1 エグゼクティブコーチングの料金と内容をどう判断したらよいのかをお伝えします
エグゼクティブコーチングを検討するとき、誰もが高額な料金に見合うだけのものが得られるかと不安になります。
何より慣れていませんから何と比較していいかも分かりません。
ぼくは経営コンサルタントを30年以上やってきました。
コンサルタントなら、業績が上がるとか、チームが活性化するとか、何かしら目に見えるビジネス上の成果が出たか出なかったかが分かります。
しかし、エグゼクティブ・コーチングとなると、コーチングを受けるクライアント側の気づきや変化だけがその成果なので、成果は外からは容易に見えません。
ここにエグゼクティブコーチングを受けようと考える方の悩みがあります。
果たして、このコーチの提供するエグゼクティブコーチングにこれだけの料金を支払う価値があるのか?
また、安ければいいわけでもありません。安くて効果を得られなくてはお金と時間をかける意味がありません。
エグゼクティブコーチの側も、ぼくに言わせると自社の良し悪しを判断してもらう材料の提供が足りないと思えます。
たしかに守秘義務があるので、誰にいくらでエグゼクティブコーチングを行ったという実績は出せませんが、それでも何かしらの判断材料を提示するのがプロフェッショナルです。
そこで人がエグゼクティブコーチングを使ってみようかと考えるとき、料金と内容をどう判断したらよいのかのポイントをお伝えします。
2 エグゼクティブコーチングとは
まずコーチングのことですが、コーチングとは問いかけによってクライアント(相談者)に気づきを与え、自らの力で目標達成や問題の解決にたどり着くサポートをするコミュニケーション技法です。
コーチングは具体的なアドバイスや指示、提案、指導を行うのではなく、問題や悩みの解決方法を、自分自身で考え実現していくモチベーションを引き出すものです。
相手と真剣に向き合いじっくりと話を聴く傾聴力、クライアントの内面にある本音や課題を引き出し、本人に認識してもらうための質問力、コーチ自身の感想をそのまま伝えてクライアントに客観的視点を提供するフィードバック力などを駆使します。
一般的なコーチングでは、対話を通じてコーチングを受ける人の素直な考えや気持ちを掘り下げ、その人が最適な答えを自ら見つけ出すサポートをします。
個人の自己実現や目標達成が目的です。
エグゼクティブコーチングは、経営者や後継者、経営幹部の方が対象です。
経営者や経営幹部が抱えている、事業推進や組織に対する課題を解決することや、目標を達成することに主眼を置く点が大きな特徴です。
エグゼクティブコーチングの当面の目的は、ビジネス上の成果を挙げることです。
もちろんエグゼクティブコーチングも経営者や経営幹部個人のテーマを扱うこともありますが、そのテーマもビジネス上の成果を前提としていることが多いといえます。
エグゼクティブコーチは、クライアントが自分の凝り固まった考えや価値観に気づき、そこから離脱することを手伝います。
経営者や経営幹部が自らの力で成長・変化することで、事業の方針や社員との接し方も変容し、より良い形で経営が回っていくことを目指します
3 エグゼクティブコーチングの流れ
(1)トライアルセッション
エグゼクティブコーチングで大切なのはヒアリング力とは質問力の高さです。
クライアントは経営者や経営幹部の方々です。理解の浅い質問や「分かってないな」と思わせる質問をすると相手に馬鹿にされたり、軽蔑されてしまうことにもなりかねません。
ビジネス的に本質を突いた質問ができることがエグゼクティブコーチングでは重要です。この力で、クライアントが使っている言葉の深層部に存在する信念、価値観、大切にしていることなどを聞き取り、クライアント本人が気づいていない、メンタルブロックや、心理的なストッパー、トリガー(きっかけ)に気づかせることができます。
使っている言語のパターンを聞き取る力で、クライアントの言語プロファイリングができ、その方の行動パターンや効果的な言葉の使い方の助言が可能となります。
クライアントに深い気づきを起こさせる高いクオリティーの質問ができることが、エグゼクティブコーチングのもっとも重要なスキルです。
エグゼクティブコーチングを検討いただく方のために30分程度のトライアルセッションが一般には行われます。
エグゼクティブコーチングは1対1の対話形式で行います。
まず、エグゼクティブコーチングに興味を持った理由、すなわち現状の悩みや課題、夢、人生観、これまでの成功体験と失敗体験、家族のことなど、自由に語っていただきます。
エグゼクティブコーチはそれらを傾聴しながら、クライアントはどのようなメガネ(※)をかけている、どのようなコミュニケーションを好む人間なのか、会社のパーパス、ミッショ、ビジョンはどのようなもので、それをどのように捉えているか、戦略と戦術の区別はどの程度ついているのか、本人の意識している課題と本人の気づいていない(見ないようにしている)真の課題、クライアントのために解決するべき問題とその解決の優先順位などの仮説を立てます。
※メガネとは世界観であり、価値観であり、人やものを見る視座であり、そして「偏見」です。「偏見」は人それぞれに特有の認識枠であり、「偏見」から自由な人はいません。
次はエグゼクティブコーチがそれらの仮説に基づいてさまざまな質問をして、仮説を検証して仮説を研ぎ澄ませていきます。
短時間の中でどれほど研ぎ澄まされた仮説が作れるものかと思われるかもしれませんが、はじめての面談で作られる仮説は多くの場合、ほぼ的を射ています。おそらくこれは、エグゼクティブコーチとクライアントがお互いが白紙で対面することで、独善的な脳みそがじゃまをしない、無意識界の交流ができるためではないかとぼくは日ごろから考えています。
エグゼクティブコーチはその仮説を胸に秘めたまま、けっしてクライアントに伝えることはありません。答えはすべてクライアントの内側にあるからです。
ただしコーチングの実力を示すために、作ったばかりの仮説の一端を使って、クライアントがこれまでもっていなかった視点を言葉にして投げかけます。ぼくはそれを「きらりと光る言葉」と呼んでいます。その言葉を受けて強く反応するのか、無関心なのかはクライアントの判断です。それはコーチとクライアント双方にとって、これから関係を築いていける相手かどうかの見極めをする場面です。
このセッションで、クライアントが「このコーチなら信頼できる。これだけの料金を払う価値がある」と感じていただいたときには契約に進みます。
(2)定期コーチングセッション
ぼくは月に2回くらいの頻度で、1時間をめどにコーチとクライアントでコーチングセッションを6カ月間にわたって行います。毎回のセッションではその時々のテーマを持ち、そのテーマに関わるクライアントの課題や目標を引き出していきます。
例えばチームビルディングがテーマの回であれば「部下とどのような思いを共有したいか」「あなたも含めた全社員が幸せに感じられる職場はどんな職場か」といった質問です。
特定の事業がテーマの回であれば「その事業を通じて、何を成し遂げたいのか」「企業成長のために、本当にその事業をやるべきか否か」といった質問です。
この質問は、先に想定した「仮説」に基づいて行います。その回答を聴きながら、エグゼクティブコーチの方は、想定していた仮説に修正をかけていき、質問のレベルを上げて、よりクライアントの核心を突く質問を発するように努めます。
目標を明確にした後は、現状を確認し、目標に到るまでのプロセスや必要な行動を考えてもらいます。
話しただけで終わってしまわないように、次回のセッションまでに行う具体的なアクションを決めて、セッションを終了します。
セッションでは、クライアントが課題であると考えているテーマについて、エグゼクティブコーチとの対話を通して、深く考えを巡らせていきます。コーチは経営者や経営幹部が持っている内発的な想いが引き出されるよう、様々な角度から質問をしていきます。
このような関わりの中で、経営者は自らの置かれている現状を客観的に認識したり、自らが大事にしている価値観や目指したい方向性を改めて見つめ直したりすることで、テーマに関する答えを導き出していきます。
ぼくの場合は人間関係を中心にテーマを作ることが多いので、人の名前を記録しながら傾聴し、その関係の深堀りをすることで、クライアントに本人も気づいていなかったものの見方や思い込みに気づいてもらいます。
そんなことくらいでいいのかと思われるかもしれませんが、1時間の間をひたすら根掘り葉掘りそのことばかり聞かれた方は、これまでけっして体験したことのないくらい、そのことを深く考えます。
以上はぼくの基本的なやり方です。オンラインでの対話が多いですが、双方のタイミングが合えばホテルのラウンジ等でゆったりソファに隣同士、あるいは斜めに座ってひたすら対話を繰り返していくこともあります。
セッションの進め方はコーチによって異なります。ツールを駆使しながら数字をもとに対話を進めていく人もいるようです。
1回の単発でのコーチングセッションもありますし、3~12ヶ月程度の期間に渡り、継続したコーチングをする形もあります。
1回のセッションは60分〜90分間が多いようです。
2回目以降のセッションでは、クライアントは、前回のセッションで決まった行動の成果をコーチと共有します。
•何がうまくいったのか
•うまくいかなったことがあれば、何が障害になったか
•今回のアクションを通して、何が学べたか
などの多角的な質問を通して、クライアントは学びを深めていきます。
エグゼクティブコーチングの目的は「ビジネス上の成果をあげること」なので、毎回、客観的な指標を決めて成果を測ります。
経営者自身にセッションの目的とゴールを明確にして客観的な指標を取り決めて、次のセッションまでに実行してもらいます。
客観的な指標は、経営者に達成に向けた意欲を湧き起こさせるので、変化を確実にする力になります。
4 エグゼクティブコーチングと他の手法の違い
(1)コンサルティングは答えを与え、コーチングは答えを引き出す
コンサルティングは、クライアントの問題や課題の解決が目的です。
コンサルタントは現状を分析し、問題点や課題を見つけ、その解決に向けた最善の提案をします。
一方エグゼクティブ・コーチングは解決策を提供しません。経営戦略の立案や企業分析をクライアントの代わりにすることはありません。
エグゼクティブコーチングの目的は、クライアントの変革と成長です。場合によっては、コーチから経営判断をするうえでのアドバイスやヒントを出しますが、けっして提案はしません。
クライアント自身が問題解決に向き合い、解決できるようサポートするのがコーチの役割です。
コーチングは「人は無限の可能性がある」「答えは相手の中にある」という基本的な考え方に基づいて、相手の中にある可能性を最大限に引き出すためのサポートをしていきます。
コーチングの当面のゴールは目標達成や行動の結果にありますが、結果だけでなく、クライアントの成長をとても重視しています。
限られた時間のなかで課題を解決しなければならないといった場合には、コーチングという手法は適していません。問題解決の期限が押し迫っている状況では、期限を決めて具体的な成果を出すコンサルティングを選ぶことです。
ぼくのように、コンサルタントとエグゼクティブコーチングの両方を行う人もいます。状況に応じて使い分ければいいと思います。
(2)カウンセリングは治療のサポート、コーチングは成長のサポート
カウンセリングとは、その人の悩みや不安などネガティブな感情に寄り添い原因の解消を後押しする手法です。心身の回復に重きが置かれています。
答えを教えることはせず、答えにつながる要素や自分自身がすでに持っている答えに気付いてもらう点でコーチングと同じです。
コーチングとカウンセリングの最も大きな違いは支援の対象者が異なることです。
カウンセリングは、精神心理的な悩みを抱えた人を対象とした相談援助であり、治療的・予防的な処置に重点が置かれます。そのため、どちらというと現在の状態に至った原因や過去にさかのぼってアプローチしていきます。
一方コーチングは、相手の方の目標達成や能力発揮を支援し、将来どうありたいかを重視したアプローチをとります。
例えば、私たちの心の平常な状態をゼロとすると、過剰なストレスなどが原因でゼロの状態からマイナスの状態に陥ってしまうことがあります。そのマイナスの状態にある人をゼロにまで引き戻す役割を担う人がカウンセラーです。
それに対して、ゼロの状態からプラスの方向に自分を成長させて、将来の目標達成に向けて頑張っていこうとする人をサポートするのがコーチングです。
カウンセリングもコーチングも人の心を扱いますが、カウンセリングは治療のサポートですし、コーチングは成長のサポートが主眼です。
しかしコーチングとカウンセリングのスキルは共通する部分も多く、カウンセリングのスキルも多様で領域も広く、一概に言えませんが、イメージはこのようにとらえていただくとよいでしょう。
最近ではカウンセラーもコーチングに近い領域まで関わっている人もいますので、境界があいまいになっているのが現状です。
(3)メンタリングはbeingを、コーチングはdoingをサポートする
beingは「あり方や存在」です。
doingは「行いや行動」です。
メンタリングもコーチングも、対話により気づきや自発的な行動を促すようなコミュニケーションの方法を用いる点は共通です。
メンタリングのテーマは、仕事や人生など、その範囲は広く長期的です。メンターは、メンティに悩みの相談や心の整理などの助言や指導をしたり、自身がロールモデルになったりと、コーチングに比べると広い範囲をサポートします。
一方、エグゼクティブコーチングのテーマは、経営者や経営幹部としての成長ということなので、その範囲はメンタリングに比べるとやや限られます。
ぼくはメンタリングとコーチングを厳密に分ける必要はないと思います。現に優れたコーチほど、メンタリングの範囲まで踏み込みます。
5 エグゼクティブコーチングの思いがけない5つの効果
(1)経営者や経営幹部として成長をする
エグゼクティブコーチングの最大の目的は、本人が経営者や経営幹部として、さらなる成長を遂げることです。
経営者や経営幹部の成長とは、人格であったり、経営哲学であったりと、本源の部分の成長のことです。もともとクライアントの奥に眠っていたそれらの宝を本人が気づいて外に取りだすことです。そして経営の場で哲学を深め続ける生き方を選び取ることです。
(2)会社組織全体に良い影響を与える。
経営者や経営幹部はエグゼクティブコーチングを通して自分の凝り固まった考えや価値観に気づき、そこから離脱できると、部下のことも多様な視点から捉えられるようになります。
エグゼクティブコーチングを受けるクライアントとしての体験はそのまま自分にコーチングのスキルを身につける時間になります。
例えば「失敗ばかりする部下がいて手を焼いている」と考えていた経営者や経営幹部が「本人は陰で十分努力している。彼に時間を与えれば彼のチャレンジの成果はきっと出るはずだ」と気づけば、そうした部下にも期待をこめて温かく接することができるでしょう。
その結果、部下は萎縮せずに努力を続け、成長することができます。
エグゼクティブコーチングは部下の育成方法にも気づきをもたらすのです。
上司から部下への「問い」の質が変わると、部下たち自身の問いの質が上がっていきます。そうすると、さらにその下の部下への「問い」が変わっていきます。
部下との対話にもコーチングを活かせるようになり、コミュニケーションの質が向上します。その結果、社内の空気感が挑戦的になるなど、組織風土が変わっていくかもしれません。
(3)自問自答する時間を確保する
「走り続けなければ」「止まったら取り残される」と焦燥感を持つ経営者や経営幹部は少なくありません。
エグゼクティブコーチングは、そんな経営者や経営幹部にいったん立ち止まってじっくり考える時間を与えてくれます。
がむしゃらに突き進みながらも「このままで本当にいいのか?」という心の声に、しっかりと耳を傾けられる時間になります。
コーチはその企業の経営の当事者ではない立場をだからこそ、霧の中を走り続ける経営者や経営幹部本人が気づきにくい、その先の景色が見られる適切な「問い」を投げかけられます。自分にはない観点からの質問や気づき、新しい可能性を示してくれます。
(4)相談者を得る
経営者や経営幹部は毎日のように重要な決断を迫られています。
そのプレッシャーは非常に重いものですが、立場上相談できる相手がいないことも多いです。
しかし相談できないからといって、過去の成功体験のみで企業経営するのはあまりにも危険です。
常に自分をバージョンアップさせるためには、自らを振り返ること、また問いを立ててくれる存在や、時に忖度なく意見やアドバイスをくれる伴走者は不可欠です。
その点、利害関係のないコーチは客観的な立場にいます。遠慮のないフィードバックをくれるエグゼクティブコーチはかけがえのない相談者となります。
(5)エグゼクティブの精神が安定する
経営者という存在は、しばしば孤独感や不安感を伴います。立場上、職場の人間や社外の人間に容易に弱音を吐くことはできません。最終的な決断権は自分1人にあるため、結果の責任も全て最後は自分が取ることになります。そのため経営者や経営幹部は強い孤独感や不安感にさいなまれてしまうことがあります。
このような状況において、コーチの存在は強い安定感をもたらします。コーチには守秘義務があり、コーチングの対話において話した内容は一切外部に漏れることがありません。
単に相談相手ができること以外にも、経営層の精神が安定する理由があります。それは、経営者や経営幹部自身の今までは見えていなかった価値観や本心・ビジョンが明確になるからです。
価値観が明確になると行動に迷いがなくなり、精神が安定します。さらに、明確になった価値観は意思決定における悩みもなくすことができ、結果判断力が高まることにもつながります。
6 エグゼクティブコーチングはこんな方にお勧めします
(1)一定の経験・知識・スキルを持っているエグゼクティブ
コーチングは、すでに相手の中にある答えや考えを引き出すものです。一定の経験や知識やスキルを持っているのであれば、自分の経験などの中から課題・対応策を自ら引き出すことができます。
逆に、一定の経験・知識・スキルのない人が自分の中から答えを引き出すのは難しいです。
(2)何か解決したいことのあるエグゼクティブ
コーチングは、「何か解決したいことがある、何か挑戦したいことがある」と考えている人に有効とされています。コーチングにより、これまで自分が縛られていたものとは異なる、新しい視点に気づけます。このことでこれまでよりも広い視点で物事を見たり取り組めるようになるため、将来的な展望についてもこれまで以上に広く考えられるようになります。
そもそも目標を達成するという意欲の無い場合、コーチングの効果は望めません。そうしたタイプの人は「コーチがなんとかしてくれる」と考えてしまいがちで、コーチングによる問いを投げかけても、自分で答えを見つけ出そうとしないといったパターンに陥りがちです。
もちろんコーチングによってチャレンジングな気持ちへの変化を引き出せればよいのですが、ある程度コーチングを行ってもかたくなにそのままという場合もあります。
トライアルセッションでは、エグゼクティブコーチの側で事前にクライアントの性格、とりわけ他人への依存心の強い人間かどうかを見て、エグゼクティブコーチングに向かない旨を伝えてお断りすることがあります。
成果効果をあげられなければコーチの側もクライアントの側も双方が不幸になるからです。
(3)新任の役員や事業承継を受けた人
新任の役員や事業承継を受けた人というのは、当然、実力があってそこまで上がってくるわけですが、一方で未体験ゾーンに突入するわけです。そこでつまずくのか、最初からある程度うまくいくのかによって、その人自身だけでなく、その会社の将来が変わります。
エグゼクティブコーチングにより、新任の役員や事業承継を受けた人は経営能力を更に高めることができます。ぼくは断言できますが、経営者としての能力は経営者になってからしか身につきません。経営能力を高めるためには、トライアンドエラーを重ねたり、煮え切らず逡巡している自分に気づくことが重要ですが、そのような姿は社内の人には見せられない・・・
そのような時に有効なのが、エグゼクティブコーチングです。
新任の役員や事業承継を受けた人にコーチをつけてサポートをするというのは非常に効果が高いと思います。その場合、タイミングとしては最初からがいいと思います。日本の組織だと「遅れてつける」ということがありがちですが、一度つまずいてしまうと、結局リカバリーに時間がかかりますし、すでに周りの信用を失っているかもしれません。だから最初からつけたほうがいいです。そのほうが、その人も早く成長できます。
7 エグゼクティブコーチングの料金とシステム
エグゼクティブコーチングの料金はコーチによって異なりますが、1回のセッションあたり5万円~20万円、もしくはそれ以上と料金幅があります。契約期間は半年間、あるいは1年間にわたります。
僕の場合は1ヵ月100,000円(1回50,000円)、6ヶ月で600,000円いただいています。1回60分で月に2回のセッションです。この金額は経営コンサルタントと同じように、その前後の準備時間の工数を総計して算出しました。
経営コンサルもエグゼクティブコーチングもクライアントと対面する短い時間のかげでかなりの量の準備工数を使っています。特にぼくはクライアントの業界や経営環境などを事前に精密調査して当日はキラリと光る質問をしたいので、ほかのエグゼクティブコーチングの人より準備時間がかかります。
ぼくもはじめは「エグゼクティブコーチングの1時間5万円は高いんじゃないの」と思っていました。でも実際にコーチとしてエグゼクティブコーチングをやってみると、1時間のセッションが終わった時には、8時間ぶっ通しでコンサルをやった時と同じくらいの疲労感でした。そのとき、エグゼクティブコーチングの皆さんがおおむね1時間5万円の料金をうたっているのはそれなりの理由があるのかと知りました。
ぼくのエグゼクティブコーチングではお互いに必要と認めたときには回数を増やしたり時間を延長したりできます。そうするのはとても簡単なことですが、後に述べる理由があって、極力そのようなことはしないようにしています。
クライアントの満足度がエグゼクティブコーチングの継続の判断基準ですので例えば1回5万円でそれに見合った価値の提供ができているのなら、すなわち本人や事業へのインパクトがそれ以上あるのなら、当初の予定期間が終わってもコーチングは継続します。
逆にそれほど効果がなければ契約は予定期間の途中で即終了となり、残金は全額返金となります。信頼関係のないところにエグゼクティブコーチングはないからです。
長期に渡ってコーチがコーチングを提供しているとすると、それはエグゼクティブコーチングが料金以上の貢献を経営者や経営幹部にもたらしているということです。エグゼクティブコーチングが経営者や経営幹部の意思決定に影響力を持ち、何かしら事業の価値につながっている証拠といえます。
一方、料金が極端に安い場合には、コーチにエグゼクティブコーチングに関する知識やスキルが伴っていない可能性があります。安くても成果がでなければ意味がないことは言うまでもありません。
大事なことを付け加えておきます。
契約書は、クライアントの側からいつでも打ち切れるものであるかどうかを確認してください。
一度セッションを受けてみて、「このコーチ、経営の現場を知らないな。確固たる経営哲学もってないな」「自分と気が合わないな」と感じたら、即刻解約して残りのセッション分を全額返還してもらうことです。
コーチの側も信頼関係の切れた相手にはもうコーチングは続けられませんから、こだわりなく了承します。
「期間契約なので途中解約の場合は残金は返還しない」という契約書を示すエグゼクティブコーチングなら、そういう人や会社には最初から近づかないようにしましょう。
8 エグゼクティブコーチング側は経営者というものを知っているか、ビジネスに明るいか
エグゼクティブコーチングで扱うテーマは、経営に関するものに焦点が絞られることが多いです。緊急ではないけれどとても重要な経営テーマが扱われます。例えば、下記のようなテーマです。
・パーパス、ミッション、ビジョンとその浸透
・経営陣の間の人間関係
・経営戦略の立案や選択
・ECサイト運営の課題
・サスティナビリティ経営の方針
・イノベーションの促進
・生産性の向上
・組織風土の改善
・人事制度の課題
・次世代リーダー、管理職・マネジャーの育成
・苦手タイプとのメンバーのマネジメント
・チームビルディング
エグゼクティブコーチングは最終的にはこのような実務的な課題の解決にまでたどりついてはじめてその効果があったと評価される取り組みです。
しかしエグゼクティブコーチングの世界では、経営者や経営幹部に刺激を与えただけに終わり、そのあとの経営改革に活かせていないという事態が往々にして起こっているようです。
これはコーチングをすること自体が目的となってしまっていて、エグゼクティブコーチングする側にその先のビジネス課題の解決に向けた道筋が描けていなかったために適切なコーチングができていなかったことが原因です。
エグゼクティブコーチングの場では、もっぱら経営現場の話が主になります。そのときにエグゼクティブコーチの側がクライアントの話を聞くだけで経営現場の様子が目の前にリアルに浮かんでこなければ、的確な次の質問が生み出せません。
というわけで、
エグゼクティブコーチングの力を見極めるポイントの一つは、コーチの経歴、経験、実績、経営知識です。
コーチ自身の経歴・職歴、知見や経験に基づいた「問い」がクライアントに響きます。
自分と同業界・職種の経験を求める必要はありません。
ただ、過去の経験はこの変化のはげしい現代ではすぐに時代遅れになります。日々、他の経営者と高いレベルで議論している現役の人であることが望まれます。
それと、過去の成功体験はこれからの激動するビジネス界ではじゃまになるだけのことも多いと考えています。できれば打ちのめされた失敗経験の歴史があるとなおよいかとぼくは思います。
痛みを知っていると人に優しくなれますから。経営者は誰よりやさしくなければなりません。強くて優しいこと。経営者はたいへんです。
9 エグゼクティブコーチングの実務経験は豊富か
わが国ではエグゼクティブコーチングはあまり普及していません。それにはほんものの、実力のあるエグゼクティブコーチがとても少ないのが理由ではないでしょうか。
すべての経営者がエグゼクティブコーチになれるわけではありません。しっかりとコーチングスキルやカウンセリング技法を学び、それを多くの実践によって磨きをかけてきたコーチであるかどうかが大事です。エグゼクティブコーチングのコーチにはこれまでのコーチング実務経験をぜひ尋ねてみてください。
10 エグゼクティブコーチングのコーチと相性が合うか
これはとてもとても重要なポイントです。
どんなにエグゼクティブコーチングに実績のあるコーチであっても、自分との相性が悪ければつらいです。相性の悪いコーチと対話を続けることはたとえ得られるものがあったとしても苦痛です。
例えば、クライアントは「人生はすべての瞬間を楽しむもの」と考えているのに、エグゼクティブコーチングのコーチが「人生を楽しむのは仕事をがまんして苦労した後だ」という考え方であれば、話がかみ合うはずもありません。エグゼクティブコーチングに限らずコーチングはコーチの意見を押し付けることはありませんが、質問のはしばしにコーチの価値観やものの見方が入り込むのは避けられません。
セッションの時間が待ち遠しくてたまらないという風にならなければ高額な料金を払うかいがありません。
相性の悪いコーチを選んでしまったと分かったら即刻解約しましょう。
11 エグゼクティブコーチングからの料金とシステムの説明に納得できるか
ここまで、エグゼクティブコーチングをみきわめるポイントを説明してきました。
各ポイントをよく考えてみた上で、検討しているエグゼクティブコーチングの料金とシステムの説明にあなたが納得できるかどうかです。
トライアルセッションの際に、エグゼクティブコーチにどうしてこの料金なのか、どうしてこのシステムなのかを直接尋ねてみてください。そこに相手のエグゼクティブコーチングの決意表明は感じられますか?あなたへの熱いメッセージを受け止められましたか?
また、途中解約の際は残金を全額無条件に返済するかどうかを確認してみてください。
コーチングが終わり次第元に戻ってしまうこともありえるので、コーチングで生じた変化を定着するまでサポートしてくれるかどうかを尋ねてください。
ぼくの場合は、無料でアフターセッションを行っています。クライアントとの関係は永遠だと考えています。
ところで実は多くのエグゼクティブコーチングは、料金が安いと効果が出ないと考えています。ぼくもそう考えています。
料金が安かったり、ましてや無料だと、クライアントは、本気になってくれません。同じことを伝えても、高い料金を払っているクライアントは元を取り戻すために必死でその言葉を聞いてくれますが、安い料金のクライアントは本気で聞いてくれません。
これはぼくが長年やってきた経営コンサルタントの世界でもまったく同じことでした。
コーチングとは、コーチから何かを教えてもらう訳ではありません。
コーチからの質問をきっかけにして自分自身と深く向き合い、思考して自分で答えを見つけていくプロセスがコーチングです。
特にエグゼクティブコーチングでの現場にはたまらない緊張感が必要です。クライアントに「大金を払っているんだ」という痛みがないと、セッションでの真剣みや集中力が欠けてしまい、クライアント自身でコーチングの効果を台無しにしてしまいます。
逆に高額を払っているときには、クライアントは目の色を変えて、ぼくの一言一句を聴きもらさないように集中してくれます。コーチのひとつひとつの問いかけを、これまでの人生で使ったことがないくらい頭をフル回転させて意味を汲み取ろうとします。自分を振り返ろうとします。この緊張たるや、体験した者にしか分かりません。これがエグゼクティブコーチングの醍醐味です。
だからぼくもそうですが、多くのエグゼクティブコーチが「ちょっときついかも、くらいの料金設定が成果が出る」と考えています。
ぼくは1ヵ月100,000円で、6ヶ月間600,000円いただいています。1回60分で月に2回のセッションですから12回で600,000円です。
お互いに必要と認めたときには回数を増やしたり時間を延長したりできます。そうするのはとても簡単なのですが、極力変更のないように努力しています。
それはこの限られた、2週間にたった1回の60分間の3600秒間に、クライアントのすべての神経と頭脳を集中してもらうためです。緊張してもらうためです。
「またの機会に考えよう、また別の機会があるさ」ということではそれがかないません。
セッションが終わった時にふらふらになっているくらいで、ようやくクライアントは自分でフタをしてきた奥にしまい込んできた感情や価値観に自ら気づいてショックを受けます。新しい自分の始まりです。
もう一度繰りかえします。
エグゼクティブコーチングの料金設定とシステムは、エグゼクティブコーチング側の決意表明ですし、クライアントへのメッセージです。
12 あなたにぴったりのエグゼクティブコーチング選びを
「確信はないけど、もしかしたらいいかも」とやや納得できたなら、試しに一回、そのエグゼクティブコーチングを受けてみることをお勧めします。
もちろん、途中解約完全自由で残金全額返金の契約をしてくれる先に限ります。
もしかしたらすばらしい人生の宝を手に入れるチャンスかもしれません。
一度のセッションでいいか悪いか分かります。だめなら1回分の5万円(かな?)をムダにしますが、世の中のさまざまな勉強代からするとそんなに莫大な損失でもないんじゃないでしょうか。質のいい賭けだと思います。
エグゼクティブコーチングの相場とエグゼクティブコーチングの見極めポイントをしっかりと押さえて、あなたにぴったりのエグゼクティブコーチングに出会えることを、そしてあなたの経営者としてのいっそうの成長を、お祈りしています。
こんなに長い記事を最後まで読んでいただきありがとうございました。