※本記事は,令和2年9月10日に作成したものです。
第0 はじめに(ざっくりとした感想)
出題形式は例年どおりで,「課題」を合計5つ検討させるという問題です。
毎年そうなのですが,「あ~,なるほど…。」という絶妙に考えたことがないことを聞いてくるという感じで,基本的な理解から論理的に丁寧な検討を示すことが重要だと感じました。
冒頭に配点割合が示され,設問1と設問3の配点が多いですが,いずれも課題が2つ示されているので,実質的には課題1つにつき配点20と考えて良いと思います。
誘導は長くはないですが,検討する上でとても重要な示唆がされているように感じました。
誘導を1文1文しっかり読みながら,検討するべき事項を適切に分析することが重要だと思います。
第1 設問1
設問1は,「あなたが司法修習生Pであるとして,Lから与えられた課題1及び課題2について答えなさい。」というものです。
1 課題1
課題1は,2回目のLの発言から,「ここでは,Y2の法定相続分が2分の1であることを考慮し,60万円のみの請求をすることとして,「Xは,Yらから本件建物の明渡しを受けたときは,Y2に対し,60万円を支払え。」の請求の趣旨による将来給付の訴えの適法性につき検討してもらいましょう。これを「課題1」とします。」とありますので,これが課題1になります。
続けて,「検討の際には,本件の具体的状況を踏まえた上で,敷金返還請求権の特質のほか,当事者間の衡平の観点から,適法性が認められた場合の被告の負担を考慮する必要があります。ただし,応訴の負担は考慮する必要がありません。」とありますので,これらの点に配慮する必要があります。
簡潔にまとめると,
【課題1】
前記のような請求の趣旨による将来給付の訴えの適法性
【示唆】
・ 本件の具体的状況を踏まえた上で
・ 敷金返還請求権の特質のほか
・ 当事者間の衡平の観点から,適法性が認められた場合の被告の負担を考慮する(応訴の負担を除く。)
ということになります。
将来給付の訴えは,正直若干マイナーな分野だと思いますので,いきなり苦手な印象を受けるかもしれません(本人談)。
ほかの設問を読む限り,ここであまり時間を使うのは避けたいところですので,採点者に悪い印象を与えない程度にかわしたいところです。
以下,敷金返還請求権と将来給付の訴えという問題について,あまり理解していなかった僕が何となく考えたことを書きます(長くなります)。
将来給付の訴えについては,135条が「将来の給付を求める訴えは、あらかじめその請求をする必要がある場合に限り、提起することができる。」と定めているため,「あらかじめその請求をする必要がある場合」に適法性が認められることになります。
一般的に,これは将来給付の訴えの利益の問題と捉えられていると思われます。
そこで,「あらかじめその請求をする必要がある場合」とは,どのような場合をいうのかということを述べたうえで,これを本件に当てはめることになります(後から気づきましたが,将来の不法行為に基づく損害賠償請求に関して判例がありますね…。)。
法律要件に直接当てはめても悪いわけではないのですが,何かしらの検討の視点というか,判断の目安となるものを提示したいところです。
将来給付の訴えの利益というのがどうして問題になるかを考えてみると,それは,基準時(口頭弁論終結時)において履行期にないことから,判決による紛争解決に必ずしも適さない場合があるからではないかと想像することができます。
基準時において履行期にある権利は,これが認容され,被告による任意の履行がないときは,強制執行によってその内容を強制的に実現することが法律上は可能になります。
これに対し,基準時において履行期にない権利(発生していない権利を含む。)は,仮に,その存在及び内容を確定することができたとしても,履行期まで被告は履行する必要がないので,将来給付を内容とする判決があっても,強制執行段階において改めて履行期の到来を確認する必要があることになり,まさしく「あらかじめ」判決を得ておく(特別な)必要性がない限り,当該紛争を判決によって解決することに適さないということができます。
あるいは,誘導において示唆されている①本件の具体的状況,②敷金返還請求権の特質,③当事者間の衡平の観点などを考えてみましょう。
PとLの会話をみると,「将来給付の訴えが不適法とされる場合に備え…」とされていることから,結論としては将来給付の訴えの利益がないことになる可能性が大きいことが読み取れます。
そこで,本件の将来給付の訴えが不適法であるという結論に至ることを前提に上記①から③について考えてみます。
まず,①本件の具体的状況については,正直,いかようにも考えることができます。これは,具体的な当てはめを検討せよという趣旨だと考えて良いかもしれません。
次に,②敷金返還請求権の特質について考えてみると,これは,誘導にもその前提理解が示されているように,「敷金返還請求権は,賃貸借終了後,不動産が明け渡されたときに,敷金によって担保されるそれまでに生じた一切の債務の額を控除した残額につき発生するもの」とされます。
すなわち,敷金返還請求権は,目的物が明け渡されたときに,一切の債務の額を控除した残額を内容として発生し,かつ,履行期を迎える権利であるということになります。
そうすると,理論的には,敷金返還請求権は,目的物の明渡し前においては,その金額のみならず,発生するかどうかさえ確定しないものだということになります。
ここまで考えると,敷金返還請求権を将来給付の訴えをもって請求し,仮にその請求を認容する本案判決がなされたとしても,強制執行の段階において,最終的な発生の有無及びその内容を改めて検討するほかなく,結局,将来給付の訴えをもって紛争解決をしようとすることは,一般論としては,ほとんど意味のないことになります。
最後に,③当事者間の衡平の観点から,適法性が認められた場合の被告の負担を考慮するという点について考えてみます。
将来給付の訴えの適法性という観点からすると,前記のとおり,敷金返還請求権が,目的物が明け渡されたときに,一切の債務の額を控除した残額を内容として発生する権利であることを踏まえると,基準時における敷金返還請求権の金額を確定することができたとしても,基準時から明渡し時までの間にその額が減少する可能性は大いにあることになります。
そのため,被告が,基準時後に生じた減額事由を主張して,強制執行を阻止するためには,被告が請求異議の訴え(民事執行法35条1項)を提起しなければならないことになり,これでは被告に対する負担があまりにも大きいように思われます。
このように考えると,将来給付の訴えとして敷金返還請求の訴えを認める必要があるとはいえないと思われますので,「あらかじめその請求をする必要がある場合」には該当しないということができます。
したがって,Lが提示する請求の趣旨による将来給付の訴えは不適法だということができます。
2 課題2
課題2は,Lの3回目の発言に,「良い機会ですから,将来給付の訴えが不適法とされる場合に備え,敷金に関する確認の訴えの利益についても考えましょう。Y2の立場から,どのような訴えであれば確認の利益が認められるかを検討してください。その際には,既判力により確定する必要性を考慮して,なぜその訴えであれば確認の利益が認められるのかについて説明してください。これを「課題2」とします。」とありますので,これが「課題2」になります。
【課題】
敷金に関する確認の訴えに関し,どのような訴えであれば確認の利益が認められるか。
【説明する必要があること】
既判力により確定する必要性を考慮して,なぜその訴えであれば確認の利益が認められるのか。
確認の利益は,①対象選択の適切性,②方法選択の適切性,③即時確定の利益が肯定される場合に認められると解するのが一般的です。
「どのような訴えであれば確認の利益が認められるか」という課題ですので,上記のような3つの要件を念頭に置いたうえで,具体的な請求の趣旨を設定する必要があるように思われます。
ここでは,「原告が,被告に対し,敷金契約に基づく60万円の敷金返還請求権を有することを確認する」と設定します。
⑴ 対象選択の適切性
①対象選択の適切性とは,確認対象(訴訟物)の選択が適切であることを意味し,原則として,自己の現在の権利・法律関係に関する積極的確認である場合に認められると解されています。
Pの1回目の発言にあるように,目的物の明渡し前における敷金返還請求権は,「本件建物の明渡しを条件とする条件付請求権」という意味で,現在の権利であるということができますので,これは,自己の現在の権利の積極的確認を求めるものといえ,対象選択の適切性を認めることができると思われます(後記最判平成11年1月21日参照)。
⑵ 方法選択の適切性
②方法選択の適切性は,当該確認の訴えによるほか適切な方法がないといえる場合に認められると解されます。
敷金返還請求権は,課題1で検討したとおり,給付の訴えによることができないため,上記のような確認の訴えによるほか適切な方法はないと思われ,方法選択の適切性を認めることができると思われます。
⑶ 即時確定の利益
③即時確定の利益は,原告の法的地位に現に危険ないし不安が生じている場合に認められると解されます。
ここで,「既判力により確定する必要性を考慮して,なぜその訴えであれば確認の利益が認められるのか」について説明すると良いと思います。
上記のような確認の訴えの既判力は,基準時における敷金返還請求権の存在及びその金額を当事者間で確定するものとして生じると思われ,それによって,敷金返還請求権の存否及び上限金額を確定し,後から敷金返還請求権の存否を争ったり,前記金額を超える敷金返還請求権の存在を主張したりすることを許さないという点で,当該紛争の解決に適切であると思われます。
そうすると,被告が敷金の交付(敷金契約の存在)自体を争う場合には,原告の法的地位に現に危険ないし不安が生じているということができるので,即時確定の利益を認めることができると思われます。
判例は,「建物賃貸借における敷金返還請求権は、賃貸借終了後、建物明渡しがされた時において、それまでに生じた敷金の被担保債権一切を控除しなお残額があることを条件として、その残額につき発生するものであって(最高裁昭和四六年(オ)第三五七号同四八年二月二日第二小法廷判決・民集二七巻一号八〇頁)、賃貸借契約終了前においても、このような条件付きの権利として存在するものということができるところ、本件の確認の対象は、このような条件付きの権利であると解されるから、現在の権利又は法律関係であるということができ、確認の対象としての適格に欠けるところはないというべきである。また、本件では、上告人は、被上告人の主張する敷金交付の事実を争って、敷金の返還義務を負わないと主張しているのであるから、被上告人・上告人間で右のような条件付きの権利の存否を確定すれば、被上告人の法律上の地位に現に生じている不安ないし危険は除去されるといえるのであって、本件訴えには即時確定の利益があるということができる。」(最判平成11年1月21日民集53巻1号1頁)として,目的物の明渡し前における敷金返還請求権の確認の訴えの利益を肯定しています。
したがって,Xが敷金の交付自体を争っている本件においては,確定の利益が認められと思われます。
第2 設問2
設問2は,「あなたが司法修習生Qであるとして,Jから与えられた課題について答えなさい。」というもので,直前のJの発言には,「まず,民事訴訟法においては,裁判所は何を心証形成の資料とすることができるとされているのかを示した上で,和解期日におけるY2の発言がそれに当たらないことを説明してください。また,和解手続における当事者の発言内容を心証形成の資料とすることができるとすると,どのような問題が生ずるかについて,理由を示して検討してください。これらを「課題」とします。」とあるので,これが課題となります。
一応分析すると,
① 民事訴訟法においては,裁判所は何を心証形成の資料とすることができるとされているのかを示し,
② 和解期日におけるY2の発言がそれに当たらないことを説明する。
③ 和解手続における当事者の発言内容を心証形成の資料とすることができるとすると,どのような問題が生ずるか(理由を含む。)。
となります。
①を論じたうえで②を説明するように論じるのが法的三段論法の実質だと思いますので,それを理解したうえで,誘導に忠実に論じるのが重要だと思います。
③は,実質的には①の理由付けに該当するものですので,①を論じる中で触れても良いと思いますが,誘導ではその点について特に指定はないので,③を別個に論じても良いと思います。
1 ①心証形成の資料
247条は,「裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。」と定めています。
そのため,裁判官(裁判所)が心証形成の資料とすることができるのは「口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果」ということになります。
「証拠調べ」は,民訴法上,証人尋問,当事者尋問,鑑定,書証,検証が定められています。
また,「口頭弁論」とは,148条以下に定められている審理方法を指し,口頭弁論以外の審理方法(という表現が正確かはわかりませんが),具体的には,弁論準備手続や和解を含みません。
弁論準備手続の結果は,口頭弁論において陳述(173条)されることで「口頭弁論の全趣旨」として心証形成の資料になり得るにとどまります。
これに対し,(裁判上の)和解は,民訴法が判決によらない訴訟の終了方法の1つとして和解を想定していることから(267条等),裁判所を交えた和解を試みる機会として和解期日が設けられることはあっても,和解が非公開で行われること等からして,「口頭弁論」には含まれません(あまり良い論じ方ではありませんが,和解期日における当事者の発言を心証形成の資料とすることができない理由が実質的な問いなので,その点を意識しながら論じるのが良いと思います。)。
2 ②和解期日における発言
和解期日における発言は,「口頭弁論」におけるものでもないうえ,弁論準備手続と異なり,それが口頭弁論に陳述されることは予定されておらず,また,上記5つの証拠方法のいずれにも該当しないことから,「口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果」に該当しません。
そのため,和解期日における当事者の発言は,裁判所が心証形成の資料とすることができる資料に含まれないことになります。
3 ③和解手続における当事者の発言内容を心証形成の資料とすることの問題点
③は,和解期日と口頭弁論期日(実質的な和解期日でない弁論準備手続を含む。)の違いを理解しているかを問うものだと思われます(結構実務的な問題だと感じます…。)。
口頭弁論は,攻撃防御方法の提出の機会が平等に認められるという双方審尋主義が採用されていると解されます。
これに対し,和解手続は,その実施方法について特に定めがあるわけではないのですが,互譲して紛争の解決を目指すという和解の本質や,裁判上の和解が判決によらない訴訟の終了方法の1つであることなどからすれば,和解期日においては,当事者は,本音(当事者が想定している実質的な妥協点)と建前(請求の趣旨に掲げている請求)を柔軟に示しながら,早期かつ妥当な紛争解決を目指すがあることが想定されているというべきです。
そのため,和解期日は,基本的には,裁判官が当事者から個別に事情を聞いて行うことが予定されていると考えられます。
そうすると,各当事者の発言は,他方当事者に直接的・全面的に伝えられることはなく,裁判官から間接的・個別的に伝えられる可能性があるにとどまります。
そのため,和解手続における当事者の発言内容を心証形成の資料とすることができるとすると,当事者の発言に対し他方当事者が防御方法の提出(反対の立証活動)をする機会が保障されず,口頭弁論における原則の1つである双方審尋主義の趣旨に反するという問題が生じます。
第3 設問3
設問3は,例によって,「あなたが司法修習生Rであるとして,Jから与えられた課題1及び課題2について答えなさい。」というもので,裁判官Jと司法修習生Rとの間の会話に,「XはY2に対する訴えのみを取り下げることができるのでしょうか。」,「それを考えるに当たっては,まず,本件訴訟が共同訴訟のどの類型に当たるのかを考慮する必要があります。」,「そうですね。それでは,その結果を踏まえて,XはY2に対する訴えのみを取り下げることができるのかを検討してください。これを「課題1」とします。また,仮にXがY2に対する訴えのみを取り下げることができるとして,残されたXとY1のみの訴訟において本案判決がされる場合に,第2回口頭弁論期日にY2が提出した本件日誌の取調べの結果を事実認定に用いてよいかを,共同訴訟における証拠調べの効果及びそれが訴えの取下げによって影響を受けるかどうかを踏まえて検討してください。これを「課題2」とします。」とありますので,これらがそれぞれ課題1及び課題2となります。
1 課題1
課題1は,要するに,本件訴訟が共同訴訟のどの類型に当たるのかを考慮したうえで,XはY2に対する訴えのみを取り下げることができるのかを検討することとなります。
⑴ 本件訴訟が共同訴訟のどの類型に当たるか
共同訴訟には,通常共同訴訟(38条)と必要的共同訴訟(40条)があり,必要的共同訴訟には,固有必要的共同訴訟と類似必要的共同訴訟があると解されています。
この手の問題は,訴訟形態としての適法性の問題,すなわち,通常共同訴訟か固有必要的共同訴訟かという分析が問題となることがほとんどなのですが,本件のように共同訴訟として提起された訴えにおける訴えの取下げの適法性が問われる場合には,仮に固有必要的共同訴訟でないとしても,類似必要的共同訴訟に該当するかどうかを検討する必要があります。
ア 固有必要的共同訴訟の該当性
まず,本件訴訟が固有必要的共同訴訟かどうかを検討します。
固有必要的共同訴訟とは,「訴訟の目的が共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合」のうち,共同訴訟人となるべき者全員が原告又は被告とならなければ当事者適格が認められないもの(訴訟共同の必要があるもの)をいいます。
固有必要的共同訴訟かどうかの判断は,当事者適格の問題であることから,特定の訴訟物に関する管理処分権(これと対になる義務を含む。)がどのように帰属するかという点を踏まえ,必要に応じて,適切な紛争解決をするためには誰を当事者とすべきかという観点(訴訟法的観点)を考慮して判断されるものと解されます。
本件訴訟の訴訟物は,賃貸借契約終了に基づく目的物返還請求権としての建物明渡請求権です。各賃借人は,個別に,賃貸人に対し,目的物返還義務の全部を負い,賃貸人は,賃借人の一部に対し,目的物全部の返還を請求することができると解されます。
そのため,上記訴訟物に関する管理処分権は,賃貸人が各賃借人に対して個別に有するものということができます。
また,このように,実体法上,各賃借人が目的物返還義務の全部を負い,賃貸人は,賃借人の一部に対し,目的物全部の返還を請求することができることから,賃借人が複数いる場合においても,適切な紛争解決をするために賃借人全員を共同して被告とすべきということもできないと思われます(ここまで論じる必要はないかもしれない。)。
したがって,本件訴訟は,共同訴訟人となるべき者全員が被告とならなければ当事者適格が認められない固有必要的共同訴訟には該当しません。
イ 類似必要的共同訴訟の該当性
次に,(念のため)本件訴訟が類似必要的共同訴訟に該当するかどうかを検討します。
類似必要的共同訴訟とは,2人以上の者を共同して原告又は被告としなければ当事者適格が認められない訴訟ではないものの,一度共同訴訟として提起された場合には,「訴訟の目的が共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合」として,40条の適用を受ける訴訟類型を指します。
類似必要的共同訴訟とされるのは,法律上判決効が拡張されることから,判決相互の矛盾を回避する法律上の必要性が認められるからです。
そのため,類似必要的共同訴訟に該当するかどうかは,共同訴訟人とされた者相互に対し判決効の拡張がされるかどうかによって判断します。
本件訴訟の訴訟物は前記のとおりですが,複数の賃借人はそれぞれ115条1項2号以下には該当しませんし,民法等の法律において,判決効を拡張する規定があるわけでもありません。
それゆえ,本件訴訟は,「訴訟の目的が共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合」には該当せず,類似必要的共同訴訟には該当しません。
ウ したがって,本件訴訟は,通常共同訴訟であるということができます。
⑵ XがY2に対する訴えのみを取り下げることの可否
通常共同訴訟は,共同訴訟人独立の原則(39条)が適用されることから,Xは,Y2に対する訴えのみを取り下げることができます。
2 課題2
課題2は,要するに,XがY2に対する訴えのみを取り下げることができるとして,共同訴訟における証拠調べの効果及びそれが訴えの取下げによって影響を受けるかどうかを踏まえ,XとY1のみの訴訟において本案判決がされる場合に,第2回口頭弁論期日にY2が提出した本件日誌の取調べの結果を事実認定に用いてよいかを検討することとなります。
⑴ 共同訴訟における証拠調べの効果及び訴えの取下げによる影響の有無
共同訴訟においては,自由心証主義の観点から訴訟資料の統一化が図られるため,共同訴訟人の1人が提出した証拠は,他の共同訴訟人との関係でも,その有利不利を問わず,心証形成の資料となると解されます(共同訴訟人間の証拠共通)。
このような観点,すなわち,裁判官の心証形成を拘束せず,自由な心証に基づいて判断することができるようにするため,取り調べられて1度訴訟に現れ,裁判官の心証形成に影響を与えた証拠は,共通してその資料となるものと考えるべきであることから,当該証拠を提出した当事者に対する訴えが取り下げられたとしても,それによって証拠調べの効果に影響を与えるものと考えるべきではないと思われます。
⑵ 本件日誌の取調べの結果を事実認定に用いてよいか
本件日誌は,Y2が提出したものであり,XのY2に対する訴えは取り下げられているものの,すでに取り調べられた証拠である以上,その証拠調べの結果は訴えの取下げによって影響を受けないと考えられます。
したがって,XとY1のみの訴訟において本案判決がされる場合に,第2回口頭弁論期日にY2が提出した本件日誌の取調べの結果を事実認定に用いてよいと考えるべきです。
第4 感想など
記憶が薄れているせいか,少し難しいというか,理由を丁寧に論じようとすると少し苦労しました。
課題が2つ出されている設問1や設問3については,課題1が課題2を論じるうえで前提となるので,そのあたりを意識して論じると良いと思いました。