ホームページ制作やデザイン、システム開発などの案件では、作業スキルと同じくらい大切なものがあります。
それが、最初の認識合わせです。
案件が途中でうまくいかなくなる原因は、技術不足だけではありません。
むしろ、
思っていたものと違う
そこまで対応してもらえると思っていた
この内容も料金に含まれていると思っていた
もっと早く完成すると思っていた
といった、認識のズレが原因になることのほうが多いです。
逆に言えば、最初にしっかり認識を合わせておけば、案件の大半はスムーズに進みます。
「なんとなく分かったつもり」が一番危険
打ち合わせをしていると、お互いに分かったような雰囲気になることがあります。
依頼者が、
「シンプルな感じでお願いします」
「いい感じに作ってください」
「今のサイトより見やすくしたいです」
と話し、制作者側も、
「承知しました」
と返す。
一見、話がまとまっているように見えます。
しかし、ここで言う「シンプル」や「見やすい」の基準は、人によって大きく違います。
依頼者が考えるシンプルは、情報を少なくしたデザインかもしれません。
一方で、制作者が考えるシンプルは、色数を抑えたデザインかもしれません。
この状態で作業を始めると、完成後に、
「思っていたものと違います」
となります。
これは、どちらか一方が悪いわけではありません。
曖昧な言葉を曖昧なまま進めたことが原因です。
目的を合わせずに、デザインから考えない
ホームページ制作で特に多いのが、最初から色やレイアウトの話ばかりをしてしまうことです。
もちろん、デザインの好みを確認することも必要です。
ただし、それより先に確認すべきなのは、そのサイトを作る目的です。
たとえば、
問い合わせを増やしたい
採用応募を増やしたい
会社の信頼性を高めたい
商品を購入してもらいたい
既存のお客様に情報を届けたい
など、目的によって必要な構成は変わります。
問い合わせを増やしたいのに、会社の歴史ばかりを長く掲載しても、成果にはつながりにくいです。
採用を増やしたいのに、求職者が知りたい仕事内容や職場の雰囲気が載っていなければ、応募は増えません。
デザインは目的を達成するための手段です。
最初に目的が決まっていないと、判断基準がなくなり、単なる好みの話になってしまいます。
対応範囲は、細かすぎるくらい確認する
案件を進めるうえでは、何をするのかだけでなく、何をしないのかも明確にする必要があります。
たとえば、ホームページ制作と一言で言っても、作業範囲はさまざまです。
デザインのみ
コーディングのみ
WordPressへの組み込み
原稿作成
写真選定
サーバー設定
ドメイン取得
公開作業
公開後の修正
保守管理
依頼者は、ホームページ制作を依頼すれば、これらがすべて含まれていると思っているかもしれません。
一方で、制作者はデザインとコーディングだけのつもりかもしれません。
このズレは、後から大きなトラブルになります。
「普通はここまでやってくれると思っていました」
「そこは見積もりに入っていません」
というやり取りを防ぐためにも、対応範囲は事前に言葉にしておくべきです。
相手が理解しているだろうと考えず、具体的に伝える必要があります。
修正回数と修正の定義を決めておく
修正についても、認識のズレが起きやすい部分です。
たとえば、「修正は2回まで」と決めたとしても、何を1回と数えるのかが曖昧な場合があります。
依頼者は、細かい修正を何度送っても、まとめて1回だと考えるかもしれません。
制作者は、メッセージが届くたびに1回と考えるかもしれません。
また、修正と作り直しは別物です。
文章の変更や色の調整は修正ですが、完成後に全体の方向性を変更する場合は、実質的に作り直しになります。
ここを曖昧にしたまま進めると、制作者側の負担だけが増えていきます。
最初に、
修正回数
修正内容の送り方
大幅な方向転換は追加料金になること
制作開始後の構成変更の扱い
などを伝えておくことが大切です。
スケジュールは「制作期間」だけでは決まらない
納期についても、制作者の作業日数だけで考えてはいけません。
実際の案件では、依頼者からの原稿提出や確認、修正の返信に時間がかかります。
たとえば、制作自体は2週間で終わるとしても、依頼者からの素材提出に1週間、確認に1週間かかれば、公開までは1か月近く必要です。
それでも依頼者が「2週間で完成する」と思っていれば、遅れているように感じます。
そのため、
いつまでに素材が必要か
確認には何日程度必要か
返信が遅れた場合、納期も後ろ倒しになること
公開希望日がある場合、いつまでに開始する必要があるか
を事前に共有する必要があります。
スケジュールは、制作者だけで守るものではありません。
依頼者と一緒に管理するものです。
口頭だけで終わらせない
打ち合わせで話した内容は、必ず文章に残したほうが安全です。
人の記憶は曖昧です。
時間が経つと、同じ会話でもお互いの記憶が変わってしまいます。
そのため、打ち合わせ後には、
制作目的
ページ構成
必要な機能
対応範囲
料金
納期
修正回数
素材の提出期限
今後の進め方
をまとめて共有します。
長い議事録である必要はありません。
重要なのは、後から見返せる状態にすることです。
文章にすることで、依頼者も、
「自分が考えていた内容と違う部分はないか」
を確認できます。
認識のズレは、制作が始まる前に見つけるほうが圧倒的に修正しやすいです。
制作者側が質問する責任もある
依頼者が要望をうまく言語化できないことは珍しくありません。
そもそも依頼者は、ホームページ制作やシステム開発の専門家ではない場合が多いです。
何を伝えればよいのか分からないのは当然です。
そこで制作者側が、
「要望が曖昧だから進められない」
と考えるだけでは、プロとして不十分です。
必要な情報を引き出すために、具体的に質問する必要があります。
たとえば、
「かっこいいデザインがいいです」
と言われた場合は、
「高級感のある雰囲気でしょうか。それとも勢いのある雰囲気でしょうか」
「参考に近いサイトはありますか」
「避けたい色やデザインはありますか」
と掘り下げます。
「問い合わせを増やしたい」
と言われた場合も、
「どのサービスの問い合わせを増やしたいですか」
「現在は月に何件くらいありますか」
「問い合わせ後は、電話とLINEのどちらで対応しますか」
と具体化していきます。
良い成果物を作るためには、良い質問が必要です。
最初の認識合わせは、遠回りではない
打ち合わせや確認に時間をかけると、作業が進んでいないように感じることがあります。
すぐにデザインを作ったほうが早いと思うこともあります。
しかし、認識が合っていない状態で作業を始めるほうが、結果的には遠回りです。
一度作ったものを大きく直す時間。
修正内容を何度も確認する時間。
追加料金について説明する時間。
相手との関係が悪くなり、気を遣いながらやり取りする時間。
これらを考えると、最初の確認に使う時間は決して無駄ではありません。
むしろ、後から発生する損失を防ぐための投資です。
まとめ
案件を成功させるために必要なのは、高い技術力だけではありません。
最初の段階で、
何のために作るのか
何を作るのか
どこまで対応するのか
いつまでに進めるのか
どのように修正するのか
を明確にすることが重要です。
案件がうまくいかなくなってから調整するのでは遅いです。
最初の認識合わせが曖昧だと、その小さなズレが、制作が進むほど大きくなっていきます。
反対に、最初に丁寧に認識を合わせておけば、制作中の判断も早くなり、修正も減り、依頼者との信頼関係も作りやすくなります。
案件を進めるうえで、最初の認識合わせが9割。
少し大げさに聞こえるかもしれませんが、実際に案件を経験するほど、この重要性を実感します。