「脱炭素化のためのグリーン·ジョブへの移行」福井県立大学地域創生学部後期2024年

記事
学び

(1)問題




問題  次の文章を読んで、後の問1·問2に答えよ。



①  みなさんは「グリーン·ジョブ」という言葉を聞いたことはありますか。グリーン·ジョブは国際労働機関(ILO)によって提唱されたもので、環境に対する影響を持続可能な水準まで減じる、経済的に存立可能な雇用と定義されます。具体的には1生態系と種の多様性の推進と回復, 2消費するエネルギー·材料·資源の削減, 3脱炭素経済の推進,4廃棄物と公害の発生回避または発生極小化を支援するような雇用が含まれます。



②  ここでは、単純に脱炭素社会を推進する雇用のことを,グリーン·ジョブ、そして、脱炭素社会を推進するセクターをグリーン·セクターと呼ぶことにします。なお,非グリーンなジョブやセクターは、ブラウン·ジョブ,ブラウン·セクターと呼ばれています。



③  (A)脱炭素化は経済構造を大きく変え、雇用をブラウン·ジョブからグリーン·ジョブへと移行させると考えられます。雇用は生産の派生需要であり、労働市場を取り巻く経済·社会環境が変化すれば、それに伴い雇用のあり方は変化します。脱炭素化は需要と供給の両面から経済の構造を大きく変えるため、結果として労働にも大きな影響を及ぼすのです。



④  脱炭素化が経済の生産面に大きな影響を与えることは明らかです。これは自動車産業を考えるとわかりやすいかと思います。世界が脱炭素社会実現に向けて動く中で、自動車産業もこれまでのガソリン車から二酸化炭素を排出しない電気自動車にその生産をシフトさせています。



⑤  電気自動車はガソリン車と比較して部品点数が少なく、また、使用される部品も異なります。ガソリン車から電気自動車へのシフトは、ガソリン車搭載の部品を製造している自動車部品メーカーに大きな打撃を与えると同時に、電気自動車の要となる電池やモーターなどの関連企業を新たに誕生させますが、こうした産業構造の大きな変化に伴い、既存の雇用が失われる一方で、新たな雇用が生み出されることになります。



⑥  脱炭素化は需要サイドにも影響を与えます。人々が環境に配慮するようになれば、それに対応した商品への需要が高まります。また、政府が脱炭素化を推進する政策をとれば、それにより地球環境に配慮している商品·サービスの価格は、そうでない商品·サービスの価格に比べて低下する可能性があります。



⑦  グリーンな商品·サービスの相対価格が下がれば,人々はそれらを購入するようになり、結果、ますますグリーンな商品·サービスへの需要が高まります。こうした消費者の需要パターンの変化は、ブラウン·セクターからグリーン·セクターへの生産のシフトを引き起こします。



⑧  では、脱炭素化によりどの程度,雇用に変化があるのでしょうか。今後、雇用を創出するグリーン·セクターとして期待されているもののひとつに、再生可能エネルギー分野があります。例えば、太陽光発電パネルや風力発電の設備を設置する仕事やそれらを管理·維持する仕事などで新規の雇用が生み出されると考えられています。



⑨  国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、再生可能エネルギー関連の2019年の就業者数は世界全体で約1150万人となっており,2012年と比べ5割以上増えています。再生可能エネルギー関連の雇用は今後も増加することが予想されており,IRENA によると、その数は2050年には4200万人に達します。



⑩  このように(B)グリーン·セクターでは今後、新規の雇用が創出されることが期待されている一方で、ブラウン·セクターでは雇用の消失が見込まれます。ただし、炭素を多く排出している産業における雇用者数は、その生産量と比べて、比較的少ないという特徴があります。



⑪  経済協力開発機構(OECD)によると、欧州25ヵ国では,最も炭素集約度の高い10の産業だけですべての二酸化炭素排出量の約90%を占めていますが、その雇用量は全体の14%にすぎません。これは、 ブラウン·セクターの経済活動を減少することによる雇用の減少は、経済全体でみるとそれほど大きくはない可能性があるということを意味しています。



⑫  もっとも,炭素集約型産業から脱炭素集約型産業への移行では、炭素集約型産業の雇用だけが影響を受けるわけではありません。



⑬  脱炭素化が経済全体の雇用量にどのような影響を与えるかについては、まだ十分な研究蓄積がないというのが現状です。ただし, OECD などの調査研究は、脱炭素化は雇用にプラスの効果を与える可能性があるものの,決して大きくはないと指摘しています。



⑭  ですが、ここで重要なのは、脱炭素化が経済全体で雇用量を大きく増加させないといっても、その背後には多くの雇用創出と雇用消失があるということです。



⑮  その際に重要になるのが、雇用が失われるブラウン·セクターから雇用が創出されるグリーン·セクターに労働力がスムーズに移動できるかどうかです。そこで、鍵となるのが、異なる産業間での労働力の移動のしやすさと労働者のスキルです。異なる産業間での労働力の移動がしやすければ、衰退産業から成長産業への労働の再分配が円滑に行われ、経済成長にもつながります。ただし,それだけでは十分ではありません。労働者も衰退産業から成長産業に移ることができるように、そのスキルを磨いておく必要があります。

(宮本弘曉『101のデータで読む日本の未来』による)



(注) セクター…分野·領域



問1  筆者は傍線部Aのように述べているが、グリーン·ジョブへの移行とは、どのようなことか。本文中の自動車産業を例として、二百字程度でまとめよ。



問2  筆者は将来の雇用について傍線部Bのように予想しているが、そのような社会に移行するために求められるものは何か。社会レベルの対策と個人レベルの対策に分けて、あなたの考えを六百字程度で述べよ。

脱炭素.png

(2)解答例






問1  

電気自動車はガソリン車と比較して部品点数が少なく使用される部品も異なるため、ガソリン車から電気自動車へのシフトは、ガソリン車搭載の部品を製造している自動車部品メーカーに大きな打撃を与える。しかし同時に電気自動車の要となる電池やモーターなどの関連企業を新たに誕生させ、産業構造の大きな変化に伴い、既存のブラウンセクターの雇用が失われる一方で、グリーンセクターへと新たな雇用が生み出されること。

(195字)



問2



 ブラウン·セクターからグリーン·セクターへの移行に伴いスムーズな労働移動を実現するには、新しい技術や知識を労働者が習得することが必須となる。個人レベルの対策として、日ごろから労働者がスキルアップをして転勤、転職に備えることが求められる。研修や講習会に積極的に参加して最先端の技術に触れる機会を持つ。ただ個人で行うには時間や費用等の面で限界がある。そこで、社会レベルの対策として企業や行政が労働者のスキルアップを支援することが責務となる。EVなどの自動車産業のみならず、これからの産業界はデジタル技術の普及により、データ分析やプログラミング、AI活用などのスキルを学ぶための研修を提供し、労働者のキャリアアップを支援することで、労働者本人だけでなく企業全体の成長につなげることもできる。

 このような新技術に対応できない労働者も一定数存在する。こうした人たちはグリーンセクターへの移動ができず失業に見舞われる。このような危機に対する個人的な対策としては、グリーンセクターの先端技術のみにとらわれず、広い視野に立ってさまざまな資格を取得してリストラや失業に備える。社会的支援としては、こうした移行に乗り遅れた多数の失業者が将来生みだされることを念頭に置いて、ベーシックインカムの導入を検討することも必要になってくる。

 国は現在進行中の働き方改革を進めるとともに、セーフティーネットを広げることで、脱炭素社会に向けた産業界の再編が深化して雇用が不安定に陥っても国民が安心して暮らせる社会を構築することが求められる。(658字)




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