祖父の背中と、霊脈の記憶

祖父の背中と、霊脈の記憶

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物心がついた頃から、私の祖父は少し変わった人でございました。

白山修験の流れを汲む行者であった祖父は、
季節の変わり目になると白い装束を身にまとい、
夜明け前に家を出ていきました。

どこへ行くのかを尋ねると、
「山に挨拶をしに行く」と、それだけ答えました。

幼い私には意味がわかりませんでしたが、
帰ってきた祖父の顔が、いつもより静かに澄んでいることは、
なんとなく感じ取っておりました。

私が最初にあの社へ詣でたのは、
五歳か六歳の頃だったと記憶しております。

祖父の手を握り、長い参道を歩きながら、
何か大きなものに包まれるような感覚を覚えました。
風ではなく、空気そのものが違う。光の質が違う。
子どもながらに、そのことだけははっきりとわかりました。

「ここは縁が生まれる場所だ。
人と人がつながる糸が、この地の下を流れている」

祖父がそう言ったとき、私は境内の石畳を見下ろしました。もちろん、糸など見えるはずもありませんでした。けれど不思議なことに、その言葉は子どもの私の中に、ごく自然に入ってきました。嘘だとも、不思議だとも思わなかったのでございます。

祖父はやがて、白山の霊脈のことを少しずつ話してくれるようになりました。山から流れ出す霊的な氣の筋道のことを、祖父は「霊脈」と呼んでいました。その氣の流れが、あの社に鎮まる御方——古来より「縁をくくる神」として崇められる御方——の御力と交わることで、人と人の縁を生み出すのだと。

私がこの地に生まれ、修験の血を受け継いだことは、偶然ではなかったのだと今は思っております。幼い頃に祖父の背中を追いかけながら参道を歩いた記憶、社の空気の中で感じた不思議な安心感——それらはすべて、今の私がお届けしている霊脈霊視の根底に流れているものでございます。

祖父は九十歳を超えた晩年まで、毎月欠かさず社へ詣でておりました。最後に二人で詣でたとき、祖父は長い参道をひとりでゆっくりと歩き、本殿の前で目を閉じ、ただ静かに手を合わせておりました。その後ろ姿を、私は今も時折思い出します。

縁の根源を視て、整える。
それは私にとって、祖父から受け継いだ唯一の仕事でございます。

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