会話も前と後ろに文章がつくと、その奥が読めてくる。
記事コラム
「これなんて読む？」
宿題中の小学２年生の息子。
近くにあった封筒に、自由過ぎる書き順で『合体』と書きながら。
宿題のプリントには単語だけが並べてある漢字の書き取り。
簡単に教えるのは面白くないな、と私は鉛筆を借り、
「こう書き足すときっと分かるやろう。」
私は封筒に書かれた「合体」の前に
『赤いロボットと青いロボットが』
を付け加え、後ろに
『してひとつになった。』
と足しました。
「がったい！！」嬉しそうに叫ぶ息子の表情に私も嬉しくて、簡単な漢字を読めなかった心配など、吹っ飛んでしまいました。
無邪気な笑顔のパワーは凄い。
プリントの合体という漢字の横には、細いフリガナを書くスペースが。
ちょいと大き過ぎやろ、と思われるほどにはみ出してる「がったい」。
この子は本当に自由やなぁ…と思いながら、
「きみはキングダム(漫画)を読んどるやん。あれには漢字にフリガナがないから、文の流れで漢字を読みよるよね。前後に文章がつくと漢字って読めちゃうとこあるね。」
息子はプリントに向かって、非常に個性的な「弓矢」を書いていました。
ある意味、最強に破壊力有りそうな弓矢。
その芸術的な文字を見ながら、
「この文章はこういうことを言いたいのやろうから、この漢字の読み方はきっとこうやな、って読解力もつくのよ。本を読むってさ、いいことやね。」
ふふ、いいこと言ってるお母さんだな、私。
なんてひっそり悦に入っていました。
息子は宿題のプリントに向かってた顔を上げ、
「オレ、ひよこ飼いたい。」
と。
うん？素敵なこというお母さんは、どこいった？
どこに飛ばした？
その言葉にも、前と後ろに何かつけて欲しい。
キミの心が読めないよ。
例えば
「読書は押し付けられるものじゃないよ。それより、オレ、ひよこ飼いたい。読書よりそっちのほうに興味がある。」
とか、
「本読んでたらひよこが出てきて可愛かった。オレ、ひよこ飼いたい。本読むと興味も増える。」
とか。
前と後ろが分からないと、相手が読めない。
これは、大人の世界にも多々あって、
気持ちのすれ違いもこんなところから起きてきます。
詳しく聞いてみると、なるほどそういう意味だったのね、って納得できることもあります。
ちょっとここで便利な道具を造り出します。
魔法のヘルメット。
それをかぶると、その言葉の前と後ろが分かるようになる。
「頑張れよ。」
こう言われたとき、魔法のヘルメットをかぶっていると、
「前にさ、あんな凄い成果出したよね。力があるの知ってる。頑張れよ。応援したいんだ、キミだからこそ。」
とかってヘルメットを通して、脳に見えてくる。
すると、頑張ってみたい！ってなるかも知れない。
「あなたとは話したくない。」
魔法のヘルメットの力を借りると、
「私の気持ちを認めないで、お説教をしようとするでしょ。だから、あなたとは話したくない。私の気持ちを認めてくれるなら、本当は話したい。」
って脳にピコンと見えてくる。
そしたら「ちゃんと気持ちに寄り添うから、話して欲しいよ。」っていい関係になれるかも知れない。
魔法のヘルメットがあればいいなぁ。
でもそんなモノはないから、「どうして？」って聞くことで少しずつ読めるようにしていきます。
この「どうしてだろう？」「何でだろう？」は大切。
相手を分かりたいなら、なおさら大切。
そんな風に感じるようになりました。
そして自分も、前と後ろを出来るだけ伝えよう、とも。
「オレ、ひよこ飼いたい！。」
唐突な斜め上からの発言。
「この流れからどうしてそうなった？」
「ひよこ可愛い！！」
「ん？読書の話はどこ行った？」
「ひよこ200円で買えるし。」
……。
時に話が読めぬままの時もあります。
自由な息子の自由な言葉は、きっと今はそれで良いのだろう。
「ひよこは飼わないし、200円でも買わない。うちにはジュウシマツもナマズもアブラメもメダカもヌマエビもアリのファミリーもおる。」
「なら読書しない。」
なるほどね。簡単な漢字を読めなくても、その辺は頭が回るのね。
あれかな？キングダムの戦略合戦に面白味を見出しているのかな？
悦に入ってる場合じゃなかった。
策士として成長する息子に負けてはおれぬ！
ぎゃふんと言わせてやる。
天下を取る大将軍にはまだまだ及ばぬぞ、と教えてやる。
上回りたい……。
……。
……。
「はいはい、宿題せんね。」
良い策が浮かばなかったので、お母さんが良く使う
「話ずらし作戦、なかば無理やり」
を使いました(￣▽￣)
魔法のヘルメットがないから、すれ違いは起こります。
悩んでいたら・・・
相談てほどではないけれど、言葉の前と後ろを一緒に探して欲しい・・・
