ことばの奥をすくい取るデザインと、私の中のもうひとつの視点

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デザイン・イラスト


デザインの仕事をしていると、ときどき “和の感覚がふと顔を出す瞬間” があります。
意図して取り入れているというより、長く身の回りにあった空気のように、自然とそこに息づいている──そんな感覚に近いかもしれません。

前職では、着物や和装小物に携わりながら、和の世界と深く向き合っていました。
着付け、和の行事の装い、お茶席の所作や季節のしつらえ、日本画の色づかい、歴史的な工芸品から紡がれる美意識──。
どれもひとつひとつを大切にしながら学んできたものです。

振り返ると、その経験にはすべて共通点があります。
それは、“日本は、色と季節と歴史でできている” ということ。
色には名前と由来があり、季節には移ろいがあり、形には意味がある。
そしてそのすべてが、長い時間の中で静かに磨かれてきました。

この「奥行きのある美意識」は、不思議と今の仕事にもつながっています。

たとえば、ロゴトレース。
いま目の前にある一枚の画像から、そこに込められた意図やニュアンスを読み取り、
「元の形が持つ尊厳」を損なわず、丁寧に輪郭を起こしていく作業です。

これは、古い文様を前にしたときの感覚に少し似ています。
“この線は、なぜこの太さなのか”
“この余白は、何を伝えようとしているのか”
そういった背景に触れるような気持ちでデータを整えていくと、
やがて「そのロゴが本来持っている姿」が、すっと目の前に現れます。

電子書籍の表紙づくりも同じです。
お客様が言葉にしきれない思いや、まだ言語化されていないイメージがあります。
それは、着物の相談を受けていたときに感じたこととそっくりです。

「こういう雰囲気が好きなんです」
「うまく言えないのですが…」

そんな気持ちを受け止め、背景にある意図を形にする。
和の文化にある“相手の思いを汲む” 姿勢が、今も変わらず支えになっています。

もし和の感覚をデザインに例えるなら、
“形に宿る、見えない物語をすくい上げる力” のようなものだと思います。

桜は散り際に余白を残し、
紅葉は色を重ねながら深みをつくり、
家紋は最小限の線で、最大の意味を伝える。

過剰に飾るのではなく、必要なところだけに手を添える。
その静かな美しさは、現代のデザインにも通じるものがあります。

和文化に触れてきた時間は、いまのデザインの仕事の“奥のほう”でそっと息づいていて、
ときどき輪郭を見せてくれるように思います。
その小さな気づきを、これからも静かにすくい取っていけたら──そんな気持ちでいます。

デザインの仕事の中でふと顔を出す、
自分の中に息づいてきた和の感覚。
それを言葉にしていくことで、また新しい視点が見えてくるーー。

次の記事では、和文化のどんな要素が現代デザインとつながっているのか、
実際の仕事の中から、少しずつ掘り下げていきたいと思います。
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