「どうして私は、同じような恋を繰り返してしまうのだろう」
恋愛や結婚について、そんな問いを抱えたことはありませんか。
好きになるときは、いつも一気に好きになる。けれど、ある日ふと、気持ちが離れてしまう。あるいは、うまくいっていたはずの関係が、思いもよらない形で終わってしまう。そのたびに、自分のどこかに問題があるのではないかと考えてしまう。
NHK連続テレビ小説「ブラッサム」のモデルとなった作家・宇野千代は、生涯に何度も恋をし、何度も結婚した人として知られています。
このシリーズの第4回となる今回は、宇野千代の恋と結婚を、ホロスコープから読み解いていきます。
宇野千代が愛した人たち
まずは、宇野千代の恋と結婚の歩みを、順番にたどってみます。
最初の結婚は、千代が14歳のときでした。1911年、千代は父に命じられて、いとこの藤村亮一のもとへ嫁ぎます。けれどこの結婚生活は、わずか10日で終わりました。これは千代が自分で選んだ結婚ではありません。
2度目の結婚の相手は、亮一の弟で、やはり千代のいとこにあたる藤村忠です。京城から戻った千代は、京都の学校で学んでいた忠を頼って京都へ行き、二人は一緒に暮らし始めます。忠が東京帝国大学に進むと千代も一緒に上京し、1919年に二人は正式に結婚して、札幌へ移りました。
ところが1922年、千代は原稿のことで上京した帰りに、作家の尾崎士郎と出会います。尾崎士郎は、のちに長編小説『人生劇場』で人気作家となる人です。千代は札幌の夫のもとへは戻らず、東京で尾崎と暮らし始めました。そして藤村忠と離婚し、尾崎士郎と結婚します。
尾崎との暮らしは、千代と作家の梶井基次郎との仲が噂になったことをきっかけに、別居へと向かったとされています。梶井基次郎は、短編小説「檸檬」で知られる作家です。
1930年ごろ、千代は小説の取材で、洋画家の東郷青児に会いに行きます。東郷はその少し前に、ある女性と心中未遂事件を起こし、世間を騒がせていました。千代はその日から東郷と暮らし始めたと伝えられ、やがて尾崎とは正式に離婚します。けれど東郷との暮らしは、東郷と心中未遂の相手の女性との関係が戻ったことをきっかけに、4年ほどで終わりを迎えたといわれています。
そして1939年、千代は、新聞社の記者で作家でもあった北原武夫と結婚します。北原は千代より10歳年下でした。二人は雑誌『スタイル』を一緒に作り、会社の倒産も、借金の返済も、ともに乗り越えます。けれど結婚から25年が過ぎた1964年、北原のほうから離婚を申し出て、二人は別れることになりました。北原はその年のうちに、別の女性と再婚しています。
この離婚のとき、千代は66歳でした。
「恋多き女」という言葉の前に
宇野千代は、しばしば「恋多き女」と呼ばれます。
けれど、彼女の恋と結婚の歩みを丁寧にたどってみると、私にはその言葉だけでは足りないように思えます。千代は、恋をするたびに、その相手と暮らし、多くの場合は正式に結婚しています。そして、相手と一緒に生活を立て、仕事をし、借金まで背負っています。
恋を軽く扱った人ではなく、恋をするたびに、人生ごと相手に差し出した人。私には、そう見えるのです。
では、ホロスコープからは、どんな理由が見えてくるのでしょうか。
なお、恋愛や結婚を読むときには、本来「第7室(結婚やパートナーシップを示す部屋)」や「第5室(恋愛を示す部屋)」も大切な手がかりになります。宇野千代は出生時間がわからないため、今回はこうしたハウスは使わず、天体の星座と角度から読んでいきます。
理由その1 蠍座の金星は「全部か、何もないか」
恋愛を読むうえで、まず見るのは金星です。金星は、愛情の向け方や、何に惹かれるかを表す天体です。
宇野千代の金星は、蠍座にあります。
蠍座の金星は、浅く広くではなく、一人の相手に深く入り込む愛し方をします。好きになったら、相手の心の奥まで知りたくなり、自分のすべてを差し出したくなります。中途半端な距離感の関係では、心が満たされにくい金星です。
そして第2回でもお伝えしたように、宇野千代の金星は、ほかの天体とほとんど角度を結んでいません。ほかの天体からの影響を受けにくい天体は、そのテーマが、ブレーキのかからない純粋なかたちで表に出やすくなります。
世間体や損得、「普通はこうする」という常識。そうしたブレーキがかかりにくい金星は、恋をすると、まっすぐ相手に向かっていきます。取材で会ったその日から東郷青児と暮らし始めたという話も、北原武夫の勤める新聞社へ千代のほうが毎日のように通ったという話も、この金星の在り方とよく重なります。
一方で、「全部か、何もないか」という愛し方は、気持ちが通わなくなったときに、関係をあいまいなまま続けることが難しくもあります。宇野千代の恋が、始まるときも終わるときもはっきりしていたのは、この金星の深さと純度の表れだったのではないでしょうか。
理由その2 太陽に重なる天王星と火星は「出会った瞬間に、動く」
第1回でご紹介したように、宇野千代のチャートでは、射手座の太陽に、火星と天王星が重なっています。
火星は、行動力や情熱、自分から相手に向かっていく力を表す天体です。天王星は、突然の変化や、常識にとらわれない自由を表す天体です。
この二つが太陽に重なる人は、心が動いた瞬間に、体が動きます。恋愛においても、時間をかけてゆっくり距離を縮めるより、出会った瞬間に「この人だ」と感じて飛び込むことが多くなります。そして、自分の気持ちに嘘をついて、形だけの関係を続けることには、強い息苦しさを覚えやすい配置です。
札幌に夫がいながら、尾崎士郎と出会って東京に残った1922年の決断は、まさにこの配置の表れのように見えます。
射手座は、自由と冒険の星座です。射手座に太陽を持つ人にとって、自由は、なくてはならない空気のようなものです。宇野千代は、自由を求めて相手を捨てたのではなく、自分の心に正直であることを、何よりも大切にした人だったのかもしれません。
理由その3 太陽に重なる土星は「本気で引き受ける」
ここで、宇野千代のチャートのもうひとつの特徴が大切になってきます。射手座の太陽には、責任と継続を表す土星も重なっているのです。
もし火星と天王星だけなら、恋は始まっても、形のある関係にはならなかったかもしれません。けれど土星を持つ千代は、恋をすると、その相手との暮らしを本気で作ろうとしました。籍を入れ、家を建て、一緒に仕事をし、借金を返していったのです。
東郷青児と暮らしたときは、世田谷に建てた洋館の借金を返すために、千代は東郷の絵を売り歩きました。北原武夫とは、会社の倒産という最大の危機を、25年の結婚生活の中で一緒に乗り越えています。
何度も結婚したのは、恋を軽く扱ったからではなく、恋をするたびに本気で引き受けたから。
理由その4 山羊座の月と天秤座の木星は「愛する人と、一緒に何かを作る」
宇野千代の結婚には、もうひとつ共通点があります。それは、夫がいつも、仕事の相棒でもあったということです。
尾崎士郎とは、作家どうしとして文学の世界を共に生きました。東郷青児とは、彼の心中未遂事件の話から小説『色ざんげ』が生まれ、彼の絵を千代が売りました。北原武夫とは、雑誌『スタイル』を二人で作りました。
チャートでは、心の欲求を表す月が山羊座にあります(正午の位置です。14時55分ごろより後の生まれなら水瓶座になります)。山羊座の月は、ただ甘い時間を過ごすことよりも、一緒に何かを築き上げることに、心の安らぎを感じやすい月です。
そして、人との関わりを表す天秤座には木星があり、射手座の星たちと協力し合う角度を結んでいます。木星は、広がりや幸運を表す天体です。千代にとって、愛する人との出会いは、いつも新しい世界への扉でもありました。尾崎士郎は文壇への、東郷青児は美術の世界への、北原武夫は雑誌づくりへの扉を、千代に開いてくれた人だったといえます。
愛と仕事が、ひとつに重なる。宇野千代の結婚は、共同制作のようなものだったのかもしれません。
恋の始まりと終わりに、金星を訪れた星
最後に、宇野千代の恋と結婚の節目に、空ではどんな星が動いていたのかを見てみます。生まれたときの星に、その時点で空を運行している星が角度を結ぶことを「トランジット」と呼びます。
驚いたのは、恋の大きな節目のたびに、遠くをゆっくり動く星が、千代の蠍座の金星に角度を結んでいたことです。
尾崎士郎と暮らし始め、結婚へと向かった1920年代の前半には、突然の変化を表す天王星と、夢と陶酔を表す海王星が、そろって千代の金星に角度を結んでいました。
東郷青児と出会った1929年から1930年ごろには、深い変容を表す冥王星が、千代の金星と調和の角度を結んでいます。心中未遂という、生と死に触れる出来事を抱えた相手との出会いは、まさに冥王星らしいものでした。
北原武夫と結婚した1939年には、天王星が、千代の金星とちょうど正反対の位置にありました。
そして北原武夫との離婚を迎えた1964年には、海王星が、千代の金星にぴったりと重なっていました。海王星は、境界をあいまいにし、形あるものを溶かしていく天体でもあります。25年続いた結婚が終わりを迎えた時期と、静かに重なります。
恋の始まりも、終わりも、空の星の動きと呼応していたのです。私には、千代の恋が、ただの気まぐれではなく、人生の大きな流れの中で起きていたことのように感じられます。
繰り返す恋は、自分の愛し方を知るための道のり
宇野千代の恋と結婚を、星から読んでみました。
深く、まっすぐに愛する蠍座の金星。出会った瞬間に動き出す、太陽に重なる火星と天王星。恋を本気で引き受ける土星。そして、愛する人と一緒に何かを作りたい月と木星。
同じような恋を繰り返してしまうとき、私たちはつい、それを自分の欠点のように感じてしまいます。けれど私は、繰り返しは欠点ではなく、自分の愛し方を知るための道のりだと考えています。
自分がどんなふうに人を好きになり、関係の中で何を大切にしたいのか。それがわかると、同じことが起きても、受け止め方が変わります。宇野千代は、何度も恋をすることで、自分の愛し方を一生かけて知っていった人だったのではないでしょうか。
次回は、3人の夫と千代の星を重ねます
宇野千代と、尾崎士郎、東郷青児、北原武夫。3人の夫たちは、それぞれ千代とどんな星の関係を持っていたのでしょうか。
次回の第5回では、千代と3人の夫のホロスコープを重ね合わせ、二人の間に生まれやすい力の流れを読み解きます。
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