ファミリーマートとローソンから、ほぼ同じタイミングで「生成AIを使った商品開発」のニュースが出ました。
最初は僕も、
「コンビニの商品企画にもAIが入ってきたんだな」
くらいに思っていました。
ところが詳しく読んでみると、2社のAIの使い方がほぼ真逆なんです。
ファミマは、過去の売上・客層・購入時間・リピートなどのデータをAIへかなり細かく与える。
一方のローソンは、商品アイデアを考える段階では過去の販売実績や市場データをあえてAIに使わせない。
同じ「AI商品開発」なのに、
ファミマは過去から“売れる理由”を探し、
ローソンは過去から離れて“見たことがない商品”を探した。
ここにマーケティングの面白さが詰まっていると思います。
今回はニュースの内容を追いながら、
AIに何を学習させるかだけではなく、「何を学習させないか」まで戦略になる
という話を掘り下げます。
◆ファミマは「過去の売れ方」をAIへ徹底的に教えた
まずファミリーマートです。
ファミマは、生成AIを活用して開発したスイーツを初めて販売しました。
第1弾が、
「おいものカヌレ ~キャラメルソースがけ~」
です。
9月22日から数量限定で販売され、通常価格は税込285円。ファミリーマート公式でも、「ファミマのおいも収穫祭」の商品として掲載されています。
面白いのは商品そのものより、作り方です。
AdverTimesによると、AIへ与えたのは過去2年分のID-POSデータだけではありません。
売上、客層、購入時間帯、リピート、過去企画の実績などの自社データに加えて、市場トレンドを反映するための外部資料なども使っています。そこからAIが約1000の商品アイデアを提案しました。
つまりファミマは、
「自由に面白い商品を考えて」
ではなく、
「過去に何が売れたのかを理解したうえで、次の商品を考えて」
とAIへ頼んでいるわけです。
かなりマーケティング的です。
◆300円を超えると試してもらいにくい。価格にもデータを使う
さらに細かいところまでデータを使っています。
今回の商品では、過去データから300円を超えるとトライアル率が下がる傾向が確認されたため、285円という価格設定になったと報じられています。
ここが個人的にはかなり好きです。
AIというと、
「斬新なアイデアを出してもらう」
イメージが強いですよね。
ファミマの場合は、
商品アイデアだけでなく
「お客様が一度試してみようと思える価格帯はどこか」
まで考える材料にしている。
商品開発とマーケティングが分かれていません。
作るところから
売れ方を考えている
んです。
◆AIが出した案を、そのまま商品化しているわけではない
ここも重要です。
AIは、カヌレの中からキャラメルソースが出る構造なども提案したそうです。
ただ、工場の設備や技術では、そのまま実現するのが難しかった。
そこで人間の担当者が判断し、上からキャラメルソースをかける仕様へ変更しています。
つまり、
AIが企画する
→ 人間が現場で実現できる形へ直す
という役割分担です。
「AIに商品を作らせた」というより、
AIに大量の仮説を出してもらい、人間が商品へ仕上げた
と考えた方が近そうです。
◆一方ローソンは「過去の売れ筋をAIに教えなかった」
ここから話が一気に面白くなります。
ローソンも生成AIを起点にした商品を開発しました。
9月29日から関東・甲信越地区で発売するのは、
「レモンタルト(ピクルス風味)」
「酒種あんバターヨーグルトパン」
「混ぜて食べる 和風パフェサラダ(ビーフン入り)」
の3商品です。
名前だけでも
「どういう味?」
と気になりますよね。
それもそのはずです。
ローソンはアイデアを考える段階で、
過去の販売実績や市場データを生成AIへ使わせませんでした。
ファミマと真逆です。
◆ローソンがAIへ求めたのは「なんだこりゃ?」
ローソンがAIへ求めた条件も面白いです。
「今までにない組み合わせや味」
そして、
商品や商品名を見た瞬間に「なんだこりゃ?」と思われること。
そのうえで、
食べてみたらおいしいこと。
このテーマからAIにアイデアを出させています。
つまりローソンは、
「過去に売れた商品に近いものを作って」
とは頼んでいません。
むしろ、
過去の成功パターンから一度離れてほしい
という設計です。
AIへ情報を与えることが高度な使い方だと思いがちですが、
この事例を見ると、
AIに“あえて教えない”こともプロンプト設計
なんだと気づきます。
◆ファミマは「外さないAI」、ローソンは「ズラすAI」
2社を並べると分かりやすいです。
ファミリーマート ローソン
AIに与える情報 過去の販売・顧客・市場データ アイデア段階では過去の販売実績等を使わない
狙い 売れた要因を次の商品へ生かす 既存商品にない意外性を作る
AIの役割 大量のデータから仮説を出す 人間では出にくい組み合わせを出す
人間の役割 実現性・製造・品質を調整 試作・味・見た目・品質を調整
マーケティング 売れる確率を上げる 話題になる確率を上げる
ここからは僕なりの整理ですが、
ファミマは
「過去に勝った理由を学ばせるAI」
ローソンは
「過去の常識から外すためのAI」
として使っています。
どちらが正解という話ではありません。
そもそもAIに求めている仕事が違う
んです。
◆ローソンは「AIで作ったこと」まで商品にしている
さらにローソンは一歩進んでいます。
店頭販促で
「AI発案」
「AIが考えた!?」
という開発背景そのものを打ち出す予定です。
これ、かなりマーケティング的です。
普通、商品開発の裏側は裏側ですよね。
お客様にとって重要なのは
「おいしいか」
だからです。
ローソンはそこを逆手に取っています。
「レモンタルト×ピクルス」
だけでも不思議なのに、
「これ、AIが考えました」
が加わる。
すると商品そのものだけではなく、
「AIが考えた味ってどんな味?」
という体験まで販売できます。
開発方法そのものが
販促コピー
になっているんです。
◆ここでマーケティングの面白い問題が出てくる
2社を見ていると、こんな疑問が出てきます。
売れたデータを学習させ続けたら、商品は似てこないのか?
過去の売上を使えば、
大外れする確率を下げられるかもしれません。
一方で
「過去に売れたもの」
を基準にし続ければ、
似た商品ばかり生まれる可能性もあります。
逆にローソン型は、
過去を無視することで斬新な案が生まれやすい。
ただし、
珍しい=売れる
ではありません。
だから最終的には人間が試作して
「変だけど、ちゃんとおいしい」
まで持っていく必要があります。
マーケティングって、このバランスなんですよね。
◆「売れるもの」と「話題になるもの」は同じではない
ここも重要です。
ファミマ型は
売れる可能性を高める
方向。
ローソン型は
興味を持たれる可能性を高める
方向と見ることもできます。
たとえばSNS投稿でも同じです。
過去に問い合わせが来た投稿を分析し、
似たテーマを増やす。
これはファミマ型です。
一方で、
普段なら絶対に扱わない切り口を試して
「何それ?」
と止まってもらう。
これはローソン型に近い。
どちらか一つに絞る必要はありません。
僕なら、
普段は再現性のある施策を続けながら、一定割合で“変な実験”を入れます。
安定だけではマンネリになる。
実験だけでは事業が安定しない。
両方必要です。
◆この考え方、ココナラの商品作りにも使える
たとえば新しいX運用サービスを作るとします。
普通なら、
競合を見る。
人気サービスを見る。
価格を見る。
よく売れている内容を参考にする。
これは完全に
ファミマ型
です。
もちろん大切です。
一方で、それだけだと
「投稿30本」
「プロフィール添削」
「30日サポート」
のように、競合と似たサービスになりやすい。
そこで一度、ローソン型も入れてみます。
過去の売れ筋を見ない。
競合ページも閉じる。
そしてAIへ、
X運用サービスに見えないけれど
X集客に困っている人が思わず気になる商品を10個考えて
と聞いてみる。
すると、
診断型
添削型
7日間だけの改善型
固定ポスト専門
購入導線専門
など、
いつもの競合比較からは出にくい案が見つかるかもしれません。
そこから実現できるものだけ残す。
AIに正解を作らせるのではなく、発想の幅を広げてもらう。
こういう使い方もできます。
◆AIを使う前に「今回は何を作りたい?」を決める
今回のニュースから僕が一番学びたいのは、
AIツールの性能比較ではありません。
ファミマもローソンも、
AIを使っています。
それなのに結果は真逆です。
違うのは
AIへ何を求めたか。
売れる確率を上げたいのか。
斬新な企画が欲しいのか。
作業時間を減らしたいのか。
話題になる商品を作りたいのか。
ここを決めないまま
「ChatGPTで商品アイデアを出してください」
と頼むと、
それらしい案が大量に出て終わります。
先に目的を決める。
そのあと
必要なデータだけAIへ渡す。
これが重要なんだと思います。
◆AI時代は「データを持っている会社」が強い。でも、それだけではない
ファミマの事例を見ると、
過去2年間のID-POS
売上
客層
時間帯
リピート
など、大量のデータを持っている企業はやはり強いです。
AIは、材料が多いほどさまざまな分析ができます。
個人ビジネスでも同じです。
何となく運用するのではなく、
閲覧数
お気に入り
問い合わせ
購入
リピート
を記録しておく。
半年後、そのデータをAIへ渡せば
自分だけのデータを使った分析
ができます。
他人の成功事例ではありません。
自分のお客様の反応です。
これはかなり強い。
ただ、ローソンの事例を見ると
データに縛られすぎるのも危ない
と分かります。
ときには過去を見ない。
常識を一度外す。
この切り替えが必要です。
◆「何を学ばせるか」と同じくらい「何を捨てるか」
AIマーケティングというと、
データを増やす。
プロンプトを詳しくする。
資料を大量に読み込ませる。
そんな方向へ進みがちです。
今回ローソンが見せたのは逆でした。
過去の売上データをあえて入れない。
なぜなら、
今回欲しいのは
「売れ筋の延長」
ではなかったからです。
これはかなり大事な視点だと思います。
マーケティングでも同じです。
以前売れたから続ける。
以前伸びたから同じ投稿を書く。
競合がやっているから真似する。
これを続ければ大失敗は減るかもしれません。
その代わり、
大きく新しいものも出にくくなる。
ときには、過去の成功を一度疑う必要があります。
◆最後に|AIの商品開発より面白いのは「AIへの役割の与え方」
今回、
ファミマとローソンが同時期に生成AIを商品開発へ使ったニュースを見て、
僕はAIの性能より
使い方の違い
の方が面白いと思いました。
ファミマは、
過去を徹底的に学ばせる。
ローソンは、
過去をあえて学ばせない。
ファミマは、
売れた理由を探す。
ローソンは、
「なんだこりゃ?」を探す。
それでも両社とも、
最後は人間が判断して商品にしている。
ここも共通しています。
AIに仕事を奪われるか。
どのAIが一番賢いか。
そんな話題もあります。
ただマーケティングをする側としては、その前に考えたい。
「この仕事で、AIに何を担当させる?」
売れ筋を分析させるのか。
常識を壊させるのか。
大量の案を作らせるのか。
人間が見落としているパターンを探させるのか。
目的が変われば、
AIに与えるデータも変わります。
ファミマとローソン。
同じAIを使っても、戦略が違えば使い方はここまで変わる。
AIマーケティングで本当に差がつくのは、AIそのものより「何を考えさせるか」なのかもしれません。