第1編は「創業計画書作成」編です。
第9回『創業計画のつくり方⑦』
日本政策金融公庫 国民生活事業 の
「創業の手引き」に沿って、説明しています。
手引きは、公庫のHPから入手できます。
今回は、「10 売上予測」、「11 収支計画」、「12 返済計画」
について説明します。
(「創業の手引き」は17ページからです。)
『創業計画書』の項目8「創業後の見通し(月平均)」を見ていただくと、
記入項目は、
① 売上高、
② 売上原価、
③ 経費 (内訳ⅰ人件費、ⅱ家賃、ⅲ支払利息、ⅳその他)合計、
④ 利益(①-②-③)
となっています。
手引きには「これから始める事業は、どれくらいの利益がでるか」という点が、一番気にかかるところでしょう。
とのコメントが書かれています。
利益が出なければ商売は続けられないので、ある意味当然ではありますが、
計画を作るときに『利益』から逆算して「経費」、「原価」、『売上』見込みを算出することによって、不自然な数字になっていないか
注意をする必要があります。
ここで一つ、覚えていただきたい「経営分析の数式」があります。
『収支計画』を作るうえで、とても大切な考え方です。
損益分岐点売上高
損益分岐点売上高 = (経費*) ÷ ( 1 - 原価率 )
「損益分岐点売上高」というのは、 売上高と、総費用が等しくなり、利益・損失ともにゼロの地点での売上高のこと。
すべての費用を回収するのに、必要な売上高をさします。
10ページの記入例を見ていただくとわかるように、
「借入金の返済元金」と、「個人営業の『事業主分』の人件費」は、
経費の中には算入しないので、上記式の(経費*)の部分は、
(経費+借入金返済元金+個人の生活費[住宅ローン等含む])となります。
(注:個人の生活費には、他にも税金や社会保険料等も考慮が必要。)
なお、法人のケースでも、代表者個人の生活費が多く必要であれば、役員報酬を増やさなければならない。
つまり「経費」そのものが増えるので考え方は同じです。
第6回で説明した「お借入れの状況」が、損益分岐点売上高に、
ひいては、『収支計画』に大きく影響し、『創業後の見通し』の妥当性にも
かかわってきます。
上記の内容を算式にしたものが、20ページの『返済計画』の下の
「返済財源」と「収支見込」です。
(注:「減価償却費」は経費ではあるが、実際に現金は出て行かないの
で、創業計画書の「創業後の見通し」の経費の欄には計上しない。
なお、この20ページは「開業後の損益計算書」の数字を基に、
説明しています。)
それでは、一項目ごとに、注意点を下から見ていきましょう。
④ 利益
・(最低限)返済元金と、個人企業の場合の生活費分は確保されているか?
→ 不足分が出るようであれば、確保できるまでのトータルの補填資金
(余裕資金)の用意が必要になる。
→ 「創業資金」借入直後の、「追加の運転資金」の借入は、創業資金の
借入よりも、ハードルが高いと考えていただいた方が無難。
なぜならば、借入の増加は、返済負担を増やし、収支マイナスがさらに 増えることになるから。当然「マイナスの解消見込み」や「次の資金補 填方法(資金調達力)」を問われる。
⇒ 創業資金は「返済元金の開始を遅らせること(据置の設定)」も可能。
但し、元金の減りが遅くなるので、次の追加運転資金の借入可能時期
が、遅くなる可能性あり。
③ 経費
ⅰ 人件費 (法人の場合の役員報酬も含みます。)
・従業員数等に見合った人件費は計上されているか?
→ 従業員数が、売上高の根拠に関係してくる(①売上高の項目で詳細)
→ "くれさんの店(注)"の凄腕スタッフや、許認可業種で経営者が
資格を持っていないようなケースの有資格従業員には、
平均以上の人件費を計上しないと、事業が維持できない。
→ 家族やアルバイトでの代替検討も必要
ⅱ 家賃
・「管理費」「共益費」等家賃のほか毎月かかる費用も合算します。
→ "くれさんの店"のように家賃がかからない店と、第7回の三軒茶屋
の参考物件②の家賃760千円の店では、損益分岐点売上高は、
大きく変わります。
物件選びは事業計画全体の重要なポイントです。
ⅲ 支払利息
・金融機関分だけではなく、友人や身内からの借入でも利息を払う
ものは、計上が必要です。
(「返済元金」についても、考え方は同じ。)
ⅳ 経費
・FC本部へのフランチャイズ料が固定月額制の場合は「経費」に、
売上に対する歩合制の場合は、「原価」に計上してください。
・カード払いの手数料の計上も、忘れずに。
→ 32ページの「創業者からのメッセージ(9)(11)」にもあるよう
に、費用は多めに発生するとの意識が必要です。
② 原価 ・『小企業の経営指標(公庫のHPで公開中#)』を参考に
してください。
# 国民生活事業書式⇒経営者の皆様向けの参考資料
⇒ 1 小企業の経営指標
→ 公庫の担当者は、この数字を参考に審査を進めることを
ご認識ください。
→ 「現在の勤務先の原価率」を参考にする場合(経営指標より
低いケース)同じ条件で仕入れることが可能か確認が必要です。
⇒ 勤務先が大きな企業だと、規模のメリットで安く仕入れが可能
かもしれません。
仕入先の担当者との人間関係で「同じ条件で」可能なら、
それは『強み』といえますので、
審査担当者にアピールしましょう。
今回は、ここまでにします。次回は① 売上高(予想)から、説明を続けます。
補 足 8月に公庫の経営指標の最新版(2年に1度、新しい統計に基づき改定される)が、 掲示されました。
パン製造小売業で言うと、次の数字が大きく変わっていました。
2017年調査 2019年調査
・従業者1人当たり売上高(千円) 13,922 8,664
・従業者1人当たり人件費(千円) 4,571 2,780
以上、富太郎でした。
(注) 『真夜中のパン屋さん』
作者: 大沼 紀子 ポプラ文庫 全6巻
☆ 過去に「ブログ」に投稿した内容の再掲示です。