夏になる前の夕闇が薄く迫る頃、夕方の街のチャイムが鳴り 1時間もすれば父が帰ってくる。
そろそろ夕食、肉とジャガイモと人参を甘しょっぱく煮て肉じゃがの匂い、豆腐の味噌汁、ほうれん草の胡麻和えの香り、夕食の準備が進む中、その割には身動きをしないミトミ・・・?
私なら4~5軒先から我が家の夕食の匂いが嗅ぎ分けられるのに、おかずの香りが強くなるとやっとブーブー豚のように鼻を鳴らす、あれうち犬じゃなくて豚だっけ ?ミトミ鼻が悪いのかな?
車の音が、父の足音が、少しづつ玄関に近づいてくる。
父を出迎えるのは我が家の日課。
そろそろお出迎えに行かねば。だが、ミトミはのんきにテレビの方を見ている。
「アッお父さん帰ってきた」
その声に初めて 跳ねるように玄関に行き、父の周りをくるくる回りながら、
『お帰りんなさい。お帰ンなさい。お父さん!ミトミが一番先に気付いたんだよ』
『いや違うでしょ。一番先に気づいたのはわ・た・し。その声で動き始めたのがあ・な・た!』と、心中穏やか出ない私。
しかし、父は、
「お~ミトミちゃんお迎えに来てくれたのか。迎えてくれるのはお前だけだよ」 と言って嬉しそうにミトミを抱き上げながら 居間に向かう父。
母も私も出迎えに出て、なんで毎回それを言うのか?よくわからない。
さらに調子の良いミトミ。もう慣れたけど言動が謎な父と犬。
また別の日、ミトミと二人(1匹と1人)?で日向ぼっこをしているとポクポク玄関に足音が近づき、
「アッ誰か来た。お母さん帰ってきたのかな?」
その声に反応し慌てて柱にぶつかるミトミ。
「アッハッハ~馬鹿じゃないの」と笑いながら
玄関に向かう途中、ドカッ「イテっ!」ドアにぶつかる私。
チャイムが鳴って出ると買い物から帰って来た母。
「イテテ、お帰りなさい」
痛そうにしている1人と1匹を見て、
「どうしたの?」
「慌てて出ようとしてミトミは柱に、私はドアに頭ぶつけた」
「メガネの度が合ってないのかな?」
「いや、これは単なるドジだけど、ミトミは近眼じゃないかな?」
私のかけていたメガネをミトミに掛けてみた。
振り落とすかと思いきや、『よく見える』らしい。
どうもミトミも目が悪いらしいが、犬のメガネ無いしナ。
それにしても目や匂い、音の反応が鈍い。目と鼻と耳が悪いのかな?
病院に連れて行くと「近眼かどうかは視力検査も出来ないし 分からないが、副鼻腔炎と中耳炎」と言われた。
目も鼻も耳もきかないなら三重苦?ヘレンケラーさんかいな?(ヘレンケラーさん一緒にして ごめんなさい)
動物としての能力は私の方があるンじゃないのか?
『ミトミ、大丈夫だよ。何があっても先輩動物として守るから。』