しばらくすると女の子がやってきて、リサが雑に置いた竹の棒を丁寧に隅に寄せ、宿の扉を開けてくれた。
寒いので、宿に入ってから、「あれ」を見せてもらおう。
なんだったけな・・・
中に入って気がつくと、リサが外にいる。ザオ族の店には入れないと言い、扉ギリギリのところに立っている。
今し方、立ち入り禁止の竹の棒を何食わぬ顔でまたいでいたリサが、宿の入り口の敷居はまたげないと言う。
目に見えない境界線があるのだ。境界線・・・
1990年代前半。ネパール・ダルバール広場。
最初に友達になった30代のインド人、ラヒス。10代の頃、
ネパールにやってきてガイドをしながら生活をしている。
一緒にご飯を食べようというので、毎晩通っていたチベット料理のレストランに誘ったが、自分は行けないという。
ネパールに来たばかりの頃、その店に入ってボコボコに殴られたという。
レストランがある通りにも入らないという。
毎晩通っていたこともあり、私たちにとっては家庭的な馴染みの店、馴染みの通りになっていたが、目に見えない境界線があった。
ある日、広場で、いつも笑顔で挨拶してくれるおじさんが、赤いかわいいいサリーを着た奥さんにめちゃくちゃ怒られているところに遭遇。
裏道に入ると料理や洗濯をする女の人を見かけることはあったが、広場にいるのは旅行者か男の人で、サリーを着た女の人を見かけるのは珍しかったと思う
それも仁王立ちで、目の前にはしょんぼりしているおじさん
奥さんは問答無用で境界線を超えて広場にやってきた。
超えられない時もあれば、超えられる時もある。
超えられない人もいれば、超えられる人もいる。