「うちの強みは何ですか?」に答えられますか?
ホームページを作るときの打ち合わせ。
補助金の申請書。
InstagramやGoogleビジネスプロフィールの紹介文。
お店を続けていると、「お店の強みは何ですか?」と聞かれる場面が、思っていたよりたくさんあります。
そんなとき、こんな言葉が浮かんでこないでしょうか。
丁寧な接客
アットホームな雰囲気
技術力には自信があります
どれも、間違いではありません。
きっと実際に、丁寧に接客されているのだと思います。
ただ、この言葉だけでは、「なぜ、ほかのお店ではなく、あなたのお店なのか」が伝わりにくいのです。
近くのお店のホームページを開いてみると、同じ言葉が並んでいることも少なくありません。
一方で、あなたのお店には、何度も通ってくださるお客様がいます。
わざわざ遠くから来てくださる方や、ほかのお店から移ってきた方もいるかもしれません。
その方たちは、何かしらの理由があって、あなたのお店を選び続けています。
「うちの強み」の答えは、その理由の中にあります。
この記事では、以前ご紹介したコアコンピタンスの考え方を使って、お客様の声から強みの根拠を見つけ、自店の強みを1文にまとめ、実際の発信やメニューに活かすための実践編としてまとめました。
コアコンピタンスとは
コアコンピタンスは、ひとことで言えば、お客様に選ばれ続けている理由の、いちばん根っこにある力です。
ここで大切なのは、商品・メニューと、それを生み出している力を分けて考えることです。
・商品・メニュー
いまお客様に出している「答え」
・コアコンピタンス
その答えを生み出している「力」
たとえば、縮毛矯正が人気の美容室があるとします。
「縮毛矯正」はメニューです。一方で、「くせ毛の状態を細かく見極めて、家でも扱いやすい仕上がりにする力」は、コアコンピタンスの候補になります。
メニューは、流行や競合しだいで求められなくなることもあります。
でも、根っこにある力は、カットやカラー、ホームケアの提案など、ほかのメニューにも活かせます。
だから、メニュー名ではなく「何ができるか」で考えるのがポイントです。
そして、ある力をコアコンピタンスと呼べるかどうかは、次の3つの条件で確かめます。
お客様が価値を感じているか
自慢の技術でも、お客様が価値を感じていなければ、まだ「お店側のこだわり」の段階です
競合が簡単には真似できないか
営業時間の延長や初回割引は、すぐに真似されます。経験の積み重ねや、いくつかの要素の組み合わせから生まれる力は、追いつかれにくくなります
ほかのメニューやサービスにも活用できるか
1つのメニューにしか使えない力は、そのメニューと一緒に弱くなってしまいます
最初から3つすべてを満たしていなくても大丈夫です。
足りない条件がわかれば、それが次に磨く方向になります。
また、「価格が安い」「駅から近い」といったことも、お客様にとっては大切な理由です。
ただ、価格は相手が値下げすれば並ばれますし、立地はお店の「力」というより「条件」です。
どちらも大事にしながら、コアコンピタンスとは分けて考えます。
コアコンピタンスが生まれた背景や、小さなお店がやりがちな3つの勘違い、30分でできる4つのステップ、整体院と美容室の記入例は、こちらの動画で詳しく解説しています。ご覧いただくと、ぐっとわかりやすくなります。
【初心者向け】コアコンピタンスとは?自社の強みを見つける方法と競合との差別化をわかりやすく解説
<実践イメージ>パーソナルジムの強みを掘り下げる
ここでは、4つのステップに沿って、お客様の声を集めるところから、強みを1文にまとめるところまで、ひととおりの流れを見てみます。
※ここで紹介するのは、考え方を伝えるための架空の説明例です。実在のお店やお客様の声、調査の結果や成果ではありません。お客様の言葉も、「こう聞いたとしたら」という想定で、この記事のために作ったものです。
たとえば、トレーナーがひとりで営む、個人経営のパーソナルジムがあるとします。お客様の多くは、仕事が忙しい30〜40代の会社員です。ホームページを作り直すことになり、「ジムの強みを教えてください」と聞かれて、トレーナーさんは「丁寧な指導……でしょうか」と答えたものの、自分でもしっくりきていません。
<STEP 1>お客様の声を集める
まずは、自分で強みを考える前に、お客様の声を集めます。口コミや、LINEでもらったメッセージ、会話の中で言われたことを、お客様が使った言葉のまま書き出します。
「出張がある週でも、自分の生活に合わせて無理なく続けられる」(Googleマップの口コミ)
「説明がわかりやすい」(Googleマップの口コミ)
「前回話したことを覚えていてくれるので、毎回説明し直さなくていい」(来店時の会話)
「家でやることが少しだけだから、続けられている」(LINEのメッセージ)
「駅から近いので、仕事帰りに寄れる」(入会時のアンケート)
この段階では、良し悪しを判断しなくて大丈夫です。トレーナーさんが「そこを評価してくれていたんだ」と思うような声も、そのまま残しておきます。
<STEP 2>なぜそれができるのかを掘り下げる
次に、似ている声をまとめます。1・3・4は、どれも「無理なく続けられる」という評価だと考えられます。2の「説明がわかりやすい」は別のグループにしておきます。5の「駅から近い」は、お店の力というより立地という条件なので、大切な理由として残しつつ、ここでは掘り下げません。
ここでは、いちばん声の多い「無理なく続けられる」について、「なぜ、うちはそれができるのか」を考えます。
なぜ、無理なく続けられるのか?
お客様の生活リズムに合わせて、その週の運動内容を調整している
毎回のはじめに、仕事や家庭の状況(出張、残業、子どもの行事など)を聞いている
トレーニング記録を残し、次回の指導に活用している
なぜ、それができるのか?
セッションのあとに毎回5分ほどで記録をつけ、次の予約の前に必ず見返している
記録には、運動の内容だけでなく、「来週は出張」「最近よく眠れていない」など、生活のメモも残している
ひとつひとつは、特別なことではないかもしれません。でも、この組み合わせが、お客様の「無理なく続けられる」を支えていそうです。
能力の形にすると、こうなります。
仕事や家庭の予定で変わる生活リズムを記録から読み取り、その週に続けられる量の運動に組み直す力
「丁寧な指導」と比べると、何をしているお店なのかが、ずいぶん具体的になりました。
<STEP 3>3つの条件で評価する
出てきた候補を、3つの条件で、○・△・×の3段階でチェックします。
候補お客様が価値を感じている?簡単には真似できない?ほかにも使える?生活リズムを記録から読み取り、続けられる量に組み直す力○△○駅から近い○××
1つ目の候補について、それぞれの根拠を確かめておきます。
お客様が価値を感じているか
○。3人のお客様が、別々の場所で「続けられる」に近い言葉を使っています
簡単には真似できないか
△。記録を見返す習慣と、生活のメモを指導に結びつける経験の組み合わせなので、すぐには追いつかれにくそうです。ただ、近くのジムが同じことをしていないかは、まだ確かめていません。 そこで今は「真似されにくいかもしれない」という未確認の仮説として扱い、△にしておきます
ほかにも使えるか
○。たとえば、出張先のホテルでできる運動メニューの提案や、ケガや出産のあとで運動を再開したい方の相談にも活かせそうです
「駅から近い」は、お客様にとって大切な理由です。なくす必要はありません。ただ、お店の「看板」として前に出すのは、根っこの力のほうです。
もう一つ確かめておきたいのが、その力が、トレーナーさんの頭の中だけにないかです。このジムの場合は、記録という形でお店に残っています。記録のつけ方や見返すタイミングを手順として書いておけば、この力はさらに長持ちします。
<STEP 4>1文にまとめる
最後に、元記事の型に当てはめます。
うちの店は、【誰の】【どんな悩み】を、【どんな力】で解決する店です。
誰の:出張や残業で、予定が読みにくい会社員の
どんな悩み:「運動が続かない」を
どんな力:生活リズムに合わせて、その週のメニューを組み直す力で
1文にすると、こうなります。
うちのジムは、出張や残業で予定が読みにくい会社員の「運動が続かない」を、生活リズムに合わせてその週のメニューを組み直す力で解決するジムです。
最初に浮かんだ「丁寧な指導」と比べてみてください。どんな人に、どんな理由で選ばれているのかが、言葉にできるようになりました。
ただし、この1文はまだ完成形ではありません。
「真似されにくいか」は△のままですし、声を寄せてくれたのは3人です。次に来たお客様に「うちを選んでくれている理由」を聞きながら、少しずつ確かめて、書き直していきます。
まずは、お客様の言葉を5つ書き出す
ここまで読んで、「うちでもやってみようかな」と思った方は、まず今日、口コミやお礼のメッセージを読み返して、お客様の言葉を5つ書き出してみてください。自分で考えた強みより先に、お客様の言葉を並べる。それだけで、いつもとは違う「うちの強み」が見えてくることがあります。
ワークシートのご紹介
動画を見て「なるほど」と思っても、いざ自分のお店で考えようとすると、「お客様の声をどう整理すればいいんだろう」「『なぜ?』を考えても、『頑張っているから』で止まってしまう」と、手が止まってしまうことがあります。
そこで、お客様の声を集めるところから、「なぜそれができるのか」の掘り下げ、3つの条件での評価、1文へのまとめ、そして発信やメニューへの使い道と今週やることまで、順番に書き込めるPDFワークシートをつくりました。
【自店の強みを1文にする|コアコンピタンス実践ワークシート】
4つのステップの目安は、元記事と同じ30分ほど。そのあと、1文の使い道を選び、今週やることを決めるページが続きます。用意するものは、ペンと、口コミやお礼のメッセージだけです。
【ワークシートの構成(A4縦・全8ページ)】
1ページ:このワークの学習目標、コアコンピタンスとは(商品・メニューと力の違い)、コアコンピタンスと呼べる3つの条件
2ページ:ワークの使い方(4つのステップと時間の目安)、小さなお店がやりがちな3つの勘違い/WORK 1「お店の強みは何ですか?」と聞かれたら
3ページ:WORK 2 「選ばれた理由」を集める(STEP 1)
4ページ:WORK 3 「なぜ、うちはそれができるのか」を掘る(STEP 2)
5ページ:WORK 4 3つの問いで、候補をふるいにかける(STEP 3)
6ページ:業種別の記入例(整体院/美容室/パーソナルジム)
7ページ:WORK 5 1文にまとめて、使い道に優先順位をつける(STEP 4)
8ページ:WORK 6 今週やることを決めて、強みを使い始める
お客様の声を集める
2ページでは、まず「いま強みを聞かれたら、どう答えるか」を書き、その答えが近くのほかのお店でも言えそうかを確かめます。ここで書いた答えは、最後に作る1文と見比べるためのものです。
3ページでは、口コミや予約サイトのレビュー、お礼のメッセージ、常連さんの一言、ほかのお店から移ってきたお客様の話など、どこから声を集めるかに印をつけ、お客様の言葉をそのまま10個まで書き出します。声が少ないときに、常連さんに聞くための質問と、聞く人・聞く日を書く欄もあります。
自店が評価されている理由を整理する
書き出した声のうち、似ているものに同じ記号(A・B・C)をつけて、グループに分けます。いくつもの声に共通している評価が、お客様が自店を選んでいる理由の手がかりになります。
「なぜそれができるのか」を掘り下げる
4ページでは、声のグループごとに、「まとめた声」「なぜ?(お店がしていること)」「なぜそれができる?(経験・知識・仕組み)」「能力の形にすると」の順に書き込みます。最後の欄は、メニュー名ではなく「〜できる力」の形で書くようになっています。
強みの候補を比較・評価する
5ページでは、出てきた候補を5つまで並べ、3つの条件に○・△・×をつけて、○の数と「弱い条件(次に磨く方向)」を書きます。×がついたけれど続けていくことを書く欄と、その力がカルテ・メモ・手順書など「お店に残る形」になっているかを確かめる欄もあります。
自店の強みを1文にまとめる
7ページでは、「誰の」「どんな悩み」「どんな力」の3つに分けて書いてから、1文にまとめます。1回目と書き直しの2回分の欄があるので、長くなっても大丈夫です。
SNSやメニューに活用する方法を考える
同じ7ページで、1文の使い道を「発信の軸にする」「メニューを見直す」「新サービスのヒントにする」の3つで比べます。「強みの証明になるか」「人手・時間に無理がないか」「今週から始められるか」の3つの観点で○をつけて、最初にやるものを1つ選びます。
8ページでは、最初にやること、具体的な投稿内容やメニュー、やらないこと、お客様に聞くこと、お店に残す形を、日付とあわせて書き込む実行計画をつくります。
【記入例について】
6ページには、整体院・美容室・トレーナー1人のパーソナルジムの3つの記入例を載せています。整体院と美容室は元記事に出てくる例、パーソナルジムは元記事の考え方を当てはめた架空例で、いずれも実在の店舗やお客様の事例ではありません。
【こんな方におすすめです】
開業準備中〜開業3年目くらいの、個人サロン・パーソナルジムなど小さなお店のオーナーさん
1〜5人ほどでお店を運営している方
「お店の強みは?」と聞かれると、うまく答えられない方
ほかのお店との違いを、うまく説明できずに悩んでいる方
SNSやホームページで、何を発信すればいいのか定まらない方
価格競争に頼らず、選ばれる理由を考えたい方
新しいサービスやメニューの方向性を整理したい方
専門的なマーケティングの知識がなくても取り組めるように、問いと記入例はできるだけやさしい言葉で書いています。
なお、このワークシートは、お客様の声をもとに自店の強みを整理し、言葉にするための道具です。集客や売上などの成果を保証するものではありません。また、見つけた強みが本当にほかのお店に真似されにくいかは、書くだけでは確かめきれないこともあります。だからこそ、「お客様の声から考えて、1文にして、使いながら確かめる」流れを大切にしています。
印刷して、ペンで書き込むのがおすすめです。
このワークシートで取り組めるのは、
お客様の声を言葉のまま集めて、自店が選ばれている理由を整理する
「なぜそれができるのか」を掘り下げて、メニューではなく「力」の形にする
強みの候補を3つの条件で比べ、次に磨く方向を見つける
自店の強みを1文にまとめる
その1文を、発信・メニュー・新しいサービスのどれに使うか決めて、今週から始める
ことです。特別な何かを探すのではなく、お客様がすでに教えてくれている理由を、言葉にする。そのための教材として、手元に置いていただけたらうれしいです。