建築士を増やすだけでいいのか?~建築士の責任~

建築士を増やすだけでいいのか?~建築士の責任~

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法律・税務・士業全般
建築士として30年。1級建築士として20年頑張ってきました。
最近は、働き方改革といったフレーズを耳にしますが、建築士という職業
については、大企業を除けば「ブラックは当たり前」といった世界です。
これは、建築士の意識を変えないといけないのと、世間一般の方に対しての
建築士の必要性と能力をよく理解いただくしかないと、特に最近
思うようになりました。

建築士の受験資格の緩和が決定しました。

最近のニュースにて「1級建築士の受験資格の緩和」が採決された。と
ニュースで読みました。3年後からの施行のようです。
現在、登録している現存の1級建築士は約38万人とされていますが
あくまで登録番号であり、無くなった方もおられると考えると
多くても10~15万人程度ではないでしょうか?
私の番号も32万番台です。50歳です。
また、1級建築士を持ちながら「設計業務」に従事している人は
その中で(予測ですが)5~10万人程度と考えます。
国の調査によると、現存する1級建築士の40%が60歳代以上とのことで
一定の経験を持った「設計に従事する」1級建築士は、おおよそ
3~5万人といった規模になります。
明らかに「人手不足」な業界で、追い打ちをかけるように
近年の建築基準法改正、省エネ法の改正による業務の難易度が
上がっているのは確かです。

建築士の能力と責任

言わずもがな、建築士の試験は難しい試験です。
とあるサイトでの記載ですが、1級建築士の偏差値は65~68。
ただ、「頭がいい」という資格でなく、建築基準法という分厚い法律を
理解し、その上で「人の想い」と「感覚」を具現化する能力が必要です。
私も、1級建築士受験には学科試験で4回、製図試験で2回チャレンジして
何とか合格しました。
単に「勉強ができる」から建築士として成り立つのではなく、依頼主様の
「なんとなくの理想、想い」を空間構成から仕上げ等の配色やディティール
で具現化し、なんとなくをご理解いただく必要があります。
特に感覚については不思議なもので、例えば飲食店の客席の座る高さを
数センチ変えるだけで居心地の良さ悪さが変わり、そのお店が「流行るのか?」「客足が伸びるのか?」「売り上げが上がるのか?」は
大きく変わります。
居心地が良い店が売り上げが上がるわけでなく、客の回転数が悪ければ
提供商品の単価を上げる必要があり、そうなると材料原価が上がるわけで
そうすると、販売単価が上がってしまい、客足が遠のく。。。
といったスパイラルに陥ることもあります。
よって、「お店の居心地」ばかりを求めてしまうと
そのお店を閉店に導く可能性もあるわけです。

設計業務の難易度

先にも書きましたが、近年の設計業務は難易度が格段に上がっています。
難易度には2種類あり、そもそもの「設計業務」の難易度が上がっている上
「設計事務所の経営」もかなり難しくなっています。
【設計業務の難易度】
新築に限らず、改修工事やリフォーム等にも建築基準法がかかわります。
特に「リフォーム=建築基準法とは無関係」ではなく、人の命と財産を守る
法律ですから、新築に限った話ではありません。
時代の流れから、昭和25年に制定された建築基準法の基本定義がどんどん変わっていき、今の時代に合わせ「新しい解釈を上乗せ」されているのが建築基準法です。
また、大災害等が起こるたびに建築基準法の見直し改正がなされます。
この20年のうちでも、大きく法の解釈を改正上乗せされてきていますので
60歳代の大ベテランが「法律にもう対応できない」といった意見も聞かれます。
また、昨今の省エネについての改正が2025年から毎年行われた上に
同時に「構造規定」の改正(いわゆる4号特例の廃止)が同時に改正されたので、実際には設計業界は大パニックになっています。
このことはあまりニュースになりません。
設計業務には、その設計した建物を第3者の目で確認する「確認」という
法律制度がありますが、いろんな法改正がなされ、チェックを行う民間指定確認機関での「確認」業務が追い付かず、確認審査の日数が、数年前より
3~6倍の長さとなっています。
数年前では、確認審査が住宅の場合で1か月程度でしたが、最近では
構造、省エネチェックが含まれ、3~6か月かかってしまう状況です。
【設計事務所としての経営】
先ほど書いた通り、設計業務の難易度が格段に上がり、1つの業務完了までの
時間が恐ろしく長くなりました。
経営する側として、これまでは1か月程度で処理できて、入金予定が読めたものが、ここ最近では審査だけでも3~6か月、その前のプラン作成や予算決定まででも数か月かかり、人の感情ですから「答えがない」ものに対して
「答えを導き出す」時間が異常なほどに長くなっています。
ともなると、設計事務所の経営はひっ迫します。
スタッフを抱えている事務所などは、まずはスタッフ給与を確保しながら
設計業務をこなす必要があり、量産型でない建築設計の場合は支出と入金のバランスが計画通りにいかなくなりやすいです。
なんせ、扱うものが「答えのない人の感情、完成しないとわからない感覚」であり、合わせて「経営に必要な現実的資金管理」となるので、空想世界を現実化し対価という物的な証に変える作業は、雲をつかむような世界です。

個人的に思う、これまでの建築士の「反省すべき点」

私も建築士です。個人的なこれまでの反省点です。
この反省をいち早く、関係する建築士たちが気付けない限り
建築士の人材不足は加速するように思います。
1.建築士は「自称建築家」気取りを辞めるべき
 ・建築家を馬鹿にするわけではありません。
  知った中でも「建築家」として十分な技量を持った方はおられます。
  危惧するのは「自称建築家」
  建築家と名乗るのは自由です。法の縛りもありません。
  ただ、一定の技術能力がないままに「見た目かっこいい」だけの建築家は
  これからの若い建築士候補たちを惑わし誤解させます。
  あと、個人的には「施工の仕方を知らない自称建築家」は本当に迷惑で
  考えるのは建築家、作るのは施工会社でしょ?といった考えでなく
  「頭の中で施工するのが建築家、建築士」であり、その図面を基に
  実際に現場で施工してくれるのが施工会社であって、造るといった部分は
  建築家、建築士、施工会社それぞれが同じ考えを持っていないと
  建物の完成には至りません。
  自称建築家の「その辺は現場で何とかしておいて」という言い方が
  私は同業者として一番嫌いです。
2.建築士が設計する建物は「作品」ではない
 ・これは私が最初に勤めた設計事務所の所長の話です。
  その所長は
  「設計するものを物件というな」
  「設計するものを作品とするな」
  と言われていました。かたくなにその教えを守り、30年以上「物件、作
  品」と発したことがありません。
  設計者はあくまで「依頼された思いを具現化し、経験と知識を加える」
  能力です。
  まして、他人様の大切な資金を基に建物を設計する立場であり
  間違っても「建築士、建築家のわがままな建物を考え、現実化し
  作品とする」ものではありません。
  もちろん、著作権等の権利などはお引渡しまでは存在します。
  でも、他人様の財産となる建物は、設計者の作品でもなんでもありませ
  ん。
  あくまで、その建物を評価する他人側からの「作品」であり、本人自身
  が「わが作品」などと申しておられるのは、非常に滑稽です。
3.建築士自体の「報酬規程」を努力義務にしない
  これは、私がもう少し若いころに改正に挑みうまくいかなかった点です。
  建築士は国の定めによる「報酬規程」が定められています。
  ただ、努力義務であり実際には「絵にかいた餅」状態です。
  これは市場の競争による価格帯の安定を目指すためであって努力義務と
  されていますが、結果、「建築士の業務内容の不明確さ」が影響して
  設計価格の低下がなされ、培った技術能力・労働時間に対する対価の
  基準が低いのです。
  特にこれから若い方が設計事務所を運営するとなれば、勇気をもって
  市場価格より高い報酬で運営する必要がありますが、世間の評価で
  対価は決まるので、結果、団栗の背比べ的な報酬額で進めるしか
  無くなり、評価を上げるために「自称建築家」が生まれ「作品」と
  呼ばれる建物が増えてしまいます。

これからの建築士に必要な「感覚」

最後に私が目指す「これからの建築士」についてまとめます。

特に「経験と知識」を持つベテラン建築士さんは
・一般の方への「建築士業務を知ってもらう」努力
・若手建築士に対しての「経験と知識」の伝承
を努力しましょう。私も努力していきます。
一般の方に知ってもらうには??
昨今はSNSなど「個人で情報を発信できる」時代です。
正しい情報を一般の方に「わかりやすく」知っていただくために
SNSなどを利用していくこともよいかと思います。

若手建築士への伝承ですが、もう昔のように「技術は見て覚える」
時代でなく「経験を積んで一人前」という時代でもなくなっています。
若い方は先に情報を得て、リスクヘッジを行うことが得意であって
ただ過剰にリスクを避けるのではなく、どのポイントでリスクが生じるか?
をベテラン側が伝えることで若い方のチャレンジする可能性が増えると思っています。
ベテラン側は若手のチャレンジを客観的に見守り、若手の皆さんは
ネット上だけの情報でなくベテランたちの「生きた経験」を
生の声で聴くことをお勧めします。

建築士を増やすだけでいいのか?~まとめ~

今回は長くなりましたが、私の結論と今後への考えとして
・建築士を目指す人が増える緩和はよいと思う
・建築士を目指す若い方たちへのサポートをベテラン建築士が行う
・「目指すものがあり諦めない」建築士が増えることを望みます
・もっと建築士を世の中に知ってもらう
ことが、これからの世の中に対する建築士の立場なんだなぁと
自分なりに解釈しています。


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