50代の副業は"好きなこと"より"経験の棚卸し"から始めるべき

50代の副業は"好きなこと"より"経験の棚卸し"から始めるべき

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マネー・副業
「好きなことを仕事にしよう」

この言葉を聞くたびに、心のどこかで引っかかりを感じたことはありませんか。好きなことと聞かれても、パッと思い浮かばない。もしくは、思い浮かんでも「それで本当に通用するのか」という不安がついてくる。

書店に並ぶ副業本や、SNSで見かける成功者の投稿は、たいてい「好きなことで生きていく」という言葉から始まります。でも、その言葉を聞くたびに、なぜか自分だけ置いていかれるような気持ちになる。そんな経験はないでしょうか。

僕自身、長い間、副業選びを「好きかどうか」ではなく「稼げそうかどうか」で決めていました。アフィリエイト、せどり、転売。流行っているから、稼げると聞いたから。そういう理由で飛びついては、経験のないジャンルでうまくいかず、離れる。その繰り返しを10年以上続けました。

この記事では、なぜ50代の副業選びは、好きなことより先に経験の棚卸しから始めるべきなのかを、僕自身の失敗も含めて書きます。

この記事で扱う範囲

今日扱うのは、副業のジャンルを何にするかではなく、選ぶ基準そのものです。

好きなことから選ぶ流れと、経験から選ぶ流れは、出発点がまったく違います。この違いがなぜ50代にとって重要なのか、順番に見ていきます。まず「好き」から選ぶことの落とし穴を確認し、次に経験がなぜ本人に見えにくいのかを整理し、棚卸しの具体的なやり方を紹介したうえで、「好きなことを無視していいのか」という疑問にも触れます。

「好き」から選ぶと、ゼロから始めることになる

好きなことは、必ずしも今まで積み上げてきたものとは限りません。

新しく興味を持ったジャンルに飛び込むと、多くの場合、経験も実績もない初心者としてのスタートになります。20代であれば、そこから何年もかけて育てる時間があります。50代にとって、その時間は限られています。

僕が過去に手を出したジャンルも、正直に言えば「好きだから」ではなく「今流行っているから」でした。経験の裏付けがない状態で始めたぶん、うまくいかなかったときに戻る場所がなく、簡単に離れてしまっていました。うまくいかない理由を分析する土台すらなかった、というのが実態に近いと思います。

そもそも「好きなこと」という言葉自体が、実はかなり曖昧です。趣味として楽しめることと、仕事として続けられることは、必ずしも一致しません。趣味は「結果が出なくても楽しい」から続けられますが、副業は結果が伴わないと続けるモチベーションが保ちにくくなります。この違いを意識せずに「好きなこと」を探すと、趣味の延長を仕事にしようとして、うまくいかないケースが多くなります。

経験は、本人が一番気づいていない

会社員として長く働いてきた人ほど、自分の経験を「特別なものではない」と感じがちです。

毎日やっていることは、当たり前になりすぎて、価値として見えなくなります。GASやAIを使った業務の効率化、資料のまとめ方、複数の関係者との調整。僕自身、実務の中で自然と身につけてきたこれらのことを、長い間「誰でもできること」だと思っていました。

でも、同じ立場の会社員から見れば、これは十分に価値のある情報です。むしろ、若い世代が簡単には持っていない種類の経験です。学生時代から起業していたような人には、長年組織の中でもまれてきた経験そのものが、逆に手に入らないものだったりします。

経験が見えにくくなる理由の一つは、比較の相手を間違えていることにあります。多くの人は、自分の経験を「同じ会社の中で優秀な人」と比べてしまいます。そうすると、自分の経験はいつまでも「普通」にしか見えません。比べる相手を、まだその経験を持っていない人に変えるだけで、同じ経験の価値がまったく違って見えてきます。

経験が見えにくくなるもう一つの理由は、「当たり前にできること」ほど、本人にとっては努力の記憶がないことです。苦労して身につけたスキルは、苦労した記憶とセットで「自分の強み」として認識しやすいのですが、自然に身についたことは、いつどうやって身につけたかも思い出せません。だからこそ、他人から見ると価値があっても、本人には見えにくいのです。

棚卸しの具体的なやり方

棚卸しと聞くと、誇れるような大きな実績を探さなければいけない気がするかもしれません。そうではありません。

日常の中の小さな事実を、ただ集める作業です。

具体的には、次の3つのステップで進めると整理しやすくなります。

1つ目のステップは、事実を集めることです。この1年で、人から繰り返し頼まれたことは何か。「それ、どうやってるの」と聞かれたことは何か。他の人が面倒だと感じる作業で、自分はそれほど苦にならないものは何か。長年の仕事で、当たり前にできるようになったことは何か。ここでは評価せず、思いつく限り書き出すことに集中してください。

2つ目のステップは、具体化することです。「調整力がある」ではなく、「部署間で意見が対立したとき、双方の言い分を整理して落としどころを提案した」というように、具体的な場面まで書き出してください。抽象的な言葉のままだと、それが本当に自分の強みなのか、単なる自己評価なのか、あとで見分けがつかなくなります。

3つ目のステップは、他人の目で確認することです。頭の中だけで考えると、「これくらい誰でもできる」という自己評価のバイアスがかかりやすくなります。信頼できる同僚や家族に話してみて、「それ、意外とすごいですね」と言われた経験があるなら、それは客観的に価値がある可能性が高いです。

好きなことを探すより先に、経験を棚卸しすることには、もう一つ利点があります。それは、選ぶ基準が自分の外ではなく内側にあるという点です。

ランキングやトレンドから選ぶと、基準は常に外側にあります。外側の基準は変わり続けるので、追いかけ続けなければなりません。一方、経験から選ぶと、基準は自分の中にあります。誰かに何かを言われても、揺らぎにくくなります。

僕がノウハウコレクターだった10年は、まさに外側の基準に振り回され続けた期間でした。稼げると聞けば飛びつき、流行が去れば離れる。その繰り返しの中で、自分が本当は何を積み上げてきたのかを、一度も棚卸ししたことがありませんでした。

「好きなこと」は無視していいのか

ここまで読むと、「好きなことは考えなくていいのか」と思うかもしれません。そうではありません。好きなことを完全に無視していいわけではなく、順番の話です。

経験の棚卸しで見つかった土台の中から、比較的興味を持てるもの、続けやすそうなものを選ぶことはできます。経験と好きなことが重なる部分があれば、それは理想的な組み合わせです。大事なのは、好きなことだけを起点にして経験ゼロから始めないことです。土台があるうえでの「好き」は、続けるための燃料になりますが、土台のない「好き」は、最初の壁にぶつかった瞬間に折れやすくなります。

棚卸しをしてみても、「これといって何も出てこない」と感じる人もいると思います。その場合、質問の立て方を少し変えてみてください。「得意なこと」ではなく、「人に頼られた場面」を思い出す方が、多くの人にとって答えやすくなります。得意かどうかは主観ですが、頼られたかどうかは事実として思い出しやすいからです。

また、直近の記憶だけで考えると、範囲が狭くなりがちです。入社してからの数十年を、3年単位くらいで区切って振り返ってみると、忘れていた場面が出てくることがあります。異動や担当替えのタイミングごとに、周囲からどんな役割を求められていたかを思い出すのも、一つの手がかりになります。

▼ここからコピー
経験の棚卸しチェックリスト
・この1年で、人から何度も頼まれたことは何か
・「それ、教えて」と言われたことは何か
・面倒だと言われる作業で、自分はそれほど苦にならないものは何か
・長年の仕事で、当たり前にできるようになったことは何か
・トラブルや調整を任されることが多い場面はどこか
▲ここまで

今日は、副業のジャンルを決める必要はありません。上のチェックリストに、5分だけ答えてみてください。そこに出てきた言葉の中に、あとで振り返ったときに「これは使えるかもしれない」と思えるものが、きっと1つは見つかります。

棚卸しで出てきた言葉は、そのままでは副業にはなりません。次にやることは、書き出した項目の中から、繰り返し出てくるキーワードを探すことです。「整理する」「間に入る」「教える」など、複数の場面で共通して出てくる動詞があれば、それがあなたの経験の軸になっている可能性が高いです。軸が見えてから、それを活かせるジャンルを探す方が、ジャンル先行で探すよりずっと的が絞りやすくなります。

まとめ

50代の副業選びを「好きなこと」から始めると、経験のないジャンルにゼロから飛び込むことになりやすく、時間の余裕がそのぶん重くのしかかります。加えて、好きという感覚は移ろいやすく、選ぶ基準として不安定です。

一方、経験の棚卸しから始めれば、すでに積み上げてきたものを土台にできます。基準が自分の内側にあるので、外の情報に振り回されにくくなります。

好きなことを探す前に、まず自分がこれまで何をしてきたかに目を向ける。この順番を変えるだけで、副業選びの景色は大きく変わります。

とはいえ、自分の経験を一人で棚卸しし、客観的に評価するのは、実際にはなかなか難しい作業です。そうした整理を一緒に行うサービスも用意しています。

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