第5回 革命から優しさへ 『同棲時代』が映した若者たちの

第5回 革命から優しさへ 『同棲時代』が映した若者たちの

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昭和48年前後。
日本の若者たちは、大きな転換期を迎えていた。
わずか数年前まで、大学のキャンパスには学生運動の熱気が渦巻いていた。
社会を変えたい。
戦争をなくしたい。
新しい時代を作りたい。
若者たちは真剣だった。
彼らは本気で世界を変えられると信じていたのである。
しかし現実は厳しかった。
運動は分裂し、対立し、多くの若者たちは挫折を経験した。
やがて卒業の時が来る。
就職が決まる。
長かった髪を切る。
背広を着る。
会社へ通う。
かつて革命を語った若者たちは、社会の中へ戻っていった。
そんな時代の空気を見事に歌ったのが、後にバンバンのヒット曲となる『いちご白書をもう一度』だった。
「就職が決まって 髪を切ってきた時
もう若くないさと 君に言い訳したね」
この歌詞に、多くの若者たちは自分自身の姿を見た。
夢を捨てたわけではない。
理想を忘れたわけでもない。
ただ、生きていかなければならなかった。
そして若者たちは、新しい幸せを探し始める。
社会を変えることよりも、
大切な人を守ること。
大きな理想よりも、
目の前の暮らしを大事にすること。
『同棲時代』は、そんな時代の若者たちの心を映し出していた。
六畳一間かもしれない。
将来は不安かもしれない。
お金もない。
それでも好きな人と一緒に生きていきたい。
その願いは決して派手ではない。
しかし、とても人間らしい願いだった。
だから若者たちは共感したのである。
当時流行したフォークソングも同じだった。
『神田川』も。
『いちご白書をもう一度』も。
『同棲時代』も。
すべてが同じ方向を向いていた。
闘争ではなく共感。
革命ではなく愛情。
怒りではなく優しさ。
時代は確実に変わっていたのである。
そして半世紀以上が過ぎた今。
私たちはスマートフォンを持ち、
インターネットで世界中とつながっている。
便利な時代になった。
豊かな時代になった。
しかし人は今も変わらない。
誰かに愛されたい。
誰かと一緒に生きたい。
心の安らぎが欲しい。
『同棲時代』が描いたものは、決して古くなってはいないのである。
上村一夫が描いた若者たちの孤独。
沢田研二と梶芽衣子が演じた青春。
大信田礼子が歌った優しさ。
そのすべては、昭和という時代を超えて、今を生きる私たちにも静かに語りかけてくる。
革命の時代は終わった。
しかし人が人を求める心は終わらない。
だからこそ『同棲時代』は、今も多くの人の記憶の中で生き続けているのである。
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