今回は新市場開拓の場合について、現在まさに進行形のケースを考察してみたいと思います。
LUUPの事例
取り上げる事例は、LUUPです。その事業戦略に関して考察してみましょう。
LUUPの事業内容は、電動キックボードと小型電動アシスト自転車のシェアリングサービスです。
2021年4月に市場投入され、現在、首都圏、関西圏で集中展開しているので、見かける方も多いでしょう。
この企業の市場分析と課題を私なりに推論すると、以下のようになります。
市場分析で、その状況をわかりやすく整理するやり方にSWOT分析があります。
その中でも、私は着目すべきは、SWOTのStrengthとOpportunityの部分と考えます。
LUUPはターゲットが価値と感じる3つの特長があります。
1)便利で手軽な短距離移動の新しい手段である(自動車を運転しなくても移動できる)
2)安全で安心な乗り物である ※2023年7月の道交法改正で電動ボードが新たな車輛区分として認定
3)EVかつ簡単な製造なので環境負荷が低い
思うに、彼らはその商品価値には十分自信をもっており、その上で課題を考えており、そうなると、習慣化、つまりいかにリピートさせか になります。
それを意識し、取った戦略は、
第一にドミナント戦略、すなわち大都市部にポート(駐機場)を集積させ、利便性をつくること、
第ニにイノベーター戦略、この手の新しい乗り物の合理性をすぐ理解し、トライしてみたいと思う若者に集中的に訴求する
そうすることで、人口密度の高い大都市でリピートの連鎖を作ることに重きをおいたと推察されます。
で、LUUPの事業戦略のリボンフレームを作ってみました。
つくり方のポイントは、以下です。
【市場分析の要諦】
・アーリーステージ:ほとんど市場がない。利用者は1%以下。イノベーターのみ
・また、ダイレクト競合もいない状態。間接競合として、自転車(自家用、シェア)、スクーター・バイク
さらに間接的だが、電車、タクシー、自家用車
・商品性に自信
⇒・こう分析することで、課題と戦略が習慣化であることにすんなり結びつきます。
【課題と戦略の要諦】
・通常では、認知及び体験が第1優先だが、この場合、習慣化を軸に、マーケティング設計する
・ユーザーモニター、リサーチシステムの稼働、アジャイルなPDCA
⇒・習慣化を課題とすることで、戦略がドミナント戦略と明快に規定できます。
・また、実行計画の大事な部分にリサーチとPDCAをおくことができます。
妄想と実際
今、彼らは何にひっちゃきになっているかというと、利用者(将来の顧客)の利用の実態、すなわち、どんな動機でLUUPを利用したか?、その体験はどうだったか?、今後も利用してくれるだろうか?、その理由=LUUPの価値の核心は何か? でしょう。
そして、顧客調査でそのデータを必死に取っており、これを当初のターゲット仮説と擦り合わせているでしょう。
というのも、新規事業の場合、往々にして当初描いていた顧客像や利用動機などが、実態とずれていることが多いからです。
しかし、これは当たり前のことです。
何故なら、まだ誰も見たことのない景色だからです。
しかし、人間はその景色を信じて、事業を開発します。
その時に威力を発揮するのが人間の妄想なのです。(妄想というスキルについては、このブログの⑤と⑩で詳しく述べています。)
つまり、妄想を紙に落とし、皆と協議・合意して取り合えずやってみる。
それが新規事業の本質です。
すると、実際には想定と違ったモノコトが必ず出てくる。
これを何度も検証することによって、真の課題と取るべきマーケティング戦略の道が見えてくる。
新規事業はPDCAサイクルを高速に回すことが最も大事と言われるゆえんです。
AI活用のもう一つのポテンシャル
新規事業の初動におけるAIと人間の役割分担で言うと、あくまで人間主体です。
新規事業の構想は人間しかできない。今のところ、AIに今ここにない未来を予測することはできないからです。
しかし、事業を始めた瞬間から、AIには重要な役割が発生します。
それは、顧客や市場から得た新たなデータをAIに学ばせることです。
絶えずPDCAをすることが肝要と言いましたが、その時、AIをパートナーにして、がんがん分析を進めて行けるのが今までと違う所です。
なぜなら、AIはデータありきだからです。我々+AIでより客観的な知を生むことができます。
しかもこの場合は、自分たちしか持ち得ないオリジナルデータです。
LUUPの場合で考えてみてください。
例えば、当初描いていた顧客イメージや顧客が抱く強い利用動機は、実態を調べたら全く想定外だったかもしれません。
しかし、それらは自分たちしか知り得ない新しいデータであり、それを元に次の戦略をつくり、アクションする。
さらにPDCAして、的を得たアクションのための知恵に変えていく。
このサイクルは他の誰もできない競争優位を築くことができます。
(下図参照)
次々と来る新データを通じて、知恵として昇華させていくことで、自分たちしかない強みに変えることができるのです。
これこそがAI時代の企業が目指す姿です。
新事業は、この観点からの格好のテーマということでしょう。
AIと人間の共創は2タイプあり
さてここで、今一度、AIとどう共創するかについて、要点を整理してみましょう。
一つは、世界の知を取り込む です。
AIを使って、自分(たち)の知らない世界の知をに取込み、自分(たち)の知と合わせて、新しい知をつくることです。
一方、今回の考察で、新規事業は、自分たちが作った新しいデータをAIに取り込み、他の誰も知らない自分たちの知として強み化する格好のテーマであるということを述べました。
ということは、たとえ既存事業であっても、自分たちしか知り得ないデータをどんどんAIにぶちこみ、蓄積し、知恵化していくことで競争優位を築けるとも言えます。
つまり、この2つこそが「AI時代の泳ぎ方のコツ」と私は考えます。
個人の自律にAIを生かす
また、これは、個人 vs AIにも言える構図です。
昨今、「自律型人材になろう」が盛んに言われていますが、その時、この考え方が摘要できるのではないかと思っています。
私がかねてから思っていることですが、いわゆる個人の知、発見、気づきをデータ化していくのです。
仕事の事、趣味の事、個人的な気づきの事。
これらは全て、個人の洞察であり、オリジナルなデータです。
それをAIに分析させます。
すると、色々な発見があり、知が深まり、自分の洞察がさらに価値のあるものになる。ということです。
これからの個の自律のあり方として、そういう流れの入り口に我々はいるのではないでしょうか。
以上、今回も最後まで読んでくださり、ありがとうございます。