実際にご依頼いただいた案件をもとにした事例紹介です。ご相談時の状況から内定までの経過に沿って、応募書類をどのような考え方で作成したのかを書いています。ご自身と近い経歴の事例があれば、依頼を検討する際にお読みください。
※個人が特定されないよう、内容を変更している箇所があります。
№3.第二新卒(入社10ヶ月で退職)から商社の営業アシスタントへ|1年に満たない職歴が不安で、応募できずにいた方の事例
■ ご相談時の状況
履歴書の職歴欄に「入社」と「退職」の2行を書いたところで、手が止まってしまったそうです。
新卒で入社した会社を、10ヶ月で退職された方からのご相談でした。入社前に思い描いていた環境と、実際の職場が大きく違っていたということです。次の仕事を探そうと求人サイトに登録し、気になる求人も見つけていたものの、1年に満たない職歴を企業がどう見るのかが不安で、応募までは進めずにいたそうです。当時は「1年もたずに辞めた人なんて、ほとんどいないのではないか」と感じていたということでした。
■ 1年以内に離職する大卒の新卒は、約8人に1人
実際の数字を見てみます。厚生労働省が2025年10月に公表した新規学卒就職者の離職状況によりますと、2022年3月に大学を卒業して就職した方のうち、就職後3年以内に離職した割合は33.8%でした。そのうち1年目での離職は12.1%で、約8人に1人が1年以内に最初の会社を離れている計算になります。
辞めた時期を見ても、入社して間もない方が多くいます。新卒で入社した会社を3年未満で退職した若年層を対象にしたスタッフサービス・ホールディングスの調査(2025年)では、退職者の約3人に1人が入社半年未満で離職しており、入社の前と後で会社のイメージにギャップがあったと答えた方は6割を超えています。今回の方と同じ理由で早めに決断した方は、数字の上ではかなりの数にのぼるわけですね。
企業の見方も変わってきました。企業の採用担当者に聞いたマイナビの「企業人材ニーズ調査2025年版」では、第二新卒(学校を卒業してからおおむね3年以内で、就労経験がある方)の採用を実施しているという回答が60.9%で、新卒一括採用の58.7%を上回りました。第二新卒には長続きしない人材だと見られていた時期もありましたが、今は新卒採用や中途採用で採りきれない若手を補う手段として、多くの企業が取り入れています。
■ 職歴欄の2行から採用担当者が読み取ろうとすること
ただ、第二新卒の採用が拡大していることと、ご自身の書類が選考を通過することは、また別の話です。今回の方の履歴書の職歴欄は、次の2行になります。
●年4月 株式会社○○入社(職種:営業職)
●年1月 一身上の都合により退職
在籍期間が1年に満たないことは、読み手が計算するまでもなく分かります。この2行を見た採用担当者は、まず社会人としての基本がどこまで身に付いているかを気にするでしょう。企業が第二新卒を採用する理由には、新卒よりも仕事や職場に早く馴染めることも挙げられていますので、ここが書類から読み取れないと、第二新卒を採る意味が薄れてしまいます。
次に、同じ理由でまた辞めないかも気にするはずです。先ほどのマイナビの調査では、第二新卒を採用するうえで重視する内容として「人柄・性格」が最も多く、「専門知識・スキル」「実務経験」「基礎学力」を大きく上回っていました。10ヶ月の実績そのものより、どういう考えで仕事を選ぶ方なのか、自社と価値観が合うのかの方を見ているということでしょう。
そして、入社後にどこまで伸びるかも見ています。社会人経験が短い分、今の実力より、これからの成長に期待して採用するからです。
今回の書類も、この3つの問いに答えられることを意識して作成しています。中でも2つ目の「同じ理由でまた辞めないか」に答えるために、書類に取りかかる前に時間をかけた作業がありました。
■ 就活のときの選び方を振り返る
最初の会社を選んだ決め手は、説明会の雰囲気が良かったことと、早い時期に内定が出たことだったそうです。営業職として採用されることは分かっていたものの、配属後の1日の流れや、目標がどのように決まるのかまでは確認していなかったということでした。入社前は、先輩と一緒に既存のお客様を担当しながら仕事を覚えていく形だと思っていたところ、配属後まもなく新規開拓の個人目標を持つことになり、そのギャップが大きかったそうです。
振り返りの目的は、次の会社選びで同じ決め方をしないことです。そのために、10ヶ月の中で手応えを感じた仕事も伺いました。その中で、先輩の商談に向けた見積書や資料の準備、受注後に社内の関係部署へ手配をかける作業の話が出てきました。抜けや漏れのないように段取りを組む仕事を任される機会が、少しずつ増えていったそうです。
話を伺う中で、ご本人も、お客様の前に立って数字を追う役割より、取引が予定どおりに進むように裏方として支える役割の方が、自分の手応えと合っていると気づかれたそうです。その考えをもとに応募先を探し、商社の営業アシスタントを選ばれています。
営業アシスタント(営業事務)は、受発注や納期の管理、在庫の管理、請求書の作成、入金の確認などを担い、取引全体が円滑に進むように支える仕事です。商社の場合は、仕入先とお客様の両方とやり取りしながら取引を進めます。営業担当と二人三脚で動く場面が多いので、10ヶ月とはいえ営業の仕事を内部から経験していることは強みになります。営業担当がどのタイミングで見積を急ぐのか、受注後に何が遅れると困るのかを、身をもって知っているからです。
この整理ができたことで、「なぜ営業アシスタントなのか」を10ヶ月の経験から説明できるようになりました。採用担当者の2つ目の問いへの答えも、ここから組み立てています。
■ 書類で行ったこと
書類全体では、過去の説明に使う分量を抑えて、これからの話に多くを割いています。
履歴書の職歴欄は、先ほどの2行のまま、隠さず事実だけを書いています。在籍期間の短さを書類の上で説明しようとすると、その説明ばかりが読まれてしまいます。退職の経緯は、面接で聞かれたときに、先ほどの振り返りをもとにご自身の言葉で話していただく形にしました。
職務経歴書では、冒頭の職務要約で、まず社会人としての基本が身に付いていることを説明しました。新入社員研修で学んだビジネスマナーや電話応対、ビジネスメールの書き方、Excelでの集計に加えて、配属後に担当した見積書や資料の作成、顧客情報の管理、受注後の社内手配まで、10ヶ月の中身を具体的に書いています。営業アシスタントの日常業務と重なる部分が多いので、読み手は入社後の立ち上がりの早さを想像しやすくなるわけですね。
資格欄には、日商簿記3級の受験予定を書きました。営業事務には、職種と直接結び付いた決まった資格がありません。だからこそ、どの資格を選ぶかに、仕事への理解度が表れます。簿記3級は、職種を問わず社会人に求められる基礎知識として多くの企業に評価されている資格で、試験科目は商業簿記です。商業簿記は、商品を仕入れて販売する会社の取引を前提にした簿記ですから、商社の取引と合致します。請求や入金の確認を担う営業アシスタントの仕事にも結び付きます。
記載は、受験日まで決めたうえで「○月受験予定」としています。簿記3級は、年3回の統一試験とは別に、ネット試験であれば随時受験できますので、日付を決めることができます。日付まで書かれていると、目標に向けて実際に動いていることが読み手に伝わります。
自己PRと志望動機は、これからの話を中心に組み立てました。入社後はまず受発注から請求・入金までの流れを一通り担えるようになり、その上で簿記2級まで進んで、数字の面からも営業担当を支えられるようになりたいという目標を、段階に分けて書いています。段階が分かれていると、どこに伸びしろがあるのかを、読み手がつかみやすくなります。
■ 結果
選考の通過率が上がり、商社の営業アシスタント職で内定を獲得されています。初任給は、前職を上回る条件でした。
早期離職をすると、次の会社では条件面で妥協しなければならないと考える方もいらっしゃいます。ただ、初任給の水準そのものが、企業ごとに変わってきています。帝国データバンクの調査では、2026年4月入社の新卒社員の初任給を前年度から引き上げると答えた企業が67.5%で、平均の引き上げ額は9,462円でした。一方で、小規模企業では引き上げる割合が50.0%にとどまっています。企業による差が開いている分、条件まで含めて応募先を見比べることが、以前より意味を持つようになっているわけです。
今回の方も、就活のときの反省から、仕事内容や働き方に加えて条件面まで比べたうえで応募先を選ばれていました。
ご本人からは、書類が完成したこと自体で、気持ちの負担が大きく軽くなったという言葉をいただきました。応募できずにいた間は、10ヶ月で辞めたことをどう説明するかばかり考えていたそうですが、書類ができてからは、応募先のことを考えられるようになったということです。就活のときの判断を冷静に振り返る機会にもなり、この先に活きる学びを得られたとおっしゃっていました。
■ おわりに
早期離職を経験された方からは、書類の書き方より先に、そもそも応募してよいのかという迷いを伺うことがよくあります。
10ヶ月で辞めたという事実は変わりません。ただ、今回の方の10ヶ月には、研修で身に付けた基本も、手応えのあった仕事も、就活の選び方への反省も詰まっていました。それを整理して書類にすると、1年に満たない職歴は、次の仕事を選んだ理由を説明する材料にもなります。
退職後の期間が長くなると、面接では空白期間の説明も求められるようになります。書類の前で手が止まっているのであれば、今の状況をそのままお送りください。在籍期間がどれだけ短くても、その中身を整理するところから一緒に始めます。
以上、ご覧いただきありがとうございました。
「伸びしろを主役に」by中条