新メニューの価格を、お客様の声とお店の採算で決める。小さなお店のPSM分析ワーク

新メニューの価格を、お客様の声とお店の採算で決める。小さなお店のPSM分析ワーク

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ビジネス・マーケティング

新メニューの価格、なんとなく決めていませんか?

新しいメニューを考えるのは、わくわくする時間です。内容も、流れも、使う商品も決まった。あとは価格を決めるだけ。

ところが、ここで手が止まってしまうことがよくあります。

高く設定すると、お客様が離れてしまいそう
安く設定すると、忙しいだけで利益が残らない
近くのお店と同じくらいの価格でいいのか、わからない
本当は値上げしたいけれど、お客様の反応が不安
自分の技術やサービスの価値を、価格にうまく反映できていない気がする

結局、「近くのお店がこのくらいだから」「なんとなく、きりのいい数字で」と決めて、あとから「もう少し高くてもよかったかな」「この価格だと、ちょっと苦しいな」とモヤモヤする。個人サロンやパーソナルジムのような小さなお店では、とてもよくあることです。

価格を決めるときには、本来、次の3つを考える必要があります。

お店の採算:この価格で、お店が続けられるか
競合の相場:まわりのお店や、似たサービスはいくらか
お客様の価格感覚:お客様が、いくらなら払っていいと感じるか

1つ目は電卓で、2つ目は少しの調べもので見当がつきます。
いちばん難しいのは3つ目です。お客様の頭の中は、こちらからは見えないからです。

この3つ目を、お客様に直接聞いて確かめる方法が、PSM分析です。

この記事では、PSM分析を、自分のお店のメニューを1つ選んで、お客様に聞き、数えて、お店の採算と照らし合わせて価格を考えるための実践編としてまとめました。

PSM分析とは

PSM分析(Price Sensitivity Meter/価格感度測定)は、お客様が価格をどう感じるかを調べる方法です。
1976年に、オランダの経済学者ピーター・ヴァン・ウェステンドルプが発表した手法とされています。

お客様には、1つのメニューについて、次の4つを金額で答えてもらいます。

・いくらだと「安すぎて、品質が心配」と感じますか?
・いくらだと「安い、お得だ」と感じますか?
・いくらだと「高い」と感じますか?
・いくらだと「高すぎて、頼まない」と感じますか?

なぜ「安すぎる」も聞くのか

お客様は、安ければ安いほど喜ぶわけではありません。たとえばヘッドスパが500円だったら、「ちゃんとやってくれるのかな」と不安になる方もいるはずです。技術や安心感が大切な仕事ほど、この傾向は強くなります。

「安すぎる」を聞くのは、下げすぎると、かえって信頼を損ねてしまうラインを知るためです。値下げや初回割引を考えるときにも、このラインがあると判断しやすくなります。

答えは「1つの金額」ではなく「範囲」

PSM分析で見えてくるのは、「この価格が正解」という1つの金額ではありません。お客様に受け入れられやすい価格の範囲です。その範囲のどこに価格を置くかは、最後はお店が決めます。PSM分析は、そのための判断材料をくれる道具です。

回答の数え方や、範囲を読み取る4つのポイント、注意点は、こちらの動画で詳しく解説しています。まだ読んでいない方は、先に読んでいただくと、この先がぐっとわかりやすくなります。

【初心者向け】PSM分析とは?価格設定に役立つ4つの質問と分析方法をわかりやすく解説


<実践イメージ>美容室のヘッドスパの価格を考える

ここでは、元記事に登場した美容室の「ヘッドスパ30分」を使って、調査の結果とお店の採算を照らし合わせるところまで、流れを見てみます。

※ここで使う数字は、考え方を伝えるために元記事で用意した架空の説明用データです。実在のお店の調査結果や、実際の市場調査の結果ではありません。

お店の状況
ある美容室が、新しいメニューとして「ヘッドスパ30分」を始めようとしています。

まず、お店の側で計算できることから考えます。時給や材料費から計算すると、このメニューは「最低でも3,200円は欲しい」という金額になりました。

次に、お客様の価格感覚を確かめるために、30人のお客様に4つの質問をしました。

価格ごとに人数を数える
答えを集めたら、500円刻みの価格ごとに、それぞれの感覚を持つ人が何人いるかを数えます。
価格調査アンケート結果表.png

安すぎる
1つ目の答えが、その価格以上だった人

安い
2つ目の答えが、その価格以上だった人

高い
3つ目の答えが、その価格以下だった人

高すぎる
4つ目の答えが、その価格以下だった人

難しく見えますが、やっていることは「この価格を見せたら、何人がどう感じるか」を数えているだけです。

受け入れられやすい範囲を読み取る

表を上から見ていくと、2つの人数の多い・少ないが入れかわる場所があります。

下限の目安:約2,700円
「安すぎる」と「高い」が逆転するところ。2,500円では安すぎる5人が高い2人より多く、3,000円では安すぎる2人が高い7人より少なくなっています。これより下げると、品質を心配する人が目立ち始めます。

上限の目安:約3,400円
「安い」と「高すぎる」が逆転するところ。3,000円では安い11人が高すぎる2人より多く、3,500円では高すぎる6人が安い4人を上回っています。これより上げると、「頼まない」人が増えていきます。

この2つから、受け入れられやすい範囲は、およそ2,700〜3,400円と読み取れます。

ただし、この表は500円刻みです。「約2,700円」「約3,400円」は、逆転が起きている2つの価格のあいだから見当をつけた概算値で、ぴったりの金額ではありません。刻み方を変えたり、回答者が1人増えたりするだけで、数百円は動きうるものとして扱います。

お店の採算と照らし合わせる

ここで、お店が計算した「最低でも欲しい金額」を並べてみます。

受け入れられやすい範囲:約2,700〜3,400円
お店が最低でも欲しい金額:3,200円

3,200円は、範囲の中に入っています。つまり、お店が続けられる価格と、お客様が受け入れやすい価格が重なっている状態です。

動画では、この場合、3,200〜3,300円あたりが候補になるとしています。ただ、3,200円は範囲の上限寄りです。
上限の目安(約3,400円)までの余裕はあまりありません。
この価格にするなら、「30分で何をするのか」「どんな方に向いているのか」をメニュー表で丁寧に伝えて、価格の理由が見えるようにしておきたいところです。

もし、お店が「最低でも3,600円は欲しい」と計算していたら、どうでしょう。今度は範囲より上になります。
この場合は、価格だけで解決しようとせず、内容や時間、伝え方を見直す必要が出てきます。同じ調査結果でも、お店の採算によって、次にやることが変わるのです。

この例から言えること・言えないこと
この結果から言えるのは、「30人のお客様の感覚では、2,700〜3,400円あたりが受け入れられやすそうだ」ということまでです。

3,200円にしたら、何人が実際に申し込むか
どの価格にすれば、利益がいちばん大きくなるか

は、この表からはわかりません。「高くない」と答えることと、実際にお金を払って申し込むことは、同じではないからです。だからこそ、価格を決めたあとは、小さく試して、実際の反応を確かめることが大切になります。

こうして、「メニューを1つ選ぶ → 説明を用意する → 聞く相手を決める → 4つの質問をする → 数えて範囲を読む → 採算と照らし合わせて決める → 試して確かめる」という流れを、自分のお店で書き込みながら進められるようにしたのが、今回のワークシート(下記参照)です。

価格設定で大切な3つの視点

PSM分析に取り組む前に、もう一度、価格を考える3つの視点を整理しておきます。

【お店の採算】
材料費、人件費、施術にかかる時間、お店を続けるために必要な利益など。「この価格を下回ると続けられない」という最低ラインは、お客様に聞いてもわかりません。お店が自分で計算するものです。

【競合の価格】
近くのお店や、似たサービスの価格と、その提供内容。同じ「60分」でも、内容や使う商品が違えば、単純には比べられません。価格と一緒に、何が含まれているかも見ておきます。

【お客様の価格感覚】
お客様が、いくらなら「安すぎる」「お得」「高い」「高すぎる」と感じるか。4つの質問から読み取る、受け入れられやすい価格の範囲です。

PSM分析は、この3つ目を補うための方法です。採算や相場の代わりになるものではありません。 3つを並べて見比べることで、「お店が続けられて、お客様にも納得してもらえる価格」を探しやすくなります。

ワークシートのご紹介

動画を見て「なるほど」と思っても、いざ自分のお店で始めようとすると、「どのメニューで聞けばいいんだろう」「お客様にどう切り出せばいいのか」「集めた答えを、どう数えればいいのか」と、手が止まってしまうことがあります。

そこで、価格を決めたいメニューを1つ選ぶところから、お客様への聞き方、回答の記録、人数の数え方、範囲の読み取り、お店に必要な金額との比較、今週やることまで、順番に書き込めるPDFワークシートをつくりました。

【新メニューの適正価格を考える|PSM分析・価格設定ワークシート】

用意するものは、ペンと電卓、そして価格に迷っているメニュー1つです。元記事の「お店の営業の中でできる5つのステップ」に沿って進めます。

【ワークシートの構成(A4縦・全8ページ)】
1ページ:このワークの学習目標、価格を考える3つの方向、PSM分析の4つの質問、なぜ「安すぎる」も聞くのか

2ページ:ワークの使い方(お店でできる5つのステップ)/WORK 1 価格を決めたいメニューを1つ選ぶ

3ページ:WORK 2 メニューの説明を用意して、聞く相手を決める

4ページ:WORK 3 4つの質問をして、答えを書きとめる

5ページ:WORK 4 価格ごとに人数を数えて、範囲を読み取る

6ページ:業種別の記入例(美容室/パーソナルジム/エステサロン)

7ページ:WORK 5 必要な金額と照らして、価格の候補を比べる

8ページ:WORK 6 今週やることを決めて、お客様に聞いてみる

調査するメニューを1つ選ぶ

2ページでは、「これから始める新メニュー」「値上げを考えている人気メニュー」「『安すぎるかも』と気になっているメニュー」の中から、1つだけを選びます。
あわせて、材料費とかかる時間・時給からお店に必要な金額を計算する欄と、近くのお店や似たメニューの価格を3つほど書く欄、いま迷っていることを書く欄があります。
価格を考える3つの方向のうち、2つをここで先に整理しておきます。

メニューの説明を準備する

3ページでは、所要時間・何をするのか・向いている人・写真の有無をまとめたメニューの説明カードをつくります。「何に対しての価格か」がお客様の中でそろっていないと、答えがバラバラになってしまうからです。

調査対象者を決める

同じ3ページで、このメニューをどんなお客様に向けたいかを書き、常連さん・来店歴の浅いお客様など、聞く相手に印をつけます。
何人に聞くか、聞けそうなお客様の呼び名、いつまでに聞くかも、ここで決めておきます。

4つの質問で価格感覚を聞く

4ページには、コピーしてそのまま使えるお客様用アンケートがあります。紙で渡す、LINE公式アカウントやGoogleフォームで送る、施術中の会話で聞いてメモする、のどれで聞くかに印をつけ、10人分の答えを書きとめる表に記録します。
表には、常連・新規などのメモと、矛盾した回答に印をつける「除外」の欄もあります。

回答を整理し、価格の受容範囲を読み取る

5ページでは、4つの感覚それぞれの数え方を確認しながら、価格ごとの人数を表に書き込みます。
そのうえで、人数が逆転する場所から「下限の目安」「上限の目安」「抵抗が最も少ない価格」「相場に近い価格」を読み取り、受け入れられる価格の範囲を書き込みます。

※ワークシートは手で書き込んで数える形式です。グラフを描く機能や、自動で集計する機能はついていません。表計算ソフトを使う場合のCOUNTIF関数の紹介はあります。

自店の採算と比較する

7ページでは、下限の目安・上限の目安・お店に必要な金額・今の価格の4つを並べて、3つのパターンのどれに当てはまるかを確かめます。
そのうえで、価格の候補を3つまで出し、「範囲の中にあるか」「必要な金額以上か」「お店の方針に合うか」の3つの観点で比べて、1つを選びます。決める前に確認したい4つの注意点のチェック欄と、決めた価格と「なぜこの価格なのか」を書く欄もあります。

価格やサービスの改善案を考える

7ページのパターンごとの考え方には、必要な金額が範囲より上だったときに、内容や時間の調整、説明や見せ方、向けるお客様を見直す方向も示しています。
8ページでは、説明カードの仕上げから、聞く方法と相手、集める人数、数えて範囲を読む日、価格を決めて伝える日までの実行計画を書き、やってみた結果に応じた次の進め方を確かめます。

【記入例について】

6ページには、元記事の美容室(ヘッドスパ30分)の集計表と読み取り方、そしてパーソナルジム(食事相談つき60分)、エステサロン(フェイシャル60分)の3つの記入例を載せています。美容室は元記事の架空の例、ジムとエステはこのワークシートのための架空の例で、いずれも実在の店舗やお客様の事例ではありません。3つのパターンそれぞれで、範囲を読んだあとにどう判断したかがわかるようになっています。

【こんな方におすすめです】

・開業準備中〜開業3年目くらいの、個人サロン・パーソナルジムなど小さなお店のオーナーさん
・1〜5人ほどでお店を運営している方
・新メニューの価格設定に悩んでいる方
・値上げを考えているけれど、お客様の反応が不安な方
・安くしすぎて、利益が残らないと感じている方
・競合の価格を調べても、自分のお店に合う価格がわからない方
・お客様の意見を取り入れて、価格を考えたい方

統計の専門知識がなくても取り組めるように、数え方も読み取り方も、できるだけやさしい言葉で書いています。

なお、このワークシートは、お客様の価格感覚を調べて、価格を考えるための材料を整理する道具です。売上や利益が増えることを保証するものではありません。また、ここで読み取れるのは「受け入れられやすい価格の範囲」で、「いちばん売れる価格」や「いちばん利益が出る価格」ではありません。だからこそ、お店の採算と照らし合わせ、小さく試して確かめる流れを大切にしています。

このワークシートで取り組めるのは、

価格に迷っているメニューを1つ選び、お店に必要な金額と相場を書き出す

メニューの説明をそろえて、お客様に4つの質問をする

答えを価格ごとに数えて、受け入れられやすい範囲を読み取る

お店に必要な金額と照らし合わせて、価格の候補を選ぶ

今週やることを決めて、最初の一歩を始める

ことです。価格の解説を読むだけでなく、自分のお店のメニューで、聞いて・数えて・決めるところまで進めるための教材として、手元に置いていただけたらうれしいです。
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