね、・・・」
「じゃあ、もうお宿にいきます?」
悦子も佳子も聞いてくれなかった。
ー運命のドライブー
心地よい秋晴れの日だった。
買ったばかりの新車を走らせるには絶好の日和だ。
(今日は、ちょっと新天地へ行ってみよっかな)
唯は車で出発した。
いつもの通り、一人ドライブ。
すると、なぜか右側の景色に見とれてしまっていた。
「あっ、あんなところにお寺があるんだあ。なんてお寺かしら」
唯はお寺の入口にある看板をジーッと見てしまった。
そしてそのまま、スピードを落として進んでいくと・・・
「あーっ!」
急いでブレーキを踏んだが間に合わなかった。
コンッ!
前で信号待ちをしていた車に当たってしまった。
「あー、やっちゃったぁ~」
前の車を運転していたお兄さんも気づいたらしく、
すぐ左脇の墓地の空き地に入って車を止めた。
唯も同じく後ろをついていった。
「なんだよ!」
いきなりお兄さんが怒っていた。
「ごめんなさい・・・」
唯はどうなっちゃうんだろうと不安でたまらなくなったが、
幸い、ぶつけたところは、なんのキズもなかった。
さらに、お兄さんとお互いの連絡先を交換したら、
同じ苗字だったこともあったからか、
少し穏やかになってくれた。
(よく、キズなしで済んだなあ、不思議だったけど、
よかったぁ)
でも、そういえば・・・
唯は運転していて、いつもより違和感があった。
(なんかこう、人を乗せてるみたいに重さを感じたっていうか・・・
運転しずらかったんだよなあ・・・、まっ、いっか)
ー唯の二年後ー
自宅のリビングでお茶してる、唯。
でも、もう一人ではなかった。
傍らにいる男性と一緒だった。
そう、唯は結婚していた。
結婚しても苗字は変わらなかったけどね。
なんでかって? 決まってるやん。
あの、交通事故したときの相手が、唯の結婚相手だったから・・・。
「あっ、そういえば・・・
あなたと出逢う前に、不思議な夢を見たわ。
知らない男性と会って、ラブラブになる夢よ。
そして、翌日にもまた夢を見たんだけれど、
自宅にたくさん人が集まって宴会してる夢。
夢の中でわかったの。
ああ、この人たちは、私の御先祖様たちだって」
「それ、予知夢だろ?
出逢う前に、まずお互いの守護霊が下見するっていうからな。
ところで、夢の中のオレはイケてたか?」
「忘れたわ」
ふと、庭に一匹の猫が入ってきた。
(あら、かわいい猫ね。
でも、マリじゃなかったわ。
当たり前よね・・・)
その夜、唯は就寝前にダメ元でマリを想って話しかけて寝た。
「マリ、あたし、なんと車ぶつけちゃった人と結婚したんよっ。
奇跡ちゃう?」
すると、唯の夢の中にマリが出てきてくれた。
「そりゃあ、良かったなあ。
あの日なぁ、あたいのダチがさぁ、
お墓に住んでる友達んとこ行きたいんだけど、
足がない!っていうからさ、
そんだったら、唯の車、タクシー代わりに使えって、
紹介したんよー。
なーんか、唯に悪いことしたなあ、って言ってたけどな」
・・・
(やーっぱり、マリの仕業やったんね。
運命の人に逢わせてくれたのは感謝するけどさあ、
なにも、交通事故で逢わせなくてもいいんじゃなくて?
もっとロマンチックなとこあるじゃん。
まっ、いっかー!)
【あなたにもいるかしら?
あなたが昔、可愛がっていたペットちゃんは、
きっと今頃は天使になって、
あなたをずっと見守ってくれてるわ。
もし、あなたに天使が現れたなら、
人生のターニングポイントをお知らせにきたのかもしれないわよっ。
ー唯よりー 】
ーおしまいー
最後までお読みいただき、ありがとうございました。