誰とも話さない3日目に、気づいたこと

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この記事はフィクションですが、カウンセラーは実在し個人カウンセリングを提供しています

クライエント紹介:
ユキ・32歳・女性
IT企業を退職して3ヶ月。在職中は同僚との交流もあったが、退職後は人との接点が激減。オンラインで転職活動をしながら一人で過ごす日々が続き、孤独感と焦りで精神的に不安定になりかけている。
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部屋に一人、声を出さない日々

ダイキのカウンセリングルームに入ってきたユキさんは、少し緊張した様子で椅子に座った。
ダイキ: こんにちは。今日はどうされましたか?
ユキ: あの...最近、誰とも話していなくて。
そう言って、ユキさんは少し笑った。でもその笑顔は、どこか痛々しかった。
ユキ: 会社を辞めて3ヶ月経つんですけど、気がついたら3日間、誰とも会話していないことがあって。スーパーのレジで「ありがとうございます」って言うくらいで。
ダイキ: 3日間...それは、どんな気持ちでしたか?
ユキさんは少し考えてから、ぽつりと言った。
ユキ: 怖かったです。このまま誰にも必要とされなくなるんじゃないかって。
会社員時代は、人に囲まれていた
ダイキ: 会社員の時は、どうでしたか?
ユキ: 忙しかったです。毎日残業で、正直しんどくて。でも...
ユキさんは窓の外を見た。
ユキ: でも、ランチは同僚と食べてたし、会議では話していたし。週末も、たまに飲み会があったり。人との関わりが、当たり前にあったんです。
ダイキ: それが、今は...
ユキ: ないんです。最初は「やっと一人の時間ができた!」って嬉しかったんですけど。1ヶ月過ぎたあたりから、なんか...寂しくなってきて。
彼女の声が少し震えた。
ユキ: 転職活動もしてるんですけど、ほとんどオンラインで。面接も画面越しだし。リアルに人と会うことが、ほとんどなくなっちゃって。

SNSを見るたびに、焦る自分

ダイキ: その状況で、何か困っていることはありますか?
ユキ: SNS見ると、みんな楽しそうなんですよね。友達と遊んでたり、新しい仕事始めましたって報告してたり。
ユキさんは、スマホを握りしめた。
ユキ: それ見てると、「私だけ取り残されてる」って思っちゃって。焦るし、でも誰にも会いたくないし。矛盾してるんですけど。
ダイキ: 焦りと、人に会いたくない気持ちと、両方あるんですね。
ユキ: はい...あと、最近気づいたんですけど、スーパー行くのも怖いんです。知り合いに会ったらどうしようって。「今何してるの?」って聞かれたら、なんて答えればいいのかって。
彼女は小さな声で続けた。
ユキ: 無職だって言うのが、恥ずかしくて。

「孤独は甘え」じゃなかった

しばらく沈黙が続いた。ダイキはゆっくりと質問した。
ダイキ: ユキさん、孤独って、どう思いますか?
ユキ: え?
ダイキ: 一人でいることが辛いって感じることを、どう思っていますか?
ユキ: ...甘えかなって思ってました。一人でいられないなんて、自立できてないんじゃないかって。
ダイキ: なるほど。でも実は、人間って孤独にすごく弱い生き物なんですよ。
ユキさんは、驚いたように顔を上げた。
ダイキ: 原始時代、集団から離れることは死を意味しました。だから私たちの本能は、孤独を「危険」だと感じるようにできているんです。
ユキ: ...そうなんですか。
ダイキ: 孤独が怖いのは、甘えじゃない。人間として、ごく自然な反応なんです。
ユキさんの目に、涙が浮かんだ。
ユキ: 私、ずっと自分を責めてました。「なんでこんなに弱いんだろう」って。

警戒モードに入っている心

ダイキ: ユキさん、スーパーに行くのが怖いって言ってましたよね。
ユキ: はい。
ダイキ: それ、実は脳が警戒モードに入ってるサインかもしれません。
ダイキはゆっくりと説明を続けた。
ダイキ: 孤独を感じたり、不安定な状況にいると、人は周囲を警戒するようになります。「何か悪いことが起きるかもしれない」って。だから、人に会うことさえ怖くなる。
ユキ: あ...
ユキさんは何かに気づいたような表情になった。
ユキ: 確かに、最近すごく疲れやすいんです。家にいるだけなのに。
ダイキ: 警戒って、すごくエネルギーを使うんですよ。動いていなくても、心は常に緊張している状態だから。
ユキ: じゃあ、私が疲れやすいのは...
ダイキ: 怠けているからじゃなくて、心が一生懸命、あなたを守ろうとしているからかもしれません。
ユキさんは静かに涙を流した。

安全なつながりを求めて

少し落ち着いてから、ユキさんが口を開いた。
ユキ: でも、どうすればいいんでしょう。このまま一人でいるのは辛いけど、人に会うのも怖くて。
ダイキ: 無理に会う必要はないと思います。でも、つながりは必要です。
ユキ: つながり...?
ダイキ: 安全だと感じられる場所で、少しずつ人とつながっていく。完璧な自分を見せる必要もない、評価されることもない、そういう場所です。
ユキ: そんな場所、あるんですか?
ダイキ: 例えば、同じような経験をしている人たちのコミュニティとか。オンラインでもいいんです。大事なのは、「ここなら安心」って思える場所を見つけること。
ユキさんは、少し考え込んだ。
ユキ: 実は、キャリアブレイク中の人が集まるオンラインコミュニティを見つけたんです。でも、入るのを躊躇してて。
ダイキ: どうして躊躇したんでしょう?
ユキ: ...うまくやらなきゃって思っちゃって。また、頑張らなきゃいけないのかなって。

完璧じゃなくていい、つながり

ダイキはゆっくりと微笑んだ。
ダイキ: ユキさん、そこで「うまくやる」必要はないんですよ。
ユキ: え?
ダイキ: 安全なコミュニティっていうのは、ありのままでいられる場所です。「今日は誰とも話してない」って言ってもいいし、「不安で仕方ない」って言ってもいい。
ユキ: でも、そんなネガティブなこと言ったら...
ダイキ: 同じように感じている人がいると思いますよ。むしろ、「私も!」って共感してくれる人がいるかもしれない。
ユキさんは、少し驚いた表情になった。
ユキ: そっか...私だけじゃないんですね。
ダイキ: そうです。孤独を感じているのは、ユキさんだけじゃない。そして、同じ思いを抱えている人同士だからこそ、わかり合えることもあります。
ユキ: ...ちょっと、勇気が出てきました。

小さな一歩を踏み出す

カウンセリングの終わりに、ユキさんが言った。
ユキ: 今日、すごく楽になりました。孤独が怖いのは、甘えじゃないって知れて。
ダイキ: それに気づけたのは、大きな一歩ですよ。
ユキ: あのコミュニティ、入ってみようと思います。最初はROM専でもいいですよね?
ダイキ: もちろん。見ているだけでも、「ここに同じような人がいる」って感じられるだけで、孤独感は和らぎます。
ユキ: はい。まずは、そこから始めてみます。
ユキさんは、最初に来た時よりも少し明るい表情で帰っていった。
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数週間後、ユキさんから連絡があった。コミュニティに参加して、少しずつ書き込みもするようになったという。そして、オンラインで開催される雑談会にも参加してみたそうだ。
「完璧じゃなくていいって思えたら、楽になりました。みんな、それぞれ悩んでいて。でも、それでいいんだって。つながりって、こういうことなんですね」
そう言って、ユキさんは笑った。今度は、本当の笑顔だった。



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