お客様は、どこで離れているのだろう?
「Instagramは、できるだけ更新している」
「Googleマップの情報も、写真も整えた」
「ホームページにも、メニューと料金を載せている」
それなのに、予約がなかなか増えない。
初めて来てくださったお客様が、2回目につながらない。
こんなとき、まず浮かぶのは「もっと発信しなきゃ」「何か新しいことを始めなきゃ」という気持ちではないでしょうか。
もちろん、お店を知ってもらうための発信は大切です。
ただ、予約が増えない理由は、宣伝の量だけではないかもしれません。
お客様は、お店を知ってから予約し、来店し、また来てくださるまでに、いくつもの段階を通っています。そのどこかで、
・料金が分からなくて、予約の手前で止まっている
・初めての来店が不安で、「また今度」と先延ばしにしている
・利用には満足したけれど、次に何をすればいいのか分からないまま、時間がたっている
といったことが起きていても、お店の側からはなかなか見えません。
離れていったお客様は、理由を教えてくれないからです。
だからこそ、新しい施策を増やす前に、お客様の道のりを順番に追いかけて、足が止まっていそうな場所を探してみる。
そのための道具が、カスタマージャーニーマップです。
この記事では、カスタマージャーニーマップを、実際のお客様1人の体験に当てはめて、改善策を1つ決めるための実践編としてまとめました。
カスタマージャーニーマップとは
カスタマージャーニーマップは、お客様がお店を知ってから、利用して、また来てくださるまでの流れを、順番に書き出した表です。
「ジャーニー」は英語で「旅」。
お客様の道のりを、一歩ずつ追いかけます。
小さなお店なら、次の6つの段階でだいたい足ります。
知る → 調べる → 予約・問い合わせ → 来店・利用 → 帰ったあと → また来る
そして、それぞれの段階について、次の3つを書きます。
行動:そのとき、お客様が何をしているか
気持ち:何を考え、どう感じているか
接点:お店のどんな情報や人に触れているか(看板、Googleマップ、予約画面、受付など)
3つのうち、いちばん大事なのは「気持ち」です。
そして、目的はきれいな図を完成させることではありません。
お客様の足が止まっていそうな場所を見つけて、直すことを1つ決めることです。
準備として「実在のお客様を1人選ぶ」「初めてお店を知ったときから、2回目に来てくださるまでを書く」の2つを決めることや、紙1枚・1時間ほどで書ける5つのステップ、美容室の記入例、よくある失敗は、こちらの動画で詳しく解説しています。
ご覧いただくと、この先がぐっと分かりやすくなります。
【初心者向け】カスタマージャーニーマップとは?作り方と顧客体験を改善する方法をわかりやすく解説
<実践イメージ>パーソナルジムのお客様が再来店しない理由を考える
ここでは、お客様1人の6段階を書き出し、気になる段階に丸をつけて、改善策を1つ考えるところまで、ひととおりの流れを見てみます。
※ここで紹介するのは、考え方を伝えるための架空の説明例です。実在のお店やお客様の記録、調査の結果ではありません。各段階の行動や気持ちも、この記事のために作ったものです。
たとえば、トレーナーがひとりで営む、個人経営のパーソナルジムがあるとします。初回の体験トレーニングには申し込みがあるのに、体験のあと、そのまま入会や2回目につながらない方が多いことが、トレーナーさんの気がかりです。
想定するお客様
お客様
運動不足を解消したいと考えて、初回体験に申し込んだ40代の会社員Tさん
書く範囲
ジムを初めて知ったときから、2回目に来るまで
書く前に、根拠を区別するための印を決めておきます。
(記録):予約フォームやメッセージの履歴など、確認できた事実
(聞いた):お客様から直接聞いた言葉
(推測):まだ確かめていない、トレーナーさんの想像
特に「気持ち」は、ほとんどが推測です。
言い切らずに、仮説として書いておくのがポイントです。
6段階を書き出す
1. 知る
行動:SNSやGoogleマップで、ジムの存在を知る。初回のカウンセリングで「Googleマップで近くのジムを探していて見つけた」と話していた(聞いた)
気持ち:「運動しなきゃとは思っている。でも、ジムは続いたことがない」?(推測)
接点:Googleマップの写真と口コミ、Instagram
2. 調べる
行動:料金、立地、トレーナー、初心者への対応などを確認する(推測。どのページを見たかは分からない)
気持ち:「運動経験がなくても大丈夫かな」「結局、全部でいくらかかるんだろう」?(推測)
接点:Instagramのプロフィールと投稿、ホームページの料金表
3. 予約・問い合わせ
行動:予約フォームから初回体験を申し込む。備考欄に「運動経験がほとんどありません」と書いてあった(記録)
気持ち:「何を着ていけばいい?」「何を持っていけばいい?」「その場で入会を勧められたら、断れるかな」?(推測)
接点:予約フォーム、予約確定の自動メール
4. 来店・利用
行動:カウンセリングと体験トレーニングを受ける。終わったあと「思ったより楽しかったです」と話していた(聞いた)
気持ち:「きついけど、できた」「これなら続けられるかもしれない」?(推測)
接点:受付、トレーナーの説明、トレーニングの内容
5. 帰ったあと
行動:体験の最後に、料金表の紙を渡して「よかったら、またご連絡ください」と伝えた。そのあと、お店からは何も連絡していない(記録)
気持ち:「体験は良かった。でも、どのプランを選べばいいんだろう」「次はいつ行けばいいの?」「自分から連絡すると、入会を決めたことになりそうで気が重い」?(推測)
接点:渡した料金表の紙だけ
6. また来る
行動:体験から2週間たっても、次回の予約や問い合わせはない(記録)
気持ち:「続けたい気持ちはあるけど、仕事が落ち着いてからにしよう」?(推測)
接点:なし
気持ちが下がっていそうな段階に、丸をつける
6段階を並べてみると、気になるところは1つではありません。
「予約・問い合わせ」の段階にも、服装や勧誘の不安がありそうです。
それでもこの例では、「帰ったあと」に丸をつけます。
理由は2つです。
体験の手応えは悪くなかった
「思ったより楽しかった」という言葉があり、来店・利用の段階で大きく気持ちが下がっているようには見えない
お店からの接点が、ほとんどない
渡したのは料金表の紙1枚だけ。次に何をすればいいかを伝えるものが、どこにもない
つまり、体験には満足していても、次の一歩が分からないまま、時間だけが過ぎているのかもしれません。
ただし、これはまだ「可能性」です。
本当の理由は、料金だったのかもしれないし、仕事が忙しくなっただけかもしれません。
離れた原因と決めつけずに、確かめる前提の仮説として置いておきます。
体験に満足したお客様が、次に何をすればいいか分からず、自分から連絡しにくいまま、再来店を先延ばしにしている可能性がある。
お金をかけずにできる、最初の一歩
この仮説に対して、最初の一歩はとても小さなことで十分です。
最初の一歩
体験の当日中に、「次のステップ」を短い文章で送る
たとえば、次のような3行です。
本日はありがとうございました。今日のメニューのうち、ご自宅でもできる〇〇を1つだけ続けてみてください。 もし続ける場合は、まず月2回のプランから始める方が多いです。ご予約はこちらのフォームから取れます。 お返事は急がなくて大丈夫です。こちらから入会をおすすめする連絡はしませんので、ご安心ください。
体験の最後に、同じ内容を口頭で伝えるだけでもかまいません。どちらも、費用はかかりません。
そのうえで、次に体験に来た方に、帰りぎわか2回目の来店のときに「体験のあと、分かりにくかったことはありましたか?」と一言聞いてみます。
仮説が当たっているかどうかは、変えてみて、聞いてみて、初めて分かります。
こうして、「お客様を1人選ぶ → 6段階の行動・気持ち・接点を書く → 気持ちが下がっていそうな場所に丸をつける → 直すことを1つ決める → 試して、確かめる」という流れを、自分のお店で書き込みながら進められるようにしたのが、今回のワークシートです。
ワークシートのご紹介
動画を見て「なるほど」と思っても、いざ自分のお店で書こうとすると、「誰のことを書けばいいんだろう」「気持ちの欄に何を書けばいいのか分からない」と、手が止まってしまうことがあります。
そこで、対象のお客様を1人選ぶところから、6段階の書き出し、お客様への聞き取り、丸をつける場所の選び方、改善策の比べ方、実行計画まで、順番に書き込めるPDFワークシートをつくりました。
【小さなお店の集客・リピート改善ワーク|カスタマージャーニーマップ】
目安の時間は1時間ほど。用意するものは、ペンだけです。
元記事の「紙1枚・1時間ほど」の手軽さはそのままに、どこに何を書けばいいかが分かるように整えています。
【ワークシートの構成(A4縦・全8ページ)】
1ページ:このワークの学習目標、カスタマージャーニーマップとは(6段階と、行動・気持ち・接点)、小さなお店ほど向いている3つの理由
2ページ:ワークの使い方(準備と5つのステップ)、よくある失敗3つ/WORK 1 こんなモヤモヤはありませんか
3ページ:WORK 2 誰の、どこからどこまでを書くか決める(STEP 1 段階を並べる)
4ページ:WORK 3 行動・気持ち・接点を書く(STEP 2〜4)
5ページ:WORK 4 お客様に聞いて、思い込みを減らす
6ページ:業種別の記入例(美容室/パーソナルジム)
7ページ:WORK 5 一番気持ちが下がる場所に丸をつけ、直すことを1つ決める(STEP 5)
8ページ:WORK 6 今週やることを決めて、見直す日を入れる
対象のお客様を1人選ぶ
3ページでは、「うちのお客様全体」ではなく、実在のお客様を1人思い浮かべて、呼び名(イニシャルなど自分だけが分かる名前でOK)、初めて来た時期、いまの来店ペース、どんな人かを書き込みます。
書く範囲は、「初めてお店を知ったとき」から「2回目に来てくれるまで」がおすすめです。
6つの段階の名前は、自分の業種に合わせて書き換える欄があります(例:パーソナルジムなら「予約」を「体験の申し込み」に)。
書き始める前に、「このお客様が一番迷ったのはどの段階か」を予想して印をつけておく欄もあり、書き終えたあとに答え合わせができます。
お客様の行動を、時系列で整理する
4ページは、このワークの中心です。
「知る」から「また来る」までの6段階が上から順に並んでいて、それぞれに行動・気持ち・接点を書き込みます。
お客様になったつもりで、上から順番に書いていくだけで、お客様の体験が時系列でつながります。
各段階の気持ちや不安を考える
気持ちの欄には、「お店がこう思ってほしい」ではなく、お客様が本当に思っていそうなことを書きます。
各段階の右端に「上がる・ふつう・下がる」の印をつける欄があり、どこで気持ちが下がっていそうかが、ひと目で分かるようになっています。
お客様とお店の接点を整理する
接点の欄には、その段階でお客様がお店の何に触れているかを書きます。思いつかない段階には「なし」と書いておきます。それが、お店から何も届けていない「空白」です。
仮説を、お客様の声で確かめる
5ページでは、「知ったきっかけ」「来る前の不安」「決めた理由」の3つを、会話の中で聞いて記録する表(5人分)があります。
口コミを読み返す、予約フォームに質問を1つ入れる、といった手間のかからない方法と、自分の想像とズレていたことを書く欄もあります。
行動が止まる可能性のある段階を見つけ、改善策を1つ決める
7ページでは、気持ちが一番下がりそうな場所に丸をつけます。
「下がる」が多くて迷ったときの選び方と、飲食店・整体院・教室・小売店の「止まりやすそうな場所のヒント」も載せています。
そのうえで、できることの候補を3つまで出し、「気持ちの下がりを和らげるか」「大きな予算がかからないか」「今週から始められるか」の3つの観点で比べて、直すことを1つだけ選びます。
改善後の反応を確かめる
8ページでは、選んだ改善について、「直すこと」「具体的に(文面など)」「どの接点で」「様子の見方」と、始める日・見る日を書き込む実行計画をつくります。
結果が「効果がありそう」なら続ける、「変化がない」ならマップと聞き取りを見直す。
3か月や半年に1回、マップを見直す日を書いておく欄もあります。
記入例について
6ページには、美容室とパーソナルジムの2つの記入例を、6段階すべての行動・気持ち・接点と、丸をつけた場所・直すことまで載せています。
美容室は元記事の記入例、パーソナルジムはこのワークシートのための架空例です。いずれも実在の店舗やお客様の事例ではありません。
こんな方におすすめです
・開業準備中〜開業3年目くらいの、個人サロン・パーソナルジムなど小さなお店のオーナーさん
・1〜5人ほどでお店を運営している方
・SNSを更新しているのに、予約につながらないと感じている方
・初回の来店はあるのに、リピートが少ない方
・お客様がどの段階で離れているのか分からない方
・集客の施策を増やす前に、今の導線を見直したい方
専門的なマーケティングの知識がなくても取り組めるように、問いと記入例はできるだけやさしい言葉で書いています。
なお、このワークシートは、お客様の体験を順番に整理して、改善の手がかりを見つけるための道具です。
予約数や売上、リピート率などの成果を保証するものではありません。
丸をつけた場所が本当に離れる原因になっているかは、変えてみて、お客様に聞いてみて初めて分かります。
だからこそ、「書いて、1つ直して、確かめる」流れを大切にしています。
このワークシートで取り組めるのは、
実在のお客様1人の体験を、「知る」から「また来る」まで書き出す
その中で、お客様の気持ちが下がっていそうな場所と、お店から何も届けていない空白を見つける
お客様に聞いて、思い込みを減らす
直すことを1つ決めて、今週から試す
ことです。新しい施策を増やす前に、まずは今いるお客様の道のりを確かめる。そのための教材として、手元に置いていただけたらうれしいです。