今日の絵:飛ぶドラゴンとサーカス

今日の絵:飛ぶドラゴンとサーカス

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それは千秋楽の出来事でした。
ショーも大詰めで、ステージではピエロがゾウやライオンと一緒に転げ回り、上空ではブランコが揺れています。
ブランコのりの彼女は、大技に入ろうとしていました。

玉乗り芸ができない彼は、ステージ上で皆といっしょに踊っていました。
突然、音楽を遮るほどのざわめきが起こりました。
ブランコの支えが外れて、彼女が宙に投げ出されたのです。

気がついた彼の目に、その姿はスローモーションのように映りました。
彼はそのとき、何をするべきかをはっきりと知りました。

彼は勢いをつけて、ステージから跳び上がりました。
翼に力を入れて、一度、大きく羽ばたきます。
そうすれば、空に座ることができるような気がしたのです。
そう、それはきっと、玉乗りをするのと同じやり方でいいのです。

彼の周りに旋風が巻き起こります。ステージ上の誰もが、何が起こったのかもわからないうちに、彼は宙に舞い上がります。

照明がカッと照りつける巨大なテントで、彼ははじめて空を飛びました。

宙に舞う彼女を短い両の前足で掴みます。
そうして、夢で見た大人のドラゴンのように、悠然と空を漂って、やがてステージの真ん中に着地しました。

ショーの演出だと思った観客は、拍手喝采です。
彼はこんなときなのに、心がやけに落ち着いているのを感じました。
玉乗りで拍手をもらった時と、まったく同じ感覚なのです。

はじめて空を飛んだ彼は、もう何年も馴染みの仕草のように、
優雅に翼を広げて、その翼で、隣の彼女を撫でました。

彼女は、少し青ざめた顔をしていましたが、彼に笑いかけると、元気よく立ち上がって、観客に向かって、大きく手を降りました。

その夜の拍手は、いつまでもやみませんでした。
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