うまくいかなかった頃の話
これまで何本かの長編小説を書いてきましたが、思い返すと、キャラクターが思うように動いてくれなかった時期が何度もありました。
プロットは頭の中で組み上がっているのに、いざ書き始めると、キャラクターのセリフがどれも同じような調子になってしまう。対立させたいのに、なぜそこまで意固地になるのか、書いている自分自身が納得できないまま筆が止まる。そんな経験を、私は一度や二度ではなく、何度も繰り返してきました。
今日は、その頃を振り返りながら、自分がはまっていた失敗パターンをいくつか書いてみたいと思います。
失敗パターン①:性格を「一言」で決めてしまう
一番よくやっていたのが、キャラクターの性格を「クールな人」「明るい人」というひと言で済ませてしまうことでした。
一言で決めた性格は、書いているうちにだんだん薄まっていきます。クールなキャラクターは、ただ無口なだけの人になり、明るいキャラクターは、ただ賑やかなだけの人になっていく。私はこの現象を、キャラクターが「記号になっていく」と呼んでいます。
性格は一言で終わらせるものではなく、その奥にどんな欲求や恐れがあるのかまで掘り下げて、はじめて動き出すものなのだと何本も書き終えてから気づきました。
失敗パターン②:対立の理由を後付けしてしまう
もうひとつ、よくやっていた失敗が、対立シーンを書くときに、その場の勢いで理由を後付けしてしまうことです。
主人公とぶつからせたいから、なんとなく反対の意見を言わせる。読み返すと、そのキャラクターがなぜそこまで頑なになるのか、自分でも説明できない。結果として、対立シーンが単なる言い争いになり、物語の熱量が急に下がってしまう瞬間が何度もありました。
対立は、キャラクターの根っこにある恐れが刺激された結果として起きるものです。この順番を逆にして、対立を先に決めてから理由を探そうとすると、どうしても浅くなってしまうのだと、痛感させられました。
失敗パターン③:脇役を「主人公を助けるための道具」にしてしまう
複数の長編を書く中で、特に反省したのが脇役の扱いです。
主人公を目立たせるために、脇役を都合よく動かしてしまう。助けが必要なときに現れ、役目が終われば物語から静かに消えていく。書いている間は気づかないのですが、読み返すと、その脇役だけがどうしても人間らしく見えないのです。
脇役にも、その人なりの欲求と恐れがあり、その人自身の物語がある。それを意識するようになってから、脇役のセリフや行動が、以前よりずっと自然に出てくるようになりました。
失敗パターン④:成長を「性格が変わること」だと思い込む
キャラクターの成長を描こうとするとき、私はよく「性格そのものを変えてしまう」という失敗をしていました。
臆病だったキャラクターが、急にまったく物怖じしない人になる。物語としては分かりやすいのですが、読み返すと、そのキャラクターが別人になってしまったように感じられ、それまで積み重ねてきた説得力が崩れてしまいます。
本当の成長とは、性格そのものが入れ替わることではなく、根っこにある欲求や恐れとの付き合い方が変わることなのだと、何本も書き重ねてようやく理解できるようになりました。
まとめ
キャラ作りの失敗を振り返ってみると、そのほとんどが、性格を表面だけで決めてしまい、根っこにある欲求や恐れまで掘り下げていなかったことに行き着きます。
エニアグラムという視点に出会ってから、私はようやく、この掘り下げ方を言葉にできるようになりました。これまでの失敗は、決して無駄だったとは思っていません。むしろ、その失敗の数だけ、今こうして書いている記事の土台になっているのだと感じています。