「このままでいいのだろうか」
50代後半から60代になると、
そんな思いが頭をよぎることがあります。
今の会社に、このまま残るのか
定年後も働くのか
転職するのか
独立するのか
それとも、少し立ち止まるのか…
若い頃とは違って、簡単には答えが出ません。
それは、決断力がなくなったからではないと思うのです。
これまで積み重ねてきたものが増えたからこそ、
簡単には決められなくなった。
仕事だけではありません。
家族のこと
お金のこと
健康のこと
これからの時間の使い方
誰と関わっていきたいのか等々…
いろいろなものを含めて考える時期に入ったのだと思います。
だから私は、50代後半からの働き方を考えることは、
単なる「仕事選び」ではなく、「生き方の再設計」なのではないか
と思っています。
これまでのシリーズでは、50代・60代からの独立や働き方について、
不安のこと
失敗のこと
小さく始めること
在り方のこと
孤独のこと
そして、「相性のいい人と一緒に歩みたい」ということ
そんなことを書いてきました。
今回は少し視点を変えて、
なぜ私自身が、こうしたことを書き続けているのか
についてお話ししたいと思います。
私は、誰かに偉そうに人生を語れるような、
立派な人生を歩んできたわけではありません。
普通に会社員として働き始め、
ありがたいことに経営に携わる機会をいただき、
社長という立場も経験し、
起業もしました。
一見すると、順調に見えるかもしれません。
でも、実際には、そんなことはありませんでした。
人との関係に悩んだこともあります。
振り返れば、これが一番苦しかったのかもしれません。
自分の力不足を思い知らされたこともあります。
事業が思うようにいかず、
夜中に一人で、
「これから、どうすればいいんだろう……」
と考え続けたこともあります。
人生の危機、と言ってもいいような時期も何度かありました。
だから今、
「このままでいいのだろうか」
「まだ自分にできることはあるのだろうか」
「でも、今さら何から始めればいいのだろう」
そんな思いを抱えている方の気持ちは、
私にとって決して他人事ではありません。
私自身も、悩み、迷いながらここまで歩いてきたからです。
50代後半からは、「何をするか」だけでは決められない
これからの働き方を考えようとすると、
転職先を探す
資格を取る
副業を始める
起業の勉強をする
そんな「方法」に目が向きやすくなります。
もちろん、それも必要です。
でも、その前に考えておきたいことがあります。
これから、どんな人と関わっていきたいのか。
自分の経験を、誰の役に立てたいのか。
どんな働き方なら、無理なく続けられるのか。
収入だけではなく、自分自身が納得できるのか。
家族、健康、時間、自分らしさと、どう折り合いをつけていくのか。
ここが曖昧なまま、
「転職しよう」
「独立しよう」
と方法だけを先に決めても、途中で違和感が出てくることがあります。
だから、私は思うのです。
答えを急がなくてもいい。
世の中には、
「人生100年時代、これからは起業だ」
「定年後は好きなことで稼ごう」
「この資格を取れば大丈夫」
そんな言葉もたくさんあります。
勇気をもらえることもあります。
ただ、私は少し慎重であっていいと思っています。
なぜなら、
その人が歩んできた人生も違うし、
性格も、家族の状況も、経済的な事情も違う。
そして、人との関わり方も違う。
だから、誰かの成功例が、そのまま自分の正解になるとは限りません。
大切なのは、
「世の中でうまくいっている道」ではなく、
「自分に合う道」を見つけること。
だと思うのです。
「まだ考えがまとまっていない」からこそ、考える意味がある
こういう話をすると、
「でも、自分はまだ何をしたいのか分からないんです」
と言われることがあります。
私は、それでいいと思っています。
むしろ、
まだ考えがまとまっていない時こそ、
一度きちんと自分と向き合ってみる意味がある。
今の会社に残るべきなのか
外に出るべきなのか
定年後も働きたいのか
少し休みたいのか
自分の経験に、本当に価値があるのか
今から新しいことを始めてもいいのか
一人で考えていると、頭の中で何度も同じ問いが回り続けることがあります。
考えているようで、実は同じ場所をぐるぐる回っている。
私自身にも、そういう経験があります。
そんなときは、誰かに話してみると、
自分でも気づいていなかった思いが言葉になることがあります。
「ああ、自分はこれが不安だったんだ」
「まだ誰かの役に立ちたいんだ」
「転職したいのではなく、今の役割を変えたいのかもしれない」
「起業したいというより、自分の経験を形にしたいのかもしれない」
人は不思議なもので、
話しながら、自分自身の本音に気づくことがあります。
相談相手は、「答えをくれる人」でなくてもいい
もし誰かに相談するのであれば、私は、
最初から答えを決めつけない人がいいと思っています。
「転職した方がいいですよ」
「起業した方がいいですよ」
「この資格を取りましょう」
もちろん、場合によっては、そうした具体的な助言が必要なときもあります。
でも、人生後半の選択は、そんなに単純ではありません。
その人がこれまで、
どんな仕事をしてきたのか
何を大切にしてきたのか
何が得意なのか
どんな人といると自然体でいられるのか
これから、どんな暮らしをしたいのか
そういうことを丁寧に整理しながら、
「あなたには、こんな可能性もあるのではないでしょうか」
と一緒に考えてくれる人。
そんな相談相手が一人いるだけでも、見える景色は変わると思います。
あなたにとって「普通の経験」が、誰かにとっての価値かもしれない
長く会社員をしてきた人ほど、自分には特別なものなどないと思いがちです。
でも、本当にそうでしょうか。
会社員として積み重ねてきた経験。
部下や後輩から相談されてきたこと。
うまくいかなかった経験から学んだこと。
現場で身につけた判断力
お客様との信頼関係
若い人を支えてきた経験
トラブルを乗り越えてきた経験
自分にとっては「当たり前」になっているから、
価値が見えなくなっているだけかもしれません。
少し離れたところから眺めてみると、
そこに、これからの仕事や役割につながる「種」が眠っていることがあります。
人生後半に必要なのは、「肩書き」より「役割」
私は最近、特にこう思います。
人生後半に大切なのは、
新しい肩書きを手に入れることよりも、
自分の役割を見つけ直すことなのではないか。
部長だった
社長だった
管理職だった
専門職だった
それらは、もちろん大切な経験です。
でも、これから先を考えたとき、本当に大事なのは、
「自分は、誰の役に立てるのか」
「どんな場面で、自分の力が生きるのか」
「どんな人と関わっているときに、自然に力を発揮できるのか」
なのだと思います。
肩書きが変わっても、役割は残ります。
むしろ、会社という枠を離れたときに初めて見えてくる「自分の役割」もあるのではないでしょうか。
失敗も、遠回りも、これから誰かの役に立つ
私が50代後半、60代の方の相談に向き合いたいと思う理由の一つは、
これまでの人生の中に、
まだ言葉になっていない力が、たくさん眠っている
と感じているからです。
「もう遅い」
ではありません。
失敗したことも
遠回りしたことも
悩み続けたことも
思うようにいかなかったことも
若い頃には意味が分からなかった経験が、
人生後半になって、ようやく誰かの役に立ち始める。
そんなことがあると、私は思っています。
だから、若い頃のように勢いだけで動く必要はありません。
無理に大きな挑戦をしなくてもいい。
誰かと比べて、焦る必要もない。
少し心を穏やかにして、
「自分は、これからどう生きたいのだろう」
と考える時間を持ってみる。
ただ時間だけが過ぎていくのは、やはり、もったいないですから。
大きく動く前に、まず整理する。
答えを急がず、
これまでを振り返り、
これからを言葉にしてみる。
そこから始めても、遅くありません。
もし今、
「何かを変えたい。でも、何を変えればいいのか分からない」
「これからの働き方を、一度きちんと整理してみたい」
「転職、独立、今の会社に残ること……どれが自分に合っているのか分からない」
そんなところにいるのであれば、
すぐに答えを出そうとしなくても大丈夫です。
まずは、自分が何を考え、何を感じているのか。
そこを言葉にするところから始めてみてください。
人生二周目は、誰かの正解を生きる時間ではなく、自分なりの答えをつくっていく時間。
私は、そう思っています。
今日も明るく元気よく。
河村直人