最近、ある報道を見て、強く考えさせられました。
安部元監督の家庭内での出来事に関連して、子どもがChatGPTに相談し、そこから児童相談所への相談につながり、結果として逮捕に至った、という流れです。
もちろん、個別の事件について、外からすべての事情を知ることはできません。
家庭内で起きたことを軽く扱うつもりもありませんし、暴力や虐待の可能性がある場合に、外部の相談機関が必要になることも当然あります。
ただ、それとは別に、私はこの出来事に、今の社会の大きな変化を見た気がしました。
それは、人間関係が一律のルールや制度に、すぐ接続されてしまう社会です。
人間同士の関係には、本来、非常に多くの事情があります。
その場の空気。
過去の関係性。
怒りの一時性。
言葉にならない感情。
本当は何を望んでいるのか。
関係を壊したいのか、それとも分かってほしいだけなのか。
こうしたものは、簡単には言語化できません。
しかし、AIに相談するとき、多くの場合、入力される言葉はとても短くなります。
「親に突き飛ばされた。許せない。どうすればいい?」
もしこのような聞き方をすれば、AIは当然、安全側の一般的な回答をします。
「信頼できる大人に相談しましょう」
「児童相談所などの窓口に相談してください」
という方向になるでしょう。
それ自体は、間違いではありません。
むしろ、AIとしては安全を優先する以上、当然の回答です。
けれども、ここに大きな問題があります。
AIの回答が間違っているのではなく、AIに入れる前の問いが浅いまま、現実が動いてしまうことです。
本来なら、考えるべきことはたくさんあります。
いつ起きたのか。
どのような状況だったのか。
怪我はあるのか。
日常的に暴力があるのか。
その前に何があったのか。
本人は何を望んでいるのか。
今すぐ危険なのか。
関係を修復したいのか。
それとも、距離を取る必要があるのか。
こうした「事情」を聞き切らないまま、AIの一般的な回答だけが制度に接続される。
私はそこに、今の社会のロボット化を感じました。
すべてがルール通りに処理される。
一律に適用される。
情状酌量の余地が狭くなる。
家庭や職場や人間関係の中にあった、本来の「間」が失われていく。
私は、この流れに強い違和感があります。
今、世の中ではよく「子どもの教育にもAI教育を取り入れるべきだ」と言われます。
しかし、ただAIの使い方を教えたところで、本質的には何も変わらないのではないかと思っています。
なぜなら、教える側がそもそも「事情」と「間」を理解していなければ、AI教育もまた薄っぺらいものになるからです。
AIは便利です。
嘘をつくことがあります。
個人情報には気をつけましょう。
宿題を丸写ししてはいけません。
正しく使いましょう。
たしかに、それらは正しいでしょう。
しかし、それだけでは足りません。
AI時代に本当に必要なのは、
AIに何を聞くかの前に、自分が状況をどれだけ立体的に見られているかです。
感情と行動を分けること。
一時の怒りと本当の望みを分けること。
制度に相談すべき場面と、まず事情を整理すべき場面を分けること。
相手を罰したいのか、分かってほしいのかを見つめること。
こうした力がないままAIを使えば、AIは人間を深くするどころか、人間関係をより単純にしてしまうかもしれません。
私は、そこに対して逆のことをしたいと考えています。
AIによって失われつつある「事情」と「間」を、AIを使って取り戻す。
これが、今私が強く考えていることです。
私はこれまで、AI、業務自動化、文章作成、情報整理、法律、財務、そして人間の判断について考えてきました。
行き当たりばったりのようでいて、さまざまな経験を積んできたからこそ、単なる効率化ではないAIの使い方ができるのではないかと思っています。
AIを使って、すぐに答えを出すのではなく、
AIを使って、問いを深くする。
AIを使って、判断を急がせるのではなく、
AIを使って、ひと呼吸置く。
AIを使って、人間関係を制度に直送するのではなく、
AIを使って、事情を整理する。
もちろん、本当に危険な状況であれば、すぐに外部の相談機関につなぐ必要があります。
そこを否定するつもりはまったくありません。
ただし、危険でないものまで一律に制度処理してしまう社会にはしたくない。
感情のままに関係を壊す前に、もう一度、状況を見つめる仕組みが必要だと思っています。
たとえば、今後は次のようなコンテンツやサービスを作っていきたいと考えています。
結論を急がないためのAI相談フォーム
親子・夫婦・職場の問題を整理する問診ツール
感情と行動を分けるための文章化サポート
通報・相談・退職・絶縁など、大きな行動の前に状況を整理するサービス
AI時代の「事情」と「間」を考える読み物や教材
これは、単なるAI活用サービスではありません。
私が目指しているのは、
AIに人間を合わせることではなく、人間らしい判断を取り戻すためにAIを使うことです。
便利さだけを追うAI活用ではなく、
人間関係の余白を守るAI活用。
正解を急ぐのではなく、
事情を聞き切るためのAI活用。
私は、そうした方向のサービスやコンテンツを、これから作っていきたいと思っています。
AIによって社会がロボット化していくなら、
私は逆に、AIを使って人間らしさを取り戻す側に立ちたい。
それが、私にできる社会貢献なのではないかと考えています。