「いいものなのに選ばれない」を紙1枚で見直す。小さなお店の4P・4C分析ワーク

「いいものなのに選ばれない」を紙1枚で見直す。小さなお店の4P・4C分析ワーク

記事
ビジネス・マーケティング

いいものなのに、なぜ選ばれないのか

「技術にもメニューにも、それなりに自信はある」
「SNSも、できる範囲で更新している」
「それなのに、新しいお客様がなかなか増えない」

こんなとき、まず頭に浮かぶのは「もっと発信しなきゃ」「広告を出したほうがいいのかな」ということではないでしょうか。

もちろん、知ってもらうための発信は大切です。ただ、せっかく興味を持ってもらえても、その先で止まってしまっていることがあります。たとえば、こんなところです。

料金が分かりにくい
初回はいくらで、何が含まれているのかが、どこにも書いていない

予約方法が面倒
電話かDMしかなく、空いている日を確かめるのにやりとりが何往復も必要

サービスの価値が伝わっていない
技術や素材の説明はあるけれど、「受けたら何が嬉しいのか」が書いていない

発信している内容と、お客様が知りたい情報が違う
お店は施術の様子を投稿しているけれど、お客様が知りたいのは「初めてでも大丈夫か」「終わったあとどうなるか」

どれも、お店の中からはなかなか気づきにくいものです。
毎日そのサービスに関わっているお店の側には、当たり前すぎて見えなくなっているからです。

だからこそ、宣伝を増やす前に、一度お客様の立場から自分のお店を見直してみる。お店が決めていることと、それがお客様にどう見えているかを並べて書き出し、その「ズレ」を見つける。

そのための道具が、4P・4C分析です。

この記事では、4P・4C分析を、自分のお店の主力メニュー1つに当てはめて、改善策を1つ決めるための実践編としてまとめました。

4P・4C分析とは

4Pと4Cは、同じものを反対側から見たものです。

4P:お店が決めていること(売る側の目線)
4C:それがお客様にどう見え、どう届いているか(買う側の目線)

4つずつの項目は、次のように1組ずつ対応しています。

4Pと4Cの比較表 infographics.png

ここで大切なのは、4Cは4Pの代わりではないということです。

4Pで「お店として何を決めているか」を整理し、4Cで「それがお客様にどう届いているか」を確かめる。左右を見比べたときに、はじめてズレが見えてきます。

それぞれの組み合わせをお店の言葉に言い換えた説明や、小さなお店ほど4Cの視点が効く理由、30分でできる見比べの手順は、こちらの動画で詳しく解説しています。ご覧いただくと、この先がぐっと分かりやすくなります。

【初心者向け】4P・4C分析とは?マーケティングの基本と違い・活用方法をわかりやすく解説


<実践イメージ>個人サロンの主力メニューを見直す

ここでは、主力メニューを1つ選んで、4Pと4Cを見比べ、気になるズレを1つ選ぶところまで、ひととおりの流れを見てみます。

※ここで紹介するのは、考え方を伝えるための架空の説明例です。実在のお店やお客様の記録、検証済みの結果ではありません。元記事の整体院の例とも別の、この記事のために作った例です。

たとえば、店主がひとりで営む、ヘッドスパ専門の個人サロンがあるとします。来てくださったお客様の満足度には手応えがあるのに、新しいお客様がなかなか増えないことが、店主さんの気がかりです。

まず、対象を1つに絞る
お店全体ではなく、いちばん選んでほしいメニューを1つだけ選びます。

見直すメニュー
頭皮クレンジングとヘッドマッサージの60分コース

来てほしい人(一文で)
近くの駅を使う、パソコン仕事で目や頭が疲れやすい、30〜40代の会社員

「来てほしい人」まで一文で書いておくと、このあとの4Cが「誰にとっての価値・負担なのか」を考えやすくなります。

ここからは、左に4P(お店が決めている事実)、右に4C(お客様の目線)を書いて見比べます。4Cには、根拠を区別するために、次の印をつけています。

(聞いた):お客様から実際に聞いた言葉、よく聞かれる質問
(試した):店主が「初めての客」として体験してみたこと
(?):まだ確かめていない推測

Product ⇔ Customer Value:提供しているものと、得たい価値

4P(お店)
頭皮の汚れを落とすクレンジングと、首・肩まわりまでほぐすマッサージを組み合わせた60分。オーガニックのオイルを使っている。

4C(お客様)
常連さんからは「終わると目の奥が軽くなる」「その日はぐっすり眠れる」と言われる(聞いた)。新しいお客様が選ぶときに気にしているのも、オイルの種類より「疲れが取れるか」「眠れるか」のほうかもしれない(?)

お店が「こだわり」として伝えているのは、オイルと技術。お客様が受け取っているのは、「目の疲れが軽くなる」「よく眠れる」という変化。同じ60分を、反対側から見ています。

Price ⇔ Cost:料金だけでなく、時間や不安も

4P(お店)
7,700円。初回も同じ料金。実際には、施術のあとは髪を乾かして軽く整えてからお帰りいただいている。

4C(お客様)
金額について何か言われることは少ない(聞いた)。一方で、問い合わせでいちばん多いのは「施術のあと、髪はどうなりますか?」「そのまま仕事や予定に戻れますか?」という質問(聞いた)。

ここが、このお店の大事な発見です。施術後に髪を乾かして整えているのは、お店にとっては当たり前のこと。でも、それがどこにも書かれていないため、お客様にとっては「終わったあと、ボサボサの髪で帰ることになるかも」という不安が、料金とは別の負担になっているようです。

Place ⇔ Convenience:知ってから予約するまで、迷わずたどり着けるか

4P(お店)
駅から徒歩10分の住宅街にある、マンションの一室。予約はInstagramのDMのみ。平日11時〜19時と土曜日に営業。

4C(お客様)
店主が初めての客のつもりでDMから予約を試してみると、空いている日時を確かめるのにやりとりが3往復ほど必要だった(試した)。施術中は返信できないので、仕事の休憩中に連絡した人は、返事を待つあいだに別のお店を予約してしまうこともあるのでは(?)

Promotion ⇔ Communication:伝えたいことと、知りたいこと

4P(お店)
Instagramで、使っているオイルの紹介や、施術中の様子を週3回投稿している。

4C(お客様)
よく聞かれる「施術後の髪はどうなる?」「どのくらいの間隔で通えばいい?」には、投稿では答えていない(聞いた・試した)。質問できる場所はDMだけで、初めての人には少し聞きにくいかもしれない(?)

いちばん気になるズレを、1つ選ぶ

4組を並べてみると、ズレは1つではありません。DMだけの予約も、投稿の内容も、気になります。ただ、全部を一度に直そうとすると、どれが効いたのか分からなくなってしまいます。

このお店の場合、根拠がいちばんはっきりしているのは「Price ⇔ Cost」です。「施術後の髪はどうなるか」は、実際に何度も聞かれている質問だからです。そこで、いちばん気になるズレを、次の一文にまとめます。

来てほしい会社員にとって、施術後の髪の状態が分からないことが、初めての予約をためらう不安になっている可能性がある。

まだ「可能性」です。言い切らずに、確かめる前提で置いておきます。

お金をかけずにできる、最初の一歩

このズレに対して、最初の一歩はとても小さなことで十分です。

最初の一歩
Instagramのプロフィールと固定投稿に、「施術のあとは髪を乾かして整えてからお帰りいただけます。ドライヤー・鏡・ヘアゴムもご用意しています」と書き足す。

すでにしていることを書くだけなので、費用はかかりません。変える前に、残りの3つと矛盾しないかも見ておきます。「仕事帰りにすっきりして帰れる」という価値とも合っていて、お客様の手間を増やすこともなさそうです。

一方で、DM以外の予約方法を用意することは、常連さんの使い勝手にも関わる、少し大きな変更です。こちらは「あとで考えること」として、常連さんに一言聞いてから決めることにします。

こうして「対象を1つに絞る → 左に4P、右に4Cを書く → ズレに印をつける → お金のかからない改善を1つ決める → 変えて、確かめる」という流れを、自分のお店で書き込みながら進められるようにしたのが、今回のワークシートです。

ワークシートのご紹介

記事を読んで「なるほど」と思っても、いざ自分のお店で書こうとすると、「どのメニューを選べばいいんだろう」「4Cの欄に何を書けばいいのか分からない」と、手が止まってしまうことがあります。

そこで、見直すメニューを1つ選ぶところから、4Pと4Cの書き出し、ズレの発見、改善策の選定、変えたあとの確かめ方まで、順番に書き込めるPDFワークシートをつくりました。

【小さなお店の売り方・伝え方改善ワーク|4P・4C分析】

4P・4Cの対応関係と確かめる問い、使い方、記入欄、業種別の記入例、改善策の評価表、実行計画までを1冊にまとめています。目安の時間は、4Pと4Cの見比べに30分、そのあとの計画に10分。用意するものは、ペンだけです。

【ワークシートの構成(A4縦・全8ページ)】
1ページ:このワークの学習目標、4Pと4Cの対応表と確かめる問い、小さなお店ほど4Cの視点が効く理由
2ページ:ワークの使い方(5つのステップ)と、使うときに気をつけたい3つのこと/WORK 1 こんな手応えのなさはありませんか
3ページ:WORK 2 見直す対象を1つに絞り、材料を集める
4ページ:WORK 3 左に4P、右に4Cを書いて見比べる
5ページ:WORK 4 ズレに印をつけ、言葉にする
6ページ:業種別の記入例(整体院/個人サロン(美容室)/パーソナルジム)
7ページ:WORK 5 お金のかからない改善を比べて、1つに絞る
8ページ:WORK 6 1つ変えて、お客様の反応を確かめる

【分析するメニュー・サービスを選ぶ】
3ページでは、見直すメニュー・サービスを1つだけ選び、その名前と内容・時間を書き込みます。あわせて、「誰に来てほしいか」を一文で書く欄があります。「どこで働く・暮らす」「どんな悩み」「どんな生活」の3つを入れるのがコツです。

【4Pと4Cを書き出す】
4ページは、このワークの中心です。紙の左側に4P、右側に4Cを書く形で、「商品・サービス ⇔ お客様にとっての価値」「価格 ⇔ お客様が払う負担」「売る場所・方法 ⇔ 利用しやすさ」「宣伝・販促 ⇔ お客様とのやりとり」の4組が、横に並んでいます。

左の4Pには思いではなく事実を、右の4Cにはお客様の言葉を書きます。各欄には、「料金・初回の料金・回数券など」「知ってから利用するまで、迷わずたどり着ける?」のように、何を書けばよいかのヒントがついています。分からないところは「?」のまま残せる作りです。

【お客様の視点を確かめる】
4Cを自分の想像だけで埋めないために、3ページに材料を集める欄があります。

最近来てくれた常連さんを1人思い浮かべ、その人の言葉で書く

口コミ・アンケートを見返す

よく聞かれる質問を書き出す

「初めての客」として自分のお店を検索し、予約の直前まで進めてみる

この4つについて、やったものに印をつけ、気づいたことやお客様の言葉をメモします。新しく調査をしなくても、手元にある材料から始められます。

【4組の対応関係からズレを見つける】
5ページでは、4ページで印をつけたところを書き写し、「4Pの事実」「4Cのお客様の目線」「見えたズレ」を並べる表に整理します。

さらに、左右のズレだけでなく、4Pの項目同士の食い違いを確かめるチェック欄もあります(例:「上質さ」を売りにしているのに、値引きクーポンを何度も出している)。最後に、いちばん気になるズレを、

「来てほしい(人)にとって、(4Pのこと)が(負担・不安・分かりにくさ)になっている可能性がある」

という型で、一文にまとめます。

【改善策を選ぶ】
7ページでは、改善の候補を3つまで出し、「ズレに効くか」「お金がかからないか」「すぐに始められるか」の3つの観点で比べる評価表に○をつけて、最初の一歩を1つだけ選びます。候補の例として、料金表の掲載、初回の流れの文章化、無料の予約フォーム、よく聞かれる質問への回答などを載せています。

選んだあとは、「価値・負担・利用しやすさ・やりとり」の残りの項目と矛盾しないかを確かめるチェック欄と、営業時間の変更のような大きな判断を書いておく「あとで考えること」の欄があります。

【実際の店舗運営に活かす】
8ページでは、選んだ改善について、「やること」「具体的に載せる文章・場所・手順」「効いたかの目安(予約数・質問の数など)」と、始める日・見る日を書き込む実行計画をつくります。

そのうえで、常連さんに一言聞く、来店後にメッセージを送る、口コミやよく聞かれる質問の変化を見る、といった確かめ方の中から選び、実際に聞く言葉まで書いておきます。結果が「効いていそう」なら続ける、「変わらない」なら別のズレを試す。次に見直すタイミング(新メニューを出すとき、季節の変わり目など)を書く欄もあります。

【記入例について】
6ページには、整体院・個人サロン(美容室)・パーソナルジムの3業種で、4Pと4C、見えたズレ、最初の一歩、あとで考えることまでを並べた記入例を載せています。整体院は元記事の記入例、美容室とパーソナルジムはこのワークシートのための架空例です。いずれも実在の店舗やお客様の事例ではありません。

【こんな方におすすめです】
・開業準備中〜開業3年目くらいの、個人サロン・パーソナルジムなど小さなお店のオーナーさん
・サービスには自信があるのに、新しいお客様が増えないと感じている方
・SNSや広告を増やすべきか、迷っている方
・料金・予約方法・メニューの見せ方を見直したい方
・動画を見て、自分のお店でも4Pと4Cを見比べてみたいと思った方

専門的なマーケティングの知識がなくても取り組めるように、問いと記入例はできるだけやさしい言葉で書いています。

なお、このワークシートは、お店の売り方・伝え方をお客様の目線から見直すための道具で、予約数や売上などの成果を保証するものではありません。見つけたズレが本当にお客様の負担になっているかは、変えてみて、お客様に聞いてみて初めて分かります。だからこそ、「見比べて、1つ変えて、確かめる」流れを大切にしています。

印刷して、ペンで書き込むのがおすすめです。

宣伝を増やす前に、まずはお客様からの見え方を確かめる。主力メニュー1つから始めるための教材として、手元に置いていただけたらうれしいです。
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