「検収のたびに修正を求められ、いつまでたっても業務が終わらない」
「検収が完了していないことを理由に、報酬を支払ってもらえない」
「検収が完了した後に不具合が見つかった場合、どこまで対応する必要があるの?」
業務委託契約では、成果物の納品後に、このようなトラブルが発生することがあります。
特に、Webサイト制作、システム開発、デザイン制作など、成果物の納品を伴う業務では、検収不合格時の修正対応や、検収完了後の責任範囲を明確にしておくことが重要です。
前編では、検収対象、検収基準、検収期間、みなし検収の4つのポイントを解説しました。
後編では、残る3つのポイントとして、修正対応、報酬支払い、契約不適合責任について解説します。
5.検収不合格時の修正対応を明確にする
検収の結果、成果物が契約で定められた仕様を満たしていない場合には、修正が必要になることがあります。
しかし、修正対応について契約書に明確な定めがないと、トラブルにつながる可能性があります。
例えば、発注者から何度も修正を求められ、受託者の作業負担が増加するケースです。
また、発注者が当初の仕様には含まれていない変更を求めた場合、それが無償修正に該当するのか、追加業務として別途報酬が発生するのかが問題となります。
こうしたトラブルを防ぐためには、契約書で次の事項を明確にしておくことが重要です。
修正が必要となる条件
修正の対象となる範囲
修正対応の期限
修正後の再検収の方法
仕様変更や追加要望の取扱い
修正と仕様変更は区別する
特に重要なのが、契約内容に適合させるための修正と、当初の合意内容を変更する追加作業を区別することです。
例えば、仕様書に定められた機能が正常に動作しない場合には、契約内容に適合させるための修正が問題となります。
一方、当初予定していなかった新しい機能の追加については、原則として追加業務としての取扱いを検討する必要があります。
この区別が曖昧だと、発注者は無償修正を求め、受託者は追加報酬を請求するなど、認識の違いが生じます。
契約書では、無償修正の範囲と追加費用が発生する場合を明確にしておくことが重要です。
6.検収完了と報酬支払いの関係を明確にする
検収条項は、報酬の支払条件とも密接に関係しています。
例えば、契約書に次のような条項があったとします。
「甲は、成果物の検収完了後、乙に対して委託料を支払う。」
この場合、検収が完了しなければ、報酬が支払われない仕組みになっています。
しかし、検収期間や検収基準が曖昧な場合、発注者が検収を完了しないことによって、受託者が長期間報酬を受け取れない可能性があります。
そのため、契約書では次の事項を明確にしておくことが重要です。
報酬の支払時期
検収完了と支払義務の関係
みなし検収が成立した場合の支払時期
一部の成果物が不合格となった場合の取扱い
フリーランス法・取適法にも注意
ここで注意したいのが、フリーランス法や取適法が適用される取引です。
フリーランス法では、一定の要件を満たす発注事業者について、原則として給付を受領した日などから60日以内のできる限り短い期間内に報酬の支払期日を定め、その期日までに支払うことが義務付けられています。
また、取適法が適用される取引についても、支払期日に関する規制があります。
これらの法律が適用される場合には、検収が完了していないことを理由に、法令上の支払期限を超えて支払いを遅らせることはできません。
したがって、「検収完了後に支払う」と契約書に定めていても、その条項だけで支払期限を自由に延長できるわけではありません。
なお、適用法令や取引類型によって、支払期限の起算点や特例が異なる場合があります。
検収条項と報酬支払条項は、相互の整合性だけでなく、適用法令も踏まえて設計する必要があります。
7.検収完了後の契約不適合責任を明確にする
最後に確認したいのが、検収完了後の責任です。
例えば、成果物の検収が完了した後に、不具合や仕様との不一致が発見される場合があります。
このとき、受託者がどこまで修正対応を行う必要があるのかが問題となります。
検収が完了したからといって、当然に受託者のすべての責任がなくなるわけではありません。
成果物が契約内容に適合していない場合には、契約の法的性質や適用法令、契約内容に応じて、契約不適合責任などが問題となることがあります。
そのため、契約書では次の事項を検討しておくことが重要です。
検収完了後に発見された不具合への対応
修正・追完対応の範囲
責任を負う期間
発注者による通知の期限や方法
損害賠償責任との関係
保守・運用業務との区別
検収と保守業務は区別する
例えば、Webサイト制作契約では、検収完了後に発生した不具合への対応と、日常的な更新・保守業務を区別する必要があります。
契約内容に適合させるための修正と、新しい機能の追加や継続的な運用サポートでは、業務の性質が異なるためです。
これらを区別せずに契約すると、受託者が無期限に無償対応を求められるなどのトラブルにつながる可能性があります。
また、契約不適合責任を制限する条項を設ける場合には、民法その他の適用法令との関係にも注意が必要です。
検収完了後にどのような責任が残るのかを明確にすることで、納品後のトラブルを防ぎやすくなります。
検収条項は他の契約条項との整合性も重要
検収条項を作成する際には、他の契約条項との整合性も確認する必要があります。
特に、次の条項との関係は重要です。
業務内容・仕様に関する条項
納品・納期に関する条項
報酬・支払条件に関する条項
仕様変更・追加業務に関する条項
契約不適合責任に関する条項
損害賠償に関する条項
著作権・知的財産権に関する条項
例えば、著作権の移転時期を「検収完了時」と定めている場合には、検収完了の時点が不明確だと、著作権がいつ移転するのかについても問題が生じる可能性があります。
また、報酬の支払時期を検収完了と関連付ける場合には、検収期間やみなし検収との整合性を確保する必要があります。
検収条項は、契約書全体の仕組みの中で設計することが重要です。
まとめ|検収後の修正対応・支払い・責任範囲を明確にする
今回は、業務委託契約書の検収条項について、後編として3つのポイントを解説しました。
検収不合格時の修正対応を明確にする
検収完了と報酬支払いの関係を明確にする
検収完了後の契約不適合責任を明確にする
検収をめぐるトラブルは、発注者・受託者の双方にとって大きな負担となります。
発注者にとっては、契約内容に適合した成果物を受け取ることが重要です。
一方、受託者にとっては、契約で合意した業務を完了した後、適切に検収を受け、報酬を受け取ることが重要です。
そのため、検収条項では、検収の対象・基準・期間・通知方法だけでなく、不合格時の対応や報酬支払いとの関係まで明確にする必要があります。
契約書で大切なのは、単に「検収を行う」と記載することではなく、納品から検収完了までの手続が実際に機能するように設計することです。
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ファビスト行政書士事務所では、個人事業主・フリーランス・中小企業の皆様に向けて、業務委託契約書をはじめとする各種ビジネス契約書の作成を承っています。
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このようなお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。
※本記事は一般的な法制度及び契約実務について解説するものであり、個別の取引における法的判断は、具体的な契約内容や適用法令によって異なります。