《家族〜亡き父の人生テーマ》

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コラム
父はすぐ不機嫌になる人だった。家族からすれば些細なことですぐに怒り、子ども時代の私は、いつも暗い気持ちにおそわ
茶の間に家族がそろっている時、父が何かで不機嫌になる兆候を見せる。すると、もともと情緒的に不安定になりやすい姉が、パニックになって怒り出す。
それに対していよいよ父が怒りだす。母は姉を叱り、姉は泣きながらさらに怒る。
父が捨て台詞を言って隣の部屋の戸をピシャっと閉めて姿を消す。
しばらくは、母と姉の不毛なやりとりが続き、姉が静かになるまで、平静は戻らない。
こんな自分は不幸だなぁ、と思っていた。改めて思い出せば、子どもなりに楽しいこともたくさんあったのだが、心の奥深いところで、家庭が暗く、不幸だ、というトーンは染み付いていた。
社会人になって家を離れた私は、ようやく父の不機嫌の影響を受けなくなった。そして孫を可愛がってくれる父の姿にも接して、不幸な生い立ちを持つ父親をだんだんに受容していった。が、母と残ったきょうだいは、相変わらず父の不機嫌に振り回される日々を重ねていった。
父は70を過ぎて、入退院の繰り返しの末に亡くなった。そして後から母に『お父さん最期に『家族っていいもんだな』と言ったと思うんだよね』と聞いたのだった。
『よく聞き取れなかったけど、たぶんそう言ったと思うんだよね』。
生前、父は母によく『もうこんな家、出ていってやる!』と言っていたそうだ。
そんな父の最後の言葉が『家族っていいもんだな』だったのか。
父は怒り散らし、捨てゼリフを吐いても自分を見捨てない家族がいることを 何度も何度も無意識に確認していたのかもしれない。
父の人生のテーマが『家族』だったとしたら、人生ゲームのゴールは見事にクリアして逝ったのだ。
確かに柩の中の父は、それは穏やかな幸せそうな顔だった。

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