うつ病になると、世界はどう見えるのか―当たり前の日常が遠くなったとき

うつ病になると、世界はどう見えるのか―当たり前の日常が遠くなったとき

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コラム
うつ病というと、気分が落ち込んで、何もする気が起きなくなる病気。
そんなイメージを持っている人は多いかもしれません。

けれど、実際のうつ病は、それだけでは語りきれないものです。

頭が割れそうなほど痛い。
お腹の調子が悪く、何度もトイレに駆け込む。
朝、目が覚めた瞬間から消えてしまいたい気持ちに襲われる。
好きだったものを見ても心が動かず、本を開いても文字が頭に入ってこない。

私が経験した急性期は、心だけでなく、体も、思考も、日常生活も、思うようにならなくなる時間でした。

❇️心だけではなく、体まで苦しくなる

うつ病では、気分の落ち込みや意欲の低下だけでなく、頭痛や胃腸の不調、食欲の変化、疲労感など、さまざまな身体症状が現れることがあります。

私の場合、特につらかったのは、割れそうなほどのひどい頭痛と、毎日止まらない下痢でした。

心が苦しいだけでも大変なのに、体まで休ませてくれない。
横になっていても痛みがあり、何かをしようとしても体調が気になる。
普通に生活することそのものが、難しくなっていきました。

健康なときには当たり前だった食事や外出、読書といった行動も、体調によって大きな負担になります。

うつ病は、気持ちの持ちようだけで解決できるものではありません。
心身の両方に影響し、生活全体を変えてしまうことがあるのです。

なお、強い頭痛や長引く下痢には、ほかの身体的な原因が隠れている場合もあります。
すべてをうつ病のせいと決めつけず、医療機関に相談することも大切です。

❇️朝が来ることさえ、つらかった

私には、朝から強い希死念慮に苦しんでいた時期がありました。

目が覚めた瞬間から、もう苦しい。
今日という一日が始まってしまったことが、重くのしかかる。

これから何かをする気力も、未来に期待する気持ちも残っていない。
そんなときに「前向きに考えよう」と言われても、簡単にはできません。

前向きになりたくないのではなく、前向きになるための力そのものが残っていないのです。

外から見れば、朝起きただけのことかもしれません。
でも本人にとっては、また一日を耐えなければならないという感覚になることがあります。

この苦しさは、表情や行動だけでは伝わりにくいものです。

❇️好きなものを楽しめなくなる

うつ病の急性期には、以前は好きだったものに興味が湧かなくなることがあります。

私も、何かを見ても心が動かなくなり、本も読めなくなりました。

文字を追っても内容が頭に入らない。
少し読んだだけで集中力が切れてしまう。

それまでできていたことができなくなると、自分が変わってしまったように感じることがあります。

けれど、それは努力が足りないからではありません。
うつ病では、集中力や思考力が低下することもあるのです。

好きなものが嫌いになったわけでも、その価値がなくなったわけでもない。
ただ、楽しむための心の余力が失われてしまうことがあります。

❇️現実を忘れるために、のめり込んでいたもの

私の場合、何を見ても興味が湧かず、食欲もあまりありませんでした。
缶コーヒーだけで過ごすような日もあり、ただひたすらタバコを吸っていたこともあります。

一方で、パチンコやスロットにはのめり込んでいました。

それは、心から楽しんでいたというより、現実の問題を忘れたかったからです。

台の前に座り、画面や音に意識を向けている間だけは、抱えている問題や先の見えない苦しさから離れられるように感じていました。

日常の中では何をするにもつらいのに、特定の行動には没頭できる。
一見すると矛盾しているようですが、私にとっては、何も考えずに済む場所を探していたのだと思います。

もちろん、こうした背景は人によって違いますし、うつ病の人が必ず依存の問題を抱えるわけではありません。

ただ、外からは元気に見える行動の裏側に、現実を忘れたいほどの苦しさが隠れている場合もあります。

何かができることと、心が健康であることは、必ずしも同じではないのです。

❇️同じうつ病でも、見えている世界は違う


うつ病の症状は人それぞれです。
眠れなくなる人もいれば、眠りすぎてしまう人もいます。
食欲が落ちる人もいれば、反対に食べる量が増える人もいます。

同じ病名でも、同じ苦しみ方をするわけではありません。

だからこそ、外出できるから大丈夫、笑えるから元気、好きなことができるなら軽いはず、と簡単に判断することはできないのです。

急性期には、世界がいつもどおり動いているのに、自分だけがそこから切り離されたように感じることがあります。

周囲の人は働き、笑い、明日の予定を立てている。
でも自分は、今日を過ごすだけで精いっぱい。

未来を考える余裕もなく、今の苦しさがずっと続くように思えてしまうこともあります。

そんなときに、無理に希望を持つ必要はありません。
まずは、今の苦しさをひとりで抱え込まないことが大切です。

うつ病の急性期に、以前できていたことができなくなっても、自分を責めないでほしいと思います。

本が読めなくても、何も楽しめなくても、思うように動けなくても、それは怠けているということではありません。

心と体が、それほど苦しい状態にあるのかもしれないのです。

うつ病の人が見ている世界は、外から見える姿だけではわかりません。
だからこそ、目に見える行動だけで判断せず、その人がどんな一日を過ごしているのかを想像することが大切なのだと思います。

そして、今は世界が暗く見えていたとしても、その見え方が未来のすべてだと決めつけなくていい。

一日を生き抜くことさえ大変なときには、遠い未来まで考えなくてもいいのです。

医療や周囲の支えを借りながら、まずは今日を乗り切る。
その積み重ねを大切にしてほしいと思います。


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