「どうして東大に進学したんですか?」
その答えをたどっていくと、ココナラに行き着きます。
最初から東大を目指すためにココナラを始めた訳ではありません。
将来が少し不安で、会社の外でも自分の力で仕事ができるようになりたかった。それだけでした。
けれど、ココナラを通じて出会った人たちが私の進む先を変えてくれました。
きっかけは、将来への漠然とした不安だった
私がココナラを始めたのは、大学4年の春です。
コロナ禍で社会が大きく揺れ、内定取消や急な業績悪化のニュースが、他人事ではなくなっていました。
「1つの企業に依存して生きるのは、危ういことなのかもしれない」
そんな不安から、会社の外でも自分のスキルで仕事ができるようになりたいと思うようになりました。
とはいえ、社会人としての実績も、人脈もありません。大学のレポートやプレゼンでPowerPointは使っていましたが、それがお金を払ってもらえる仕事になるとは思っていませんでした。
そんなときに目にしたのが、「ココナラを始めたらパワポで月100万」という副業の記事でした。
月100万円は想像できなくても、資料作成なら、今持っているものから始められるかもしれない。高額なソフトやスクールへの投資も必要ありません。
「これなら、失敗してもかすり傷で済む」
そう思って、ココナラに資料作成のサービスを出品しました。価格は500円。まずは、自分の力で仕事を受ける経験が欲しかったのです。
最初の依頼を納品し、喜んでいただけたときのことは、今でも覚えています。報酬以上にうれしかったのは、肩書きも実績もない自分の力が、誰かの役に立ち、対価になったことでした。
一人で始めた副業が、仲間との学びに変わった
そこから、公募案件への応募や出品ページの改善、法人向けのサービスづくりなど、試行錯誤を重ねてきました。今では累計280件以上のお取引を経験し、正社員として働きながらもココナラでの資料作成を続けています。
ココナラを始めて変わったのは、収入だけではありません。
「会社の看板がなくても、自分にできることがある」
そう思えるようになり、新しいことに挑戦するときも、以前より一歩を踏み出しやすくなりました。
その変化を支えてくれたのが、ココナラを通じて出会った仲間です。
出品者同士が交流する場では、資料作成とは異なる分野で仕事をする方とも話すことができました。扱うサービスは違っても、自分の強みをどう伝えるか、購入者とどう信頼関係を築くかといった悩みには、共通するものがありました。
そして、交流を続けるなかで、メンバーのキャリアや働き方が変わっていく姿にも触れました。
もちろん、その変化の中心にあるのは、一人ひとりの大きな努力です。コミュニティに参加すれば、自動的にうまくいくわけではありません。
それでも、身近な仲間が挑戦し、成果を出している姿は、「こういう働き方を実現している人が、本当にいるんだ」という安心感をくれます。遠い世界の成功談だったものが、話を聞ける誰かの経験になる。そのことが、挑戦を少し身近にしてくれるのだと思います。
本人の努力に、仲間との会話や身近な実例が重なって、次の一歩を後押しする。私は、コミュニティにそんな力を感じるようになりました。
「一人で頑張る」だけでは、学びが続かない
副業の実績が増えるにつれて、始め方や続け方について相談を受ける機会も増えました。
そこで感じたのは、意欲があっても、一人では前に進めなくなる人がいるということです。
何を、どんな順番で学べばよいのか分からない。成果が出ないと、自分の努力が足りないのだと思ってしまう。困っても、誰に頼ればよいのか分からない。
私はそこに、方法が分からない孤立、すべてを自己責任として抱える孤立、頼れる相手がいない孤立を感じていました。
そのなかで、学習につまずき、途中で離れていく人たちを隣で見てきました。
新しいツールや学ぶ機会を用意するだけでは、学習は続かない。本人に「頑張って」と伝えるだけでは、解決できないことがある。
人が一人で抱え込まず、周囲と関わりながら学び続けるには、どんな環境が必要なのだろう。
その問いから、共通の関心や実践を持つ人たちが、継続的な関わりを通じて学ぶコミュニティの知からに着目しました。
コミュニティの力を知りたくて、東大へ
ココナラでの経験を通じて、仲間の経験が、安心感や行動につながるのはなぜか。どんな関わりが、学習の継続やキャリアの変化を支えるのか。そして、そうした環境を、どうすればつくれるのか。
「コミュニティは良いものだ」と感じるだけでなく、何が、どのように人の変化につながるのかを、体系的に理解したいと思うようになりました。
そのために選んだのが、コミュニティへの参加と学習、人の成長との関係を研究できる東京大学の大学院に進学しました。
もちろん副業で得た実績を、さらに仕事に生かす道もありました。
それでも、目の前の相談に自分の経験だけで答えることから、少し先へ進みたかったのです。
個人の努力を大切にしながら、その努力を支える環境についても知りたい。
その思いを研究計画にまとめ、仕事と並行して受験準備を進めた結果、合格することができました。
挑戦を支えたのは、ココナラで積み重ねてきた経験でもありました。最初から自信がなくても、まず取り組み、反応を受け取り、改善していく。その繰り返しが、新しい世界へ踏み出す力になっていました。
今は、職場外のコミュニティへの参加が、社会人の学習やキャリア形成にどのような変化をもたらすのかを研究しています。
小さく始めた先に、違う景色があった
ココナラを始めたとき、大学院でコミュニティについて研究する未来は、まったく想像していませんでした。
考えていたのは、会社に頼りきらずに働けるようになりたいということ。そして、まず一件、自分の力で仕事を受けてみたいということだけです。
でも、小さな仕事が次の依頼につながり、仕事が人との出会いにつながり、その出会いから新しい問いが生まれました。
雪玉を転がすように、少しずつ経験が重なっていく。振り返ってみると、始めた当時とは、全然違う景色が見えています。
もちろん、何を始めても同じ結果になるわけではありません。それでも、最初の一歩を踏み出したからこそ、出会えた人や見つかった問いがありました。
今、「何か始めたいけれど、どうしよう」と迷っている方も、最初から大きな目標や完璧な準備がなくてよいのだと思います。
今持っているもので、誰かの役に立てそうなことを、小さく試してみる。迷っている今を、始めどきにしてみてもいい。
私にとって、その一歩がココナラでした。
500円の仕事から始まった挑戦は、今も、想像していなかった場所へ続いています。