東南アジア6カ国、最初に進出すべき国はどこか?化粧品・日用品メーカーのための市場選定の基礎知識

東南アジア6カ国、最初に進出すべき国はどこか?化粧品・日用品メーカーのための市場選定の基礎知識

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ビジネス・マーケティング
「東南アジア市場に進出したい。」多くのメーカーがそう考えています。
しかし、東南アジアは約7億人を抱える巨大市場である一方、「東南アジア」という一括りでは語れません。国ごとに消費者の価値観、所得水準、流通チャネル、ECの普及状況、人気のSNS、競争環境まで大きく異なります。
そのため、市場選定を間違えると、商品力があっても思うように売れない可能性があります。
一方、自社の商品特性と市場が合致すれば、限られた投資でも着実にブランドを育てていけます。この記事では、化粧品・日用品メーカーの視点から、東南アジア主要6カ国を比較し、「自社はどこから始めるべきか」を考えるためのヒントを整理していきます。

市場選定で見るべき5つのポイント


海外展開で成功する企業は、「成長している国」を探すのではなく、「自社が勝てる市場」を探しています。そのためには、市場だけを見るのではなく、自社との相性も含めて評価することが重要です。

① 市場規模・成長性

まず確認したいのは、市場そのもののポテンシャルです。人口やGDPだけでなく、化粧品・日用品市場の規模や成長率、中間所得層の拡大などを確認します。市場が大きくても、自社のカテゴリーが成熟していなければ十分な機会は得られません。

② ターゲット顧客との相性

同じ化粧品でも、市場によって求められる価値は異なります。例えば、

美白ニーズが強い市場

敏感肌向け商品の需要が高い市場

プレミアムブランドが選ばれる市場

コストパフォーマンスが重視される市場

など、消費者ニーズと自社商品の相性を見極める必要があります。

③ 販売チャネルとの相性

商品が売れるチャネルも国によって異なります。例えば、

ドラッグストア

EC

TikTok Shop

ライブコマース

代理店販売

など、自社が強みを持つ販売方法が現地でも有効か確認する必要もあります。

④ 競争環境

競合が誰なのかを把握することも重要です。市場によって、

ローカルブランド

韓国ブランド

中国ブランド

欧米ブランド

日本ブランド

の強さは異なります。競争が激しい市場ほど、多くのマーケティング投資が必要になります。

⑤ 規制・参入ハードル

海外では、販売前に対応すべき制度も少なくありません。例えば、

商品登録

成分規制

ラベル表示

ハラール認証

など、国によって必要な手続きや期間は大きく異なります。

東南アジア主要6カ国比較(推計)

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2025年、2026年までの公開データをもとにまとめています。

国ごとの特徴と進出のヒント


ベトナム


市場規模と成長性

ベトナムの美容・パーソナルケア市場は成長を続けており、2025年の市場規模は約32億ドルと見込まれ、2029年まで年間約3.3%の成長が予測されています。スキンケア分野の成長が特に目立ち、2023年時点でスキンケアセグメントがベトナム美容市場の42%を占め、約9億6,200万ドルの市場規模を持つことが確認されています。

消費者層と購買行動

ベトナムの中位年齢は約33.4歳で、20〜30代前半が美容消費の中心層です。人口の13%を占める中間層は2026年には26%に達する見通しで、可処分所得の増加が高品質製品への支出拡大を後押ししています。価格帯については、消費者の最大ボリュームゾーン(45%)は1製品あたり200,000〜500,000ベトナムドン(約1,200〜3,000円)の中間価格帯を支持しており、12%は100万ドン以上(約6,000円超)を許容する購買層も存在しています。

日本ブランドのポジション

ベトナムの化粧品輸入市場は外資ブランドが全体の90%を占め、韓国ブランドが30%でトップ、次いでヨーロッパ系が23%、日本ブランドが17%でシェアを持ちます。日本ブランドはSK-IIのようなプレミアムラインから千花(Senka)のような中価格帯まで幅広く展開しており、安全性・品質への信頼を軸にした認知が形成されています。

ECプラットフォームの現状

2025年、ベトナムのEC4大プラットフォーム(Shopee・TikTok Shop・Lazada・Tiki)の合計取引額は約4,297億ベトナムドン(約160億ドル)に達し、このうちShopeeとTikTok Shopが全体の97%を占めました。2025年第3四半期のEC売上上位カテゴリーは、美容(17.7兆ベトナムドン/約1000億円)がトップで、ホーム・リビング、女性ファッションが続いています。

競合動向

K-Beauty(韓国)およびC-Beauty(中国)の攻勢が急速に強まっています。特に20代前半の若年層ではK-Beautyのトレンド影響力が大きく、「韓国コスメ風」のパッケージやマーケティングが台頭しています。

タイ


市場特性

GDPは一人当たり約8,110ドルと東南アジア中位圏ながら、バンコクなどの都市部では消費水準が大幅に高く、プレミアム化粧品の需要が安定的に存在します。タイの化粧品市場は2025年に約56億ドル規模で、2032年には95億ドルに達すると予測されており、2025〜2032年の年平均成長率(CAGR)は6.8%と見込まれています。スキンケアが市場の約55%を占め最大カテゴリーとなっています。また、プレステージ化粧品・フレグランス市場は2023年時点で約5億3,300万ドル規模に達しており、都市部を中心にプレミアム製品への需要が安定して存在しています。

流通チャネルの特徴

2024年時点で、タイの化粧品販売の70%以上はオフラインチャネル(スーパー・専門店・ドラッグストア・コンビニエンスストア等)が占めており、消費者の対面購買意向は依然として高い状況です。BootsやWatsonsをはじめとするドラッグストアチェーンは、タイ全土に広い店舗網を持ち、消費者の信頼も厚い主要販売チャネルです。一方で、ECはタイ化粧品市場で最も成長率の高い販売チャネルとなっており、今後の市場拡大を牽引すると予測されています。

SNSとインフルエンサーの影響力

TikTokはタイにおいて化粧品の認知と購買を左右する主要なプラットフォームとなっており、消費者の多くがTikTokで目にした製品を購入するという行動パターンが定着しています。また、2025年2月時点のRakuten Insight調査では、タイにおけるソーシャルコマース利用率でTikTokがトップに立っています。

競合動向

MistineやSnail Whiteなどタイ発のブランドは国内外で高い知名度を誇り、タイ国内の中間価格帯市場で強固な地位を築いています。

単純な低価格競争では差別化が難しく、機能的有効性や処方の安全性を根拠とした訴求が有効です。Mintelの調査では、45歳以上の消費者の54%が「科学的有効性の証拠がない製品には購入意欲が湧かない」と回答しており、成分・有効性の根拠提示がブランド信頼構築に直結することが示されています。

インドネシア


市場特性

東南アジア最大・世界第4位の人口約2.8億人を抱え、単純な市場規模では群を抜く存在です。ただし所得水準は一人当たりGDP約5,000ドルと中程度であり、消費者の主力層は低〜中価格帯(3ドル以下〜10ドル以下)に集中しています。ジャカルタ・スラバヤなどの都市部と農村部では購買力・消費習慣に大きな差があることも留意が必要です。

ハラール認証義務化

BPJPH(ハラール製品保証機構)の発表によれば、2026年10月以降、化粧品・医薬品・化学品・消費財を含む幅広い製品カテゴリーにハラール認証が義務付けられます。これは政府規制第42号(2024年)に基づくもので、外資ブランドを含む全製品に適用されます。認証取得には一定の期間とコストが必要であるため、インドネシア進出を検討する企業は早急に対応を開始すべきです。ECプラットフォームのTokopedia・Shopee・Lazadaでも、対象カテゴリーの製品登録にハラール証明番号の記載を求めるようになっており、EC販売の観点からも認証取得は実質必須となっています。

ECプラットフォームと流通

ShopeeとTikTok Shopが市場を牽引しており、ライブコマースの浸透が急速に進んでいます。一方、アルファマート・インドマレットなどのコンビニエンスストアチェーンを含むリアル店舗での日用品購買も根強く残っており、オムニチャネル戦略が有効です

競合動向

Wardah(ワルダ)・Emina(エミナ)など、ハラール対応を強みとする現地ブランドが非常に強力で、価格・流通・ブランドロイヤルティのいずれも高い水準にあります。外資ブランドが低価格帯で真っ向勝負するのは困難であり、特定の機能訴求(毛穴ケア・日焼け止めなど)に絞った差別化が現実的です。

マレーシア


市場特性

一人当たりGDP約12,000ドルは東南アジアではシンガポールに次ぐ高さで、消費者の可処分所得・品質へのこだわりは東南アジア有数です。

20ドル以上の単価帯でも受け入れられる購買層が存在し、日本ブランドの強みを価格に反映しやすい市場といえます。特にスキンケア(UVケア・美白・エイジングケア)への関心が高く、日本発の処方との親和性も高い。

マレーシアは中華系・マレー系・インド系の多民族国家であり、ターゲティングによってチャネルや訴求が変わります。マレー系(最大多数)にはハラール認証が強力な信頼指標になる一方、中華系消費者には品質・成分エビデンスが重視される傾向があります。

ハラール認証(JAKIM)の戦略的価値

JAKIMのハラール認証は世界60カ国以上で認知されており、マレーシアの認証基準は47の国・地域のハラール当局によって受け入れられています。

インドネシアと異なりマレーシアでは現時点で法的義務ではありませんが、取得によりマレー系ムスリム消費者(全人口の最大多数)への訴求力が飛躍的に高まります。マレーシアでは主にムスリムが多数を占める人口構成を背景にハラール認証製品への需要が増大しています。

なお、消費者の40%以上が美容製品に天然成分を求めており、ハラール認証はムスリム消費者に限らず、清潔さ・安全性の証明として非ムスリム消費者にも一定の支持を得ています。

スキンケア市場の特性

マレーシア消費者は多民族(マレー系・中華系・インド系)で構成されており、各層によって訴求軸が異なります。

マレー系消費者にはハラール・自然派処方が有効な訴求軸となる一方、中華系消費者には肌悩み(皮脂・色素沈着・敏感肌など)に対応した製品のローカライズが競争優位をもたらすと指摘されています。

越境EC拠点としての価値

英語が公用語に近い形で流通し、物流・金融決済インフラも整備されているマレーシアは、東南アジア展開の実験市場(テストマーケット)や地域物流ハブとして活用する外資企業が多い市場です。Lazada・Shopeeへの出店と並行して、ショッピングモールへの展開を組み合わせたオムニチャネル戦略が有効です。

フィリピン


市場特性

フィリピンの美容・パーソナルケア市場は2025年時点で約67億ドル規模に達し、2026〜2034年にかけて年平均5.7%の成長が見込まれています。また、フィリピン女性は総人口の54.6%を占め、その大部分が19〜64歳の労働年齢層であり、安定した美容消費の基盤を形成しています。FacebookとMessengerの普及率はアジア最高水準にあり、美容コンテンツの情報収集からコミュニティ形成まで、FacebookグループやFacebook Liveが重要な役割を担っています。TikTokも急速に浸透しており、若年層の購買行動への影響が大きい。

オフライン小売が主体、ECで補完

化粧品の小売は依然としてオフラインが主体です。EC市場ではShopee・Lazadaが主要プラットフォームで、モバイルコマースの利用率が高い。ただし物流インフラは島嶼国家の地理的特性から地方配送に課題があり、主要市場はメトロマニラ・セブ・ダバオなどの都市部に集中します。オンライン比率は徐々に上昇しており、2029年にはオフラインとの均衡に達すると予測されています。

競合動向

フィリピンの化粧品市場では米国ブランドが35%のシェアを持ち、韓国(K-Beauty)が34%で僅差の2位です。地元ブランド(Careline・BYSなど)がメイクアップ分野で強い支持を得ており、K-Beautyおよび米国ブランド(NYX・e.l.f.など)も若年層に人気です。日本ブランドはスキンケア分野での認知はあるものの、メイクアップ分野でのブランド想起はまだ伸びしろがある状況です。

シンガポール


市場特性

一人当たりGDP約99,000ドルはアジアトップクラスです。シンガポール消費者は品質・成分の透明性・ブランドストーリーに厳しい目を持っており、マーケティングの品質が購買判断に直結します。小規模市場(人口約590万人)ゆえに単体での売上規模は限定的ですが、ブランドイメージの確立と情報拡散の起点としての価値が高い。

流通チャネルの多様性

EC市場は高度に成熟しており、Shopee・Lazadaに加えてSephora・Watsonsのオンラインストア、ブランド公式ECサイトなど多様なチャネルが共存しています。消費者のオムニチャネル行動(オンラインで調べてオフラインで確認・購入)が定着しており、リアル店舗での体験設計も重要です。

日本ブランドの存在感

シンガポールは高額の美容・パーソナルケア支出国のひとつとして位置づけられ、日本・韓国ブランドの浸透が市場成長を後押ししています。ShiseidoやKao、KOSEといった日本の主要企業はすでにシンガポール市場で存在感を持っており、新規参入企業はこれら既存の日本ブランドと同一棚での競合を前提に差別化を図る必要があります。

テストマーケットとしての価値

英語が主要言語であり、多様な人種・文化背景を持つ消費者が共存するシンガポールは、東南アジア全体のトレンドを先取りする市場としての側面があります。シンガポールで受け入れられた製品・マーケティングアプローチは、他の東南アジア諸国展開時の参考になるケースが多い。また、東南アジア地域統括拠点(地域本社)を置く外資企業も多く、ビジネスエコシステムの充実度が抜群です。

競合動向

世界中のプレミアムブランドが参入済みであり、ラグジュアリー・ニッチブランドまで揃った競争環境です。ただし消費者が「本物・品質・ストーリー」に対してプレミアムを支払う文化が根付いており、差別化さえ明確であれば高価格設定でも十分に受容される可能性があります。

まとめ


東南アジアは約7億人を抱える魅力的な市場ですが、国ごとに消費者の価値観や所得水準、販売チャネル、競争環境は大きく異なることがわかります。

市場選定は、東南アジア進出の成否を左右する最初の重要な意思決定です。だからこそ、市場規模だけでなく、消費者ニーズや競争環境、販売チャネル、規制まで総合的に比較し、自社に最も適した市場を選ぶことが重要です。

本記事が、東南アジア進出を検討されている企業の皆さまにとって、市場選定を考える際の参考になれば幸いです。
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