「資産5,000万円まで貯まったら、会社を辞めても大丈夫でしょうか?」
FIREを目指して資産形成を続けていると、どこかの段階でこの疑問にぶつかります。
5,000万円という金額は、一つの大きな節目です。
しかし、実際にFIREできるかどうかは、資産額だけでは判断できません。
同じ5,000万円を持っている人でも、安心して退職できる人もいれば、もう少し働いた方がよい人もいます。
その違いはどこにあるのでしょうか。
「資産額÷年間生活費」だけでは分からない
FIREの計算では、よく次のような考え方が使われます。
年間生活費が300万円なら、
5,000万円 ÷ 300万円 = 約16.7年
単純計算では、運用益を考えなくても約17年分の生活費があります。
また、資産を運用しながら取り崩すことを考えれば、もっと長く生活できる可能性があります。
しかし、実際の人生はこのような単純計算では進みません。
たとえば、次のようなことが起こります。
・退職直後に株式市場が大きく下落する
・想定より生活費が増える
・物価上昇が長期間続く
・子どもの教育費が想定以上にかかる
・住宅関連の大きな支出が発生する
・退職後に予定していた収入が得られない
・病気や介護などで支出が増える
重要なのは、
「平均的な未来なら大丈夫か」
だけではありません。
「悪いことが重なったとき、どこまで耐えられるか」
も考える必要があります。
FIRE直後の暴落は特に注意が必要
たとえば、5,000万円の大部分を株式で保有した状態で退職したとします。
その直後に株価が40%下落すると、単純計算では株式部分の評価額は大きく減少します。
問題は、単に資産額が一時的に減ることだけではありません。
下落した資産を生活費のために売却すると、その後の株価回復の恩恵を受けられる資産量も減ってしまいます。
そのため、
・現金をどの程度持つのか
・生活費をどこから出すのか
・暴落時に支出を減らせるのか
・一時的に収入を増やせるのか
といった点まで考えておく必要があります。
「長期的には株価が上がると思うから大丈夫」という考え方だけでは、FIRE後の生活設計としては十分ではありません。
子どもがいる家庭は教育費も考える
子育て世帯のFIREでは、教育費も重要です。
子どもが小さい時点では、大学進学までかなり時間があります。
そのため、現在の年間生活費だけを基準にFIRE可能性を判断すると、将来の支出を過小評価する可能性があります。
公立中心なのか、私立も想定するのか。
大学は自宅通学なのか、一人暮らしの可能性も考えるのか。
子どもがもう一人増えた場合はどうなるのか。
すべてを正確に予測することはできません。
しかし、複数の条件で試算することはできます。
将来を正確に当てることと、将来に備えることは別です。
「あと1年働く」という選択肢も数字で考える
FIREを考えている人にとって、もう一つ重要なのが退職時期です。
たとえば、
「今すぐ辞める」
「あと1年働く」
「あと3年働く」
では、結果が大きく変わることがあります。
会社員を続ける期間が延びれば、その間の給与収入だけでなく、
・資産の追加積立
・既存資産の運用期間
・退職後に必要となる生活費の期間短縮
・公的年金への影響
なども変わります。
一方で、働く時間には限りがあります。
資産を増やすためだけに、必要以上に退職を先送りすることが必ずしも正解とは限りません。
重要なのは、
「あと1年働くことで、FIRE計画の安全性がどの程度改善するのか」
を把握することです。
改善効果が非常に大きいなら、1年働く価値は高いかもしれません。
反対に、すでに十分な安全性があり、1年働いても計画がほとんど変わらないなら、その1年間をどう使いたいかという問題になります。
FIREできるかどうかは「資産額」だけでは決まらない
私がFIREを考えるときに重要だと思うのは、次のような点です。
・現在の金融資産とその内訳
・年間生活費
・税金や社会保険料
・家族構成
・教育費
・住宅費
・退職後の収入
・公的年金
・資産配分
・現金の保有額
・暴落時の対応力
・支出を調整できる余地
・必要な場合に再び収入を作れるか
これらを組み合わせて考える必要があります。
資産5,000万円という数字だけを見て、
「十分です」
「足りません」
と断言することは難しいと思います。
同じ資産額でも、年間生活費が250万円の人と600万円の人では状況が違います。
同じ生活費でも、退職後の収入がある人と完全に無収入の人では違います。
さらに、数字上は問題がなくても、株価下落による資産減少に耐えられないのであれば、資産配分を考え直した方がよい場合もあります。
最後に
FIREを検討する段階では、資産形成とは別の難しさがあります。
資産形成中は、
「あといくら貯めるか」
という比較的分かりやすい目標があります。
しかし、退職を決める段階になると、
「本当にこれで足りるのか」
「もっと悪い未来が来たらどうするのか」
「あと少し働いた方がいいのではないか」
という不安が出てきます。
だからこそ、FIREの判断では楽観的なシナリオだけでなく、悲観的な状況も含めて考えることが重要だと思います。
将来を完全に予測することはできません。
それでも、
自分の計画は何に強いのか。
どこに弱点があるのか。
どの程度の悪化まで耐えられるのか。
退職前に何を改善すればよいのか。
ここまで整理できれば、退職という大きな意思決定は、かなり具体的に考えられるようになります。
FIRE設計室では、資産・生活費・家族構成・教育費・住宅状況・退職後収入などを整理し、複数のシナリオからFIRE・早期退職の実現可能性を個別に検証しています。
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